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お前が犯人だ、その推理で世界が変わる -変遷探偵・久瀬黎司の記録-  作者: 未確定ログ
第1部 『犯人変遷篇』第1編『雨の取調室』
22/51

第22話『観測干渉』

資料室の扉は、閉まっているのに開いているように見えた。


どちらでもない状態。


白鐘雨音は、その矛盾にもう驚かなくなっていた。


ただ静かに言う。


「またです」


有馬が即座に反応する。


「何がまただよ」


白鐘は扉を指す。


「見え方が、変わってます」


有馬が眉をひそめる。


「は?」


久瀬は扉を見る。


確かに、角度によって“閉じているようにも開いているようにも見える”。


久瀬は静かに言う。


「観測の重なりだ」


白鐘が小さく頷く。


「はい……同時に複数の状態が見えています」


有馬が呆れる。


「いやそれもう意味わかんねぇよ」


久瀬は歩き出す。


資料室の中央に立つ。


そして白板を見る。


そこには事件構造がある。


だがその線は、見るたびに少しずつ位置がズレている。


久瀬は言う。


「この事件は、固定されていない」


白鐘が答える。


「でも、固定されかけてます」


有馬が首をかしげる。


「どっちだよそれ」


白鐘は続ける。


「観測した瞬間に、どれか一つに収束しそうになるんです」


久瀬は静かに頷く。


「だが収束しない」


沈黙。


その瞬間だった。


白板の中心が一瞬だけ“黒く塗りつぶされる”。


有馬が叫ぶ。


「今の何だよ!」


白鐘は息を呑む。


「見えました……でも消えました」


久瀬は視線を離さない。


「干渉だ」


白鐘が顔を上げる。


「干渉……?」


久瀬は続ける。


「この事件は“観測されるたびに観測を壊す”」


有馬が混乱する。


「それもう無限ループじゃん」


久瀬は否定しない。


代わりに言う。


「誰かが見た瞬間に、見られたものが変わる」


白鐘の手が震える。


「じゃあ……私たちは今、何を見てるんですか」


久瀬は少し間を置く。


そして答える。


「“変わる前の残像”だ」


その瞬間、資料室の蛍光灯が一瞬だけ暗転する。


戻ったとき、机の上の資料の配置が変わっている。


有馬が声を荒げる。


「絶対今動いたって!」


白鐘は黙って頷く。


「でも、動いた証拠が残っていません」


久瀬は静かに言う。


「残る必要がない」


白鐘が息を呑む。


「じゃあ……全部“今だけ”ですか?」


久瀬は答える。


「そうだ」


雨音が強くなる。


いや、強くなったように“感じる”。


久瀬は窓を見る。


外の雨は一定なのに、見るたびに別の降り方に見える。


久瀬は確信する。


この事件はまだ壊れていない。


だがすでに――


「観測そのものが事件を変質させ始めている」

読んでいただきありがとうございます。

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