初デートとほどけたモヤモヤ
それは恋人になってから初めてのデートの時のこと。
冬休みに入ったら色んなところに行こうね、なんて話をして初めてのデートは普段と変わらない雰囲気で出かけることになった。それでも恋人繋ぎをするとドキドキして落ち着かなくて。…いつか慣れるかな?なんて考えながらさとみくんと街を歩いていた。
そこへ一人の女性が近づいてきてさとみくんに話しかけてきた。
「あら、綴未くんじゃない」
さとみくんの知り合いなのかな?私が知らなかっただけで、ちゃんと友達みたいな人はいたんだ。と思っていると
「誰」
いつもより低くて冷たい声が聞こえた。さとみくんはすごく冷たい目をしながらその人を見下ろしていた。
あれ?知り合いじゃなかったのかな…?
そう思っていたけれど
「誰って…」
その人は私をちらりと見てふっと笑った。そして
「何度も家に来てたじゃない。今更恥ずかしがるなんて、変な子ね相変わらず」
何度も…家に……?
驚いてさとみくんを見上げると、さっきの冷たい目がもっと冷たくなっていて彼が女性を睨みつけた。
「ホントに誰。邪魔しないで」
それは前に聞いたことのある声色だった。ううん。あの時よりもピリピリしてる感じがする……。
さとみくんが怒ってる。そう感じてどうしようかと思っていると
「…そう。もういいわ」
睨まれた女性はそう言って去っていった。女性がいなくなったのと同時にさとみくんから感じていたピリピリしたものも無くなっていた。
「える、ごめん。変な邪魔が入った」
「ううん。私は大丈夫だけど……さとみくん、よかったの?知り合いの人、なんじゃ……?」
「あんな人知らない」
「……でも、家に来たことあるって言ってたよ…?」
「うーん……ホントに知らない」
さとみくんホントに知らないみたい。でも……あの人はさとみくんのこと知ってそうだった。あ、もしかして。
「ねぇ、さとみくん。さっきの人…その、さとみくんが学校来てなかった時に出会った人だったりしない?」
「…………あ、そうかも。全然覚えてない」
「…覚えてないの?」
「うん」
「そう、なんだ……」
じゃあ、学校に来てなかった時何してたんだろう…。
「える。ずっと話そうと思ってた。女遊びのこと。タイミングわかんなくて、言えなかったけど」
それからさとみくんは女遊びと言われていた時の真相を話してくれた。ただ話を聞いていただけなのに、いつの間にかひどい男呼ばわりされていたと。
「そっか……そうだったんだ……。ただ話を聞いてただけだったんだね」
「うん。なのに気づいたら変な話が広まってて、えるにも女遊びって言われて」
「…それなら、その時言ってくれたらよかったのに」
「……その時は、女遊びって言われてびっくりして、説明わかんなくなって」
「…そうだったんだ。……それじゃあ時々怪我をしてたのは?」
「あれはたまに彼氏って人が話してる最中にやってきて。ああなって……」
……それで、あんな怪我を……。さとみくんは何も悪くないのに。勝手に勘違いして、変な噂まで広まって…。あの時のさとみくんを思い出して胸が痛くなる。
「える……。いつも手当してくれてありがとう。それから……ごめん。ずっと言えなくて」
でも、辛かったのはさとみくんも同じだよね……。なら、私は。
「ううん。大丈夫だよ」
そう言ってさとみくんに笑いかけた。話し始めてからずっとどこか不安そうだった彼の表情が柔らかくなったのを見て私の中にあったモヤモヤが消えていく。
「何も答えてくれなかった時は何かあるのかなって、不安になっちゃった時もあったけど……私はずっと信じてたの。さとみくんはそんなことする人じゃないって」
「える……」
「それにね、さとみくんが私のことずっと想ってくれてたのもちゃんとわかってるよ」
「……ありがとう。える、大好き」
そう言われた瞬間、さとみくんに抱きしめられた。
「さとみくん……」
「オレのこと、信じてくれてありがとう」
「……うん。さとみくんこそ話してくれてありがとう」
私がそう言うと抱きしめる力が強くなり甘えるようにさとみくんが鼻を肩に埋めた。
「さ、さとみくん…!ここ街中だから……」
「……ん…。そう、だった。買い物するんだっけ」
「うん。もうすぐクリスマスだから色々買わないと。一緒に行こう、さとみくん」
「……うん」
頷くと私から離れて隣に立ち抱きしめる前に戻って手を繋ぐ。まだやっぱりドキドキするけれど、今はこれが心地いい。




