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モンスターは綴れない  作者: ぺんなす


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同じ好き

重ねたオレの手にまた、えるの手が重なる。

自分の気持ちが分からなかったと話してくれたえるが顔を上げまっすぐオレを見つめた。

「私、さとみくんが好き」

「………──────」

えるが、オレを……?

「える……ほんとに、オレのこと────」

「…うん。───大好きだよ、さとみくん!」

嬉しくて堪らなくなってえるを抱きしめた。何度も何度も、名前を呼んだ。

「える…える、える──────。……える」

目の前にいるえるが幻じゃありませんように。オレの都合のいい夢じゃありませんように。そう確かめるようにえるを強く抱きしめる。えるがオレと同じように抱きしめてくれる。えるの温もりが全ての答えだった。えるの顔が見たくて少し力を弱めるとえると目が合い、少しの間見つめ合う。

「……ふふっ、さとみくん…大好き」

「─────!!」

言葉が出なかった。だって、その笑顔は…見たことなかったから。

初めて会った時、オレに見せてくれた笑顔。オレを救ってくれたその笑顔は、いつだってオレに幸せをくれる。だけど、目の前にいるえるは、あの時ともいつものとも違う笑顔だった。少しだけ頬が赤くて、オレへの気持ちが沢山込められているとびっきりの笑顔。きっとこの笑顔はオレにしか見せてない。この先もオレしか見られない特別な笑顔。オレのことが大好きな、えるの笑顔。大好きなえるがまた一つオレの中に刻まれた。涙が出そうだった。だけど、そんなもので視界が滲んで大好きなえるをちゃんと見られなくなるのが嫌だった。だから必死に堪えてまた強く抱きしめる。

「える…オレも好き。好き。好き。好き。大好き。ずっと、ずっとずっとずっと─────愛してる」

「…ありがとう、さとみくん。たくさん待たせてごめんね。いっぱい傷つけちゃったよね……」

「えるといて傷ついたことなんて無いよ。一つも無い」

えるがいればどんな時だって幸せだから。

「……それならよかった。…ふふ、さとみくんが好き」

「オレもえるが好き」

「ありがとう。…好きって言葉にするとこんなに嬉しいんだね」

「嬉しい?」

「うん。ずっと私の中にあったのに全然分からなかったから…。それに、さとみくんと同じなのが嬉しいの」

オレと…同じ。そっか、オレは……同じにできたんだ。同じに─────。えるに好かれて愛されて、これから先ずっと……一緒にいられる。そう思ったら嬉しくて堪らなくなって、またえるを強く抱きしめた。

「ふふ。……両想いってとっても素敵だね」

「…うん。える大好き」

「…ふふっ。私も大好きだよ、さとみくん」

それから何回もお互い好きと伝えあった。オレが抱きしめて好きって言うと、えるも好きって言って抱きしめ返してくれる。えるが与えてくれた新しい幸せだ。あぁ─────もっと、えるといたい。

「…ねぇ、さとみくん。今日は…私の部屋に、来る……よね…?」

少しだけぎこちなくえるがオレを見上げた。その表情には不安が浮かんでいる。きっと昨日オレが行かなかったからだ。……なんて、愛おしいんだろう。だってそんな顔好きな人にしかしないものだ。オレだって昨日は行きたかった。でもやらなきゃいけないことがあったから仕方なく帰ったんだ。だけど、そのおかげで…えるがオレを求めてくれてる。そばにいてほしいって、もっと一緒にいたいって。本当に…同じなんだ。

「…もちろん行く」

もっとえるを抱きしめたいから。誰にも邪魔されない場所で、二人きりの時間を過ごしたい。

「それじゃあ早く行こう」

頷いてまた手を繋いで歩き出す。いつもと違う繋ぎ方で。恋人になってから初めての恋人繋ぎ。指を絡めるとえるの顔は赤くなる。それがまたかわいくてそんな姿を一生独り占めできるんだと幸せで狂いそうになる。だけどこの手は絶対離さないから。えるも、オレのそばにいて。ずっと、ずっと───────。


えるの部屋に着いて最初にすることはえるを抱きしめること。えるも同じように抱きしめ返してくれる。また、怖いくらいの幸せがオレを包む。えるといればどんな時だって幸せだ。でも、今は恋人で…同じ好きだから。オレがえるに愛される日はずっと、来たらいいなって思ってた。でも、オレには愛され方なんて分からないから、オレの願望でしかなった。だからずっと不安だった。えるに愛されなかったらどうしようって。でも…今は、本当に――――――同じなんだ。

「ふふ。さとみくんあったかいね」

「……えるもあったかい」

「…ドキドキしてるね。私もさとみくんも」

「うん。…好きだから」

「ふふっ。うん…。好きだからだね」

お互い見つめあって笑いあって、オレのずっと欲しかった幸せが今ここにある。えるに愛されるのってこんなに幸せなんだ。ただそばにいるだけとは全然違う。今までに戻りたくないくらい幸せだ。

