13話 ゾンビヤギvs鷹頭のクマ
種族 ホークベア
タイプ 魔獣
レベル モンスター レベル23
筋力 卓越
敏捷 普通
耐久 卓越
知力 皆無
精神 普通
魅力 普通
スキル 攻撃レベル5、 知覚レベル9(+5)
アビリティ 暗視、嗅覚、武器(爪)、武器(牙)、鋼の肉体、スキルフォーカス:知覚、先制攻撃
正面から殴りあったら勝てそうにない。無理に戦わずここは逃げてもっとレベルを上げてから戦えばいい。
「追っかけてくるよ!」
スピードは俺の方が早いはずだが、今はナタリーを乗っけているため互角だ。
(だったら俺の勝ちだ)
速度が互角であれば疲労しない俺に勝てるはずがない。
やがて諦めたのかホークベアは離れていった。
(ふぅ……)
これで一安心……そう思ったのは甘かったのだと、すぐに思い知らされた。
(ナタリー走るぞ!)
「また!?」
知覚レベル14に嗅覚持ち。それがどれほど広範囲の臭いを察知できるのか。
最初に俺が臭いを察知した時点でとっくにあのホークベアは俺達の位置を正確に把握していたのだろう。
いやマジやばい。
走れば引き離せはするけど、しばらくするとまた近くまで追いつかれてしまう。
「うぅ……」
俺の体力は無尽蔵でもナタリーはそうはいかない。
ナタリーは鞍もないのに俺の首筋にしがみついて、なんとか背中から落ちること無く耐えている。けれど、日が落ちる頃には体力の限界がくる。
(戦うしか無いか)
俺の攻撃手段は角を振り回すこと、突撃、突き飛ばし、そしてヤギビームか。
木をなぎ倒したパワーからするに正面からの殴り合いでは勝てない。
となると、木に小さな穴を空けるだけのヤギビームが見た目以上に威力があることに賭けるか、突撃と突き飛ばしをつかったヒットアンドアウェイで戦うかか。
(ナタリー、あのあたりの草むらに魔法を)
「うん分かった」
踝くらいまでの雑草が腰の高さの下生えにまで成長する。あの中を移動するのは中々に困難なはずだ。
(よしこれでいい。ナタリーはあの木の上に隠れていてくれ、あとは俺がなんとかする)
「ヤギさん、大丈夫なの?」
(このままじゃ逃げ切れない、迎え討つしかない)
「私も!」
(相手が悪すぎる、ナタリーを狙われたら止められない、さあ早く)
「じゃあせめて……猛る荒牛の縛れぬ強さをその身に宿せ……パワー・オブ・ブル!」
そう言いながらナタリーが俺の身体に触れると、全身の筋肉がぐんと膨張した。
もしかして、
名前 ヤギさん
種族 ヤギ
タイプ アンデッド
レベル アニマルコンパニオン レベル14
筋力 卓越
敏捷 優秀
耐久 --
知力 微小
精神 普通
魅力 普通
スキル 攻撃レベル3、知覚レベル2、跳躍レベル2、知識(ダンジョン)レベル1(+2)、記憶レベル3
アビリティ 大いなる彼方の記憶、武器強化(角)、突撃強化、暗視、嗅覚、スキルフォーカス:知識(ダンジョン)、主人との絆、呪文共有、アンデッドの耐性、血脈の発露、危険回避、突き飛ばし(初級)、能力上昇
おお、筋力が卓越になっている。
(こんな魔法も使えたんだね)
「あんまりたくさんは使えないけど……時間も十分くらいだけ」
ナタリーは青い顔をしている。額には汗が浮かんでいた。この魔法を使うのは負担が大きいのか。
(よし早く上に)
「うん、ヤギさん、危なくなったら逃げてね」
(分かってる)
「一人は嫌だよ」
(ああ)
ナタリーは近くにある一番大きな木の上に登っていった。
(熊相手に木の上に隠れても見つかるとは思うけど、ナタリーに攻撃を届かせるまで時間がかかるはずだ)
言葉はないが、ナタリーの不安と恐怖の感情が伝わってくる。
不思議と、これから怪物と戦う恐怖はあまり感じていない。ただ負けられないという闘志だけが湧いてくる。ヤギは群れをなす動物だからか、自分のことより仲間に関わる方がガッツが湧くのかもしれないな。
すぐにホークベアが飛び出してきた。俺より二回り以上にでかい。腕の太さも俺の胴体程あり、無意味に羽毛で膨らんだ胸の部分はこうして正面から対峙すると、実際の大きさ以上に相手をでかく見せ、とても威圧感があった。
ああもうやってやんよ!
意識を込め、先制のヤギビームを撃つ。
ジッと音がしてホークベアの肩のあたりから煙が上がった。
「ガアアアア!!」
(怒らせただけだったか)
見た目通りの威力だったようだ。頼りにならない。
(まあ元から期待はしてないけどね!)
俺は両足に力を込め、一気に走った。
ヤギに生来備わっているのはこの脚と曲がった角。
突き刺すこともできるが、突き飛ばすことにも向く角だ。
「めぇぇ!」
気合を入れて飛び出した。
ホークベアの目の前にはナタリーが作った生い茂った下生えがある。あいつはここをかき分けて進むしか無い。
タイミングを合わせて俺は駈け出した。
頭の角を振りかざし、ホークベアに激しくぶつかった。
「ガアアアアア!!」
熊の巨躯がぐらりと揺れ、後ろに数歩後ずさる。
俺は反撃の爪を後ろに跳躍して回避、そのまま反転して距離を取った。
俺を追おうとしても下生えが邪魔でホークベアは思うように動けない。俺と違って跳躍スキルは持っていないホークベアじゃ下生えを飛び越えるなんてことはできない。
下生えをかき分けようやく少し進んだどころで再び俺の突撃突き飛ばし。
ホークベアはまた数歩後退して、下生えの中で身悶える。
これを繰り返す!
俺は直進移動直後の攻撃はダメージが二倍になる突撃強化のアビリティと、突き飛ばしの効果を高める突き飛ばし(初級)のアビリティがある。この状況を維持すれば勝てるはず!
突撃! 突き飛ばし! 逃げる!
突撃! 突き飛ばし! 逃げる!
突撃! 突き飛ばし! 逃げる!
突撃! 突き飛ばし! 逃げる!
突撃! 突き飛ばし! 逃げる!
突撃! 突き飛ばし! 逃げる!
いつのまにかホークベアの体毛が赤く染まり、動きも鈍いものに変わっていった。
「グルル……」
闘争本能を生存本能が上回ったのか、ついにホークベアは逃げ出そうと振り返る……が、進んだ分だけ下生えの中を戻るのは容易では無い。
(逃がすか経験値!)
これだけの強敵、倒せばきっとレベルがあがる。
俺はトドメの突撃をかけるために走りだした。




