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第二話「傾きのこと」
三日経った。
三日の間に、建物のことが少し分かってきた。
廊下は、いくつもあった。
縦の廊下と、横の廊下があった。
縦の廊下は、上へ向かっていた。
横の廊下は、部屋へ繋がっていた。
部屋には、先生たちがいた。
机があった。
窓のある部屋もあった。
窓のない部屋もあった。
どの廊下も、少し傾いていた。
しかし、傾きの向きが違った。
こちらへ傾いている廊下と、あちらへ傾いている廊下があった。
男は、廊下を歩きながら、傾きを感じていた。
体で感じていた。
どちらへ傾いているかを、体が知っていた。
ある廊下を歩いていた時、前から女が来た。
手に、紙を持っていた。
紙には、何かが書いてあった。
図のようなものだった。
すれ違った。
それだけだった。
しかし、男はその紙のことを考えた。
図のようなものが、何だったかを。
地図かもしれない、と思った。
この建物の地図かもしれない、と思った。
振り返った。
女は、もういなかった。
廊下の先へ、消えていた。
男は、また歩いた。
傾いた廊下を。
(第二話 了)




