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お前が犯人だ、その推理で世界が変わる -変遷探偵・久瀬黎司の記録-  作者: 未確定ログ
第1部 『犯人変遷篇』第2編『消える共犯者』
42/57

第42話『消失条件』

資料室の扉が、閉まっているのか開いているのか分からなかった。


白鐘雨音はその境界を見つめながら、ゆっくり言う。


「……今の消失、規則があります」


有馬が即座に反応する。


「は? またルール増やすのかよ」


白鐘は無視して続ける。


「ただのランダムじゃないです」


久瀬黎司が視線を上げる。


「気づいたか」


白鐘は頷く。


「“共犯者として認識された瞬間”に、消えてる」


沈黙。


有馬が眉をひそめる。


「意味わかんねぇんだけど」


白鐘は資料をめくる。


そこには“昨日の捜査記録”があるはずだったページ。


だが、その一部がまた薄れている。


「この人……昨日、共犯者扱いされました」


有馬がすぐに言う。


「だから誰だよそれ」


白鐘は言葉に詰まる。


“名前”が出ない。


ただ確信だけがある。


久瀬が静かに言う。


「それが条件だ」


白鐘が顔を上げる。


「条件……?」


久瀬は続ける。


「共犯者として確定した瞬間、その役割に固定される」


「そして役割が不要になると消える」


有馬が苛立つ。


「じゃあ何もしなきゃいいってことか?」


久瀬は首を振る。


「違う」


「“認識されること”自体がトリガーだ」


沈黙。


白鐘が震える声で言う。


「じゃあ……関わっただけで消えるってことですか?」


久瀬は一拍置いて答える。


「そうなる」


その瞬間、廊下の奥で一瞬だけ物音がした。


誰も振り返らない。


“振り返った瞬間に条件が成立する”ことを、全員が無意識に理解している。


有馬が小さく呟く。


「じゃあさ……俺らもヤバくね?」


白鐘は答えない。


その代わり、久瀬を見る。


久瀬だけが動いている。


久瀬は静かに言う。


「もう一段階進んでいる」


白鐘が問う。


「何がですか」


久瀬は窓を見る。


雨は一定に見える。


だが“落ちる場所”がわずかにズレている。


「観測者も巻き込まれ始めている」


有馬が顔をしかめる。


「観測者って俺らのことだろ」


久瀬は否定しない。


その瞬間、白鐘の手元の資料から一行が消える。


白鐘が即座に反応する。


「今の……また消えました」


有馬は眉をひそめる。


「何が?」


白鐘は口を開くが、言葉が出ない。


“それが何だったか”が抜け落ちている。


久瀬は静かに言う。


「条件が成立した」


白鐘が震える声で問う。


「今の人……消えたんですか」


久瀬は短く答える。


「消えた」


有馬が呟く。


「もう戻らねぇのかよ」


久瀬は窓を見る。


雨は変わらない。


だがその雨の中に、もう“誰かの輪郭”はない。


久瀬は確信する。


この事件はまだ壊れていない。


だがすでに――


「消失は“認識”と結びつき、不可逆の連鎖条件へ変わり始めている」。

読んでいただきありがとうございます。

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