印を刻むプレゼント
あぁ…もうすぐクリスマスだ。
クリスマスはえるからプレゼントを貰えるいい日。いつも貰ってばっかりだから今年はオレからあげたい。プレゼント交換ってやつえるとする。何をあげようかな。オレにリボンをつけるとか。……ありだけど、クリスマスはやっぱり指輪とかあげたい。けど今のオレじゃえるに見合う物は手が届かない。早く金持ちにならないと。待っててえる。すぐに金持ちになるから。
………やっぱりオレをあげようかな。ううん、タイミングが違う気がする。クリスマスにはもっと、もっと……お揃いのものとかそういう感じのがいい。うん、買い物行こう。
あぁ……えるとのデート楽しかったな。恋人になってから初めてのデート。変な邪魔が入った気がするけどえるにホントのこと話せてよかった。
初デートを思い出しながらえるへのプレゼントを選んでいく。えるならこれが似合う、これも似合う……全部似合う。……あぁ、えるに会いたい。今なにしてるかな。えるのことで頭をいっぱいにすると自然とあげたいプレゼントが決まっていた。えるってほんとにすごい。
……早くクリスマスにならないかな。デートの約束もプレゼント交換の約束もした。その後も…同じ気持ちだよね、える。だってオレたち恋人だし、クリスマスは大切な人と過ごす特別な日だから。えるもオレといたいって思ってくれてるはず。想いが同じならきっと――――――。
「さとみくん。クリスマス楽しみだね!」
「…うん。える、デート終わってその後…えるの部屋行きたい。クリスマスは大切な人と過ごす特別な日だから」
「……それって、お泊まり…?」
「…ダメ?」
「ううん。私はさとみくんといたいけど、お泊まりなら家族のみんなに大丈夫か聞いてみないと。だから返事はちょっと待ってね」
えるに優しく微笑まれ胸がぎゅっと苦しくなった。だけど……えるを困らせたくない。そう思って平静を装う。
「……わかった。ちゃんと、待つ」
そう答えるとえるが頷いた。なんにもないみたいに。えるは、悲しくないの…?オレといられないかもしれないのに……。オレは、すごく…すごく嫌だ。えるといられないのも、その原因が他人なのも。やっと恋人になれたのに、えるとクリスマス過ごせない………?デートだけじゃ、嫌だ。もっとえるといたい。
また、世界から切り離され、暗闇に閉じ込められる感覚に襲われる。それをえると繋いでいた手が止めてくれた。繋がっている手が、絡んでいる指がぎゅっと強くなったのを感じてえるを見つめる。
「大丈夫だよさとみくん。絶対お泊まりできるように私、頑張るから…!」
全部を消し飛ばしてくれる、光そのものみたいな眩しい笑顔。えるの大丈夫は絶対だ。えると同じように繋いだ手をぎゅっと握り返す。するとまたえるが笑ってくれた。あぁ…絶対、大丈夫だ。
そして迎えたクリスマス当日。
えるは約束通りオレが泊まる許可を取ってくれた。朝からえるの家に行ってパーティーの準備を手伝い、お昼はえると外で食べることにしてクリスマス一色に染まった街へ行く。
「わぁ…綺麗だね」
「……うん」
「昨日見た夜のイルミネーションも素敵だったけど、この時間も綺麗だね」
昨日もオレたちはデートをした。クリスマス当日はえるの家で過ごすからイブにイルミネーションを見ることになって、あの時のえる……何物にも代えがたい美しさだった。どんなイルミネーションを見たかはよく覚えていない。だってオレの視界にはえるしか入ってなかったから。
昨日のえるを思い出して、目の前のえるを見つめて。脳も視界も全部が幸せだ。
「…えるの方が綺麗だよ」
「……! ……ありがとう、さとみくん」
照れながらもはにかんで笑うえる。……今日はずっと独り占めできるんだ。また、満たされていく。溺れるくらいの幸せに。
ご飯を食べ終わった後、軽く街を散策して映画を観て、いつもよりもずっと特別に感じられる時間を過ごした。
「ふふっ…デートって楽しいね」
「…オレも楽しい。今日みたいな日は特に」
「ふふっ……うん!」
毎日毎日、特別な笑顔が増えていく。それでも、今日は……大切な人と過ごす特別な日の笑顔はとびきり輝いていた。
