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第三話「地図のこと」
また会った。
五日後だった。
今度は、階段だった。
男が上へ向かっていた。
女が、上から降りてきた。
すれ違いざまに、女が紙を落とした。
男は拾った。
やはり、地図だった。
手書きだった。
几帳面な字で、廊下の形が書いてあった。
部屋の番号が書いてあった。
窓の位置が、小さな四角で示してあった。
「これは」と男は言った。
「地図です」と女は言った。
「自分で作ったんですか」
「作りました」
「いつから」
「来た日から」と女は言った。「迷いたくないので」
男は地図を見た。
細かかった。
丁寧だった。
「この建物の全部が、書いてあるんですか」と男は言った。
「まだ全部ではありません」と女は言った。「上の階が、まだです」
「上へ行ったことがないんですか」
「あります」と女は言った。「でも、地図がまだ追いついていない」
男は地図を返した。
女は受け取った。
また上へ向かおうとした。
「一緒に行ってもいいですか」と男は言った。
女は少し間を置いた。
「書類があるんじゃないですか」と言った。
「持っています」と男は言った。書類を示した。
「邪魔になりませんか」
「大丈夫です」
女は少しだけ、男を見た。
それから、また上へ向かい始めた。
男も、続いた。
(第三話 了)




