表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お前が犯人だ、その推理で世界が変わる -変遷探偵・久瀬黎司の記録-  作者: 未確定ログ
第1部 『犯人変遷篇』第1編『雨の取調室』
16/51

第16話『推理の反射』

資料室の白い照明が、わずかに揺れていた。


理由のない揺れだった。


白鐘雨音はファイルを閉じることも忘れて、久瀬の横顔を見ていた。


「久瀬さん……一ついいですか」


久瀬は視線を上げない。


「何だ」


白鐘は慎重に言葉を選ぶ。


「さっきの犯人候補の件……」


有馬が椅子を鳴らして身を乗り出す。


「まだそれやるの?」


白鐘は無視して続ける。


「犯人が“増えている”んじゃなくて、“可能性が増えている”って言いましたよね」


久瀬は短く頷く。


「そうだ」


白鐘は一度息を吸う。


そして核心に触れるように言う。


「それって……久瀬さんの推理が影響してますか?」


空気が止まった。


有馬が即座に反応する。


「は? いや関係なくね?」


だが白鐘は目を逸らさない。


「この事件、推理をするたびに“答えの候補”が変わってる気がします」


沈黙。


久瀬はしばらく何も言わなかった。


ただ資料を見ている。


そして静かに言う。


「……気づいたか」


白鐘の表情が固まる。


有馬が顔をしかめる。


「気づいたって何にだよ」


久瀬はゆっくりと資料を置く。


「この事件は普通の事件じゃない」


白鐘が息を呑む。


久瀬は続ける。


「“観測されることで形が変わる事件”だ」


有馬が声を荒げる。


「だからそれ何回目だよその話!」


だが久瀬は止まらない。


「誰かが犯人を推理するたびに」


「その推理が“次の現実の候補”になる」


白鐘の顔が強張る。


「それって……」


久瀬は短く言う。


「そうだ」


「俺の推理も含めてだ」


沈黙。


雨音だけが一段と強く聞こえる。


白鐘が震える声で言う。


「じゃあ久瀬さんが犯人を考えるたびに……」


久瀬は答えない。


その代わり、窓の外を見た。


ガラスに映る自分の姿が、一瞬だけ遅れて動く。


まるで“後から確定した像”のように。


有馬が小さく言う。


「おい……それってさ」


「俺ら、何やってんの?」


久瀬は静かに答える。


「推理だ」


有馬が苦笑する。


「それが一番やばいんだろ」


白鐘は拳を握る。


「でも……それなら」


「犯人って、最初から存在しないんじゃ……」


久瀬は否定しない。


ただ静かに言う。


「存在する前に決まる」


「それだけだ」


その言葉が落ちた瞬間、資料室の時計が一度だけ“逆に進んだ”。


誰も見ていないのに。


有馬が呟く。


「今の見た?」


白鐘は答えない。


見えていたからだ。


久瀬は目を閉じる。


そして確信する。


この事件はまだ壊れていない。


だがすでに――


「推理そのものが事件の一部になり始めている」

読んでいただきありがとうございます。

感想・評価励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