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お前が犯人だ、その推理で世界が変わる -変遷探偵・久瀬黎司の記録-  作者: 未確定ログ
第1部 『犯人変遷篇』第1編『雨の取調室』
13/50

第13話『記録の後追い』

白鐘雨音は、机の上に並べた資料をじっと見ていた。


同じ事件。

同じ日時。

同じ証言。


だが、何かが噛み合っていない。


「……やっぱり」


有馬が顔を上げる。


「まだやんの、それ?」


白鐘は資料を指でなぞる。


「この事件記録、更新履歴が残ってます」


久瀬の視線が動く。


「更新?」


白鐘は頷く。


「でも“誰も更新していない”んです」


有馬が首をかしげる。


「意味わかんなくね?」


白鐘は続ける。


「時間だけが後から付け足されてるんです」


その言葉で空気が少しだけ変わる。


久瀬は資料を受け取る。


そこには確かに奇妙な痕跡があった。


――記録更新:本日 09:13

――記録更新:本日 09:13


同じ時刻が二重に刻まれている。


有馬が顔をしかめる。


「バグってるだけじゃね?」


白鐘は即座に否定する。


「でも内容は違います」


「片方は“被害者発見前”の情報」


「もう片方は“発見後”の情報です」


沈黙。


久瀬が静かに言う。


「順序が重なっている」


白鐘が頷く。


「はい」


有馬が呟く。


「それってつまり……」


久瀬は言葉を引き取る。


「原因と結果が同時に記録されている」


その瞬間、資料室の空気がわずかに重くなる。


白鐘が小さく言う。


「でも……現場には矛盾がないんです」


「現実は一つなのに、記録だけが複数ある」


有馬が頭をかく。


「もうそれ現実のほうがおかしいだろ」


久瀬は窓を見る。


雨は変わらない。


だが、ガラスに映る雨粒の動きがほんの少しだけ遅れている。


久瀬は静かに言う。


「記録が現実に追いついていない」


白鐘が顔を上げる。


「追いついていない……?」


久瀬は答える。


「いや」


「“追いつこうとしている”」


その言葉で白鐘の背筋がわずかに冷える。


有馬が小さく言う。


「それ何が違うんだよ」


久瀬は短く答える。


「まだ固定されていないということだ」


沈黙。


誰も笑わない。


誰も冗談として扱えない。


ただ一つだけ確かなことがある。


この事件はまだ壊れていない。


だがすでに――


「正しさの順番が揺れている」

読んでいただきありがとうございます。

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