そして二人きりのデートは終わる。いつもならもっといたいと思う瞬間でも今日だけは違う。ずっとえるといられるから。
えるの家に戻ってから少しして、クリスマスパーティーが始まった。豪華な料理がテーブルに並んでえるが取り分けてくれる。
いつか二人だけのパーティーをしよう。その時はオレをプレゼントしようかな。……それよりも前にあげたい。オレの全部を。
パーティーは終わり、えるの部屋で二人きりになった。
「さとみくん。パーティー楽しかった?」
「うん。楽しかった」
「よかった、ふふっ……。私、さとみくんと恋人になってからにやけてばっかりだね…ちょっと恥ずかしい……」
そう言って両手で頬を抑え、照れながら笑うえるを見て、オレの頬も自分で分かるくらい緩んでいた。
「かわいいよ。……ほんとにかわいい」
愛おしいえるに手を伸ばす。かわいくてたまらないその姿に触れたくて頭を撫でた。
「……ありがとう………。ふふっ……やっぱり、まだ照れちゃうけど、さとみくんの言葉は全部嬉しいよ」
「……えるが嬉しいなら、良かった」
「…うんっ!」
照れながら笑ったえるが少しそわそわしだして
「……さとみくん!メリークリスマス…!!」
綺麗に包装された大きな袋が目の前に現れた。
「……!」
「プレゼント……受け取ってくれる?」
緊張しているのかプレゼントを持つ手が少し震えていた。その手にオレの手を重ねてプレゼントを受け取る。
「える、ありがとう」
そしてもう一度えるの頭を撫でてから、オレもプレゼントを渡した。
「オレからも、プレゼント。交換する約束したから。……メリークリスマス」
「わぁ…!ありがとう、さとみくん。開けてみていい?」
頷いてオレもプレゼントを開けた。入っていたのはマフラーとピアス。すぐにマフラーを巻くと、えるに抱きしめられている感じがして、たまらなく嬉しくなり、マフラーを強く握った。
「あったかい……」
「…!ふふっ、よかった」
つけていたピアスを全部外して、えるからもらった大切なピアスをつける。……もう他のピアスは全部捨てよう。えるからもらったこのピアスだけでいい。
「わぁ…!かわいいマグカップ…!二つあるってことはさとみくんとお揃い?」
「うん、お揃い」
離れていてもえるがオレを想えるように。そう願いを込めて選んだ物だ。
「ふふっ、とっても素敵。ありがとうさとみくん」
それを受け取ったえるが嬉しそうに笑う。
……この笑顔が一番のプレゼントだ。
「これは…ネックレス?」
「えるに似合うと思って」
本当は身につける物もお揃いにしたかったけど……えるはピアス空けてないし、イヤリングもあんまりしないからお揃いはできなかった。でも……今はいいんだ。いつかお揃いの指輪をつけるから。
「ネックレス、オレにつけさせて」
「やってくれるの?…ふふっ。お願いさとみくん」
「ん。任せて」
ネックレスを手に取ってえるの後ろに回る。
「…………」
「さとみくん?」
「える…好き」
「…! ふふっ、くすぐったいよ…さとみくん」
ぎゅっと後ろから抱きしめて首筋にキスをした。
「さとみくん……?」
今までにないくらいの距離でえると目が合う。
「…ネックレス、つけてくれないの?」
少し潤んだ瞳でお願いするように言われるとそれ以上は何もできなくてえるからそっと離れた。
「今つける」
「…うん。髪の毛あげるね」
空いた首元に手を回してえるにネックレスをつけた。すぐにその姿が見たくてえるの前に戻る。
……あぁ、この感覚はなんだろう。キスや抱きしめるのとは違う。えるはオレのだって印を刻めたみたいだ。
「どうかな…?」
「……似合ってる。かわいい」
「ありがとう。さとみくんもピアス似合ってるよ。すっごくかっこいい!」
そう言われてさっきつけたばかりのピアスに触れた。
オレにもえるのだって印がここにある。……こういう幸せもあるんだ。ずっと浸っていたい。
「これからもずっとこんな風に過ごしたいね」
「オレもえるとずっと一緒にいたい。来年も再来年も……永遠に」




