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お前が犯人だ、その推理で世界が変わる -変遷探偵・久瀬黎司の記録-  作者: 未確定ログ
第1部 『犯人変遷篇』第1編『雨の取調室』
10/51

第10話『一つだけ合わない証言』

取調室の雨音は、一定のリズムを保っていた。


外の天候と関係なく、ここでは常に“同じ雨”が続いている。


それは変わらないはずの前提だった。


白鐘雨音は資料を読み上げる。


「被害者は昨夜23時ごろ、自宅で倒れているのが発見されました」


有馬が頷く。


「で、通報者が第一発見者と」


記録は矛盾していない。


現場写真も一致している。


証言も食い違いはない。


――普通なら、ここで終わる事件だった。


久瀬黎司は静かに資料を見ている。


「通報者の供述は」


白鐘が資料をめくる。


「“最初から誰もいなかった気がする”……です」


有馬が眉をひそめる。


「いや、それ証言になってなくない?」


白鐘も困惑する。


「本人もそう言っていて……曖昧で」


久瀬は少しだけ目を細める。


「曖昧じゃない」


全員が久瀬を見る。


久瀬は続ける。


「“最初からいなかった”と“途中でいなくなった”が混ざっている」


白鐘が戸惑う。


「でも記録は全部一致してますよ?」


有馬も頷く。


「そうそう、現場も証言もズレなし」


久瀬は静かに言う。


「だからおかしい」


その言葉で空気が少しだけ変わる。


雨音がわずかに強く聞こえた気がした。


久瀬は続ける。


「一致しすぎている」


白鐘が聞き返す。


「一致しすぎる……?」


久瀬は資料を置く。


「普通は“どこかにズレ”がある」


「だが今回はズレがないのに、違和感だけがある」


有馬が首をかしげる。


「それただの気のせいじゃ……」


その瞬間、白鐘が小さく言う。


「でも私も……少しだけ変だと思ってました」


全員が沈黙する。


久瀬は窓の外を見る。


雨は変わらない。


だが“記録されている雨の降り方”だけが、微妙に遅れている気がした。


久瀬は静かに言う。


「まだ事件は壊れていない」


「ただし――」


そこで一度言葉を切る。


白鐘が問う。


「ただし……?」


久瀬は答える。


「事件の“前提”が少しだけズレている」


その瞬間、取調室の時計が一度だけ“カチッ”と鳴った。


誰も動いていないのに。

読んでいただきありがとうございます。

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