「……ねぇ、さとみくん」

「…どうしたの」

「えっとね、ずっと聞きたかったことがあったの。…さとみくんは、いつ私を好きになったの?」

オレを見上げながら頬を染めてえるが小さく首を傾げた。それから少し視線を泳がせて

「それに……その好きって気持ちがいつ、恋だって分かったの?ほら、好きにも色々あるから…。……それに、私この気持ちが恋だって全然気づけなかったから……さとみくんはどうだったのかなって……」

答えが一つだけの問を投げてきた。オレがえるを好きになった日、それはオレの世界が変わった日。そんなの一つしかない。

「えるに出会った時」

「…! それって、私がさとみくんに声をかけた時、だよね。そんなに…前から……」

「うん。あの時からずっと、えるは特別なんだ」

「……私が特別…。そうだったんだね…」

「そう。えるはずっと特別なんだよ。…この気持ちもえるにしか抱かない感情だから。特別なたった一人にしか抱かないんだからそれが恋なんだよ」

「……私にしか………」

「えるもそうでしょ。その気持ちオレにしか抱いてない」

「…!そっか、そうだね。うん…!私もさとみくんにしか抱いてないよ…!!」

また、その笑顔。どれだけ綺麗な花も、どれだけ輝く星も霞む、最上の笑顔。本当にこの笑顔もオレが独り占めしていいんだ。

「える好き」

さっきまで笑顔だったえるの顔が頬だけじゃなく耳まで真っ赤になった。

「……!!」

「える?」

「その……改めて言われると、なんだか恥ずかしくなっちゃって…」

えるが照れてる。

「かわいい」

「……!! か、かわいいは…だめだよ…!うぅ……恥ずかしい……」

あぁ…本当にかわいい。だから、うん。かわいいは程々にしよう。毎秒言ったらどうなるのかも気になるけど、えるに嫌われたくない。それに、こんなに可愛い顔されたらオレもおかしくなりそうだから。

言葉の代わりにえるの頬をそっと撫でる。

「これからもえるにしか抱かないよ。この気持ちは」

だってえるは、オレを救ってくれた人で幸せをくれた人。愛することを教えてくれて、愛されることを教えてくれる人だから。

「わ、私も…!さとみくんにしか抱かないよ!」

また、かわいいって言いそうになって無理やり言葉を飲み込んだ。えるが、困っちゃうから。その代わり、頭を撫でた。えるの鼓動がはっきり聞こえるくらいぎゅって抱きしめながら。

しばらくして、えるがオレの胸を少し叩いた。えるが何かを言いたげな顔でオレを見上げる。

「ねぇさとみくん」

「…どうしたの」

「その……さっき、さとみくんに内緒って言われた時モヤモヤしたって言ったよね…」

「うん」

「…その、内緒って言われると寂しいなって思って、だから…もう内緒はやめてね……?」

少し不安そうにえるが見つめる。そんな顔しなくたっていいんだよ、える。

「もうしない。絶対しない。全部言う。だからえるも内緒は禁止」

えるの表情がぱっと明るくなる。

「うん!」

嬉しそうに頷いて、笑っている。オレを幸せにする笑顔。オレが笑ったら、えるも幸せかな。そうだといいな。だってオレたちは同じだから。

……えるに、もっと触れたい。ふと、そんな欲望が湧いてきた。やっと恋人になれたから。えるとオレは同じ…だから、いいよね?

「える。……キス、したい」

「え───」

「両想いがするものでしょ。キスって」

「……う、うん。そうだと、思う…よ……」

えるの頬にそっと触れる。少し視線を逸らしてたえるがオレを見つめた。その瞳は少し熱っぽくて、オレを意識しているのがわかる。それがまた、うれしい。

「していい?」

「………………うん」

少しの間のあとえるが頷いた。ゆっくりと顔を近づけて、そしてえるの唇にオレのを重ねる。

初めてのキス。両想いのキス。恋人とするキス。こんなに幸せで満たされるんだ。もっともっと触れていたいと、そんな欲まで出てくる。時間にすればほんの少し。それでもこうして触れ合えるのが永遠であれと願った。けど、お互い初めてだからか息が苦しくなって離れた。

「………これが……キス…なんだね……」

「…うん」

熱があるときみたい頭がぼーっとする。心臓がずっとうるさくて落ち着かないのに、この感覚が嫌じゃない。むしろもっと、そう…もっとえるに触れたい。キスをしたい。ぎゅって抱きしめていたい。オレにだけ笑ってくれるえるに、もっともっと─────触れたい。そうキスをする前より強く思う。顔を赤くしたまま、どこか落ち着かない様子のえるを困らせるってわかってても。

「…える、もう一回、したい」

「……それ、は……。その、キス……を…?」

「…いいなら、目閉じて」

戸惑うように視線を逸らしたえる。けれど、すぐにオレを見つめて、目を閉じた。

そしてまた、恋人じゃないとしないキスをする。何度も何度も。オレが求めればえるが応えてくれる。それがすごく嬉しい。オレにとってえるが特別なように、えるにとってオレが特別になったと感じられるから。

もっともっと感じさせて。オレがえるの特別だって。

「……─────える、愛してる」

永遠を誓い合うようにキスをする。あぁ……早くえるのウェディングドレス姿が見たい。結構式は、二人きりでしようね。一生に一度の特別なえるを見ていいのは、オレだけだから。

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