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お前が犯人だ、その推理で世界が変わる -変遷探偵・久瀬黎司の記録-  作者: 未確定ログ
第1部 『犯人変遷篇』第2編『消える共犯者』
41/51

第41話『消失連鎖』

資料室の空気は、もう“人数”という概念を信用できなくなっていた。


白鐘雨音は無意識に椅子を数える。


「……一つ、多くないですか?」


有馬が振り返る。


「何がだよ」


白鐘は言い直す。


「さっきまで、机の配置って四つでしたよね」


有馬は即答する。


「最初から三つだろ」


沈黙。


白鐘の視線が止まる。


「……え?」


久瀬黎司が静かに言う。


「分岐が進んでいる」


有馬が苛立つ。


「またそれか」


久瀬は否定しない。


「観測ごとに“存在数”がズレている」


白鐘が小さく呟く。


「でも、どっちかが正しいんですよね?」


久瀬は一拍置く。


そして言う。


「両方だ」


その言葉で空気が止まる。


有馬が顔をしかめる。


「意味わかんねぇってそれ」


久瀬は机に手を置く。


「この現象は“消失”ではなく“再配分”だ」


白鐘が息を呑む。


「再配分……?」


久瀬は続ける。


「役割が消えると、別の存在に再割り当てされる」


有馬が呆れる。


「じゃあ誰かが代わりになるってことか?」


久瀬は否定する。


「違う」


「“代わり”ではない」


「“上書き”だ」


沈黙。


その瞬間、廊下の方から足音がした気がした。


白鐘が振り返る。


「今の……」


有馬も見る。


だが誰もいない。


久瀬だけが、その“音の前後”を読んでいる。


そして静かに言う。


「一人消えたな」


白鐘が即座に反応する。


「誰がですか」


久瀬は答えない。


その代わり、机の上の資料を指す。


そこには“昨日の捜査メモ”があるはずだった。


だがページが一枚減っている。


有馬が声を荒げる。


「おい!さっきまであっただろ!」


白鐘も頷く。


「確かにありました……」


だが次の瞬間、白鐘の表情が揺れる。


“何が書かれていたか”が抜け落ちる。


久瀬は静かに言う。


「始まった」


白鐘が問う。


「何がですか」


久瀬は短く答える。


「連鎖だ」


有馬が苛立つ。


「連鎖ってなんだよ」


久瀬は窓を見る。


雨は変わらない。


だがその雨粒が、時折“数えられない塊”になって落ちる。


久瀬は続ける。


「一人消えると、次の条件が再構築される」


「そしてまた誰かが消える」


白鐘が震える声で言う。


「止まらないんですか……?」


久瀬は一瞬だけ沈黙する。


そして言う。


「止める構造がない」


その瞬間、資料室の電灯が一瞬だけ落ちる。


戻ったとき、有馬が小さく首を傾げる。


「……今、誰かと話してた気がするんだけど」


白鐘も同時に違和感を覚える。


“会話の相手がズレている”


久瀬は静かに確信する。


この事件はまだ壊れていない。


だがすでに――


「消失が個別現象ではなく、連鎖現象へ移行している」

読んでいただきありがとうございます。

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