第3章 1:お騒がせ斥候部隊、急襲!
「大変! 大変ぎゃおーっ!」
ドックの天井配管から、弾丸のような「モフモフ」が飛んできて駆の頭の上に不時着した。
看板ペットのパタが、短い手足をバタバタと狂ったように動かしている。
「おわっ、どうしたんだよパタ」
駆が頭の上の温かい塊を押さえる。
遥か最果ての方角から響いたあの人工的な重低音の咆哮に、ドック内が緊迫した空気に包まれた矢先のことだった。
パタは駆の髪の毛をぎゅっと掴んだまま、必死に短い羽を羽ばたかせた。
「とぉーーくのほうに、見たことないトゲトゲの恐竜たちが近づいてるのぱた! みんな目が赤くて怖いのがおーっ!」
「な、何だって!?」
駆、ラーナ、ロッソの3人がドックの外へ飛び出した。
集落の防壁の向こう側――
巻き上がる激しい砂煙と、地を這うような不気味な足音を立てて突入してきたのは、5人の男たちだった。
彼らは馬のように跨るタイプの小型肉食恐竜、デイノニクスの背中に乗っていた。
デイノニクスたちは、鋭い鉤爪をカチカチと鳴らし、俊敏にステップを踏んでいる。
しかし、その頭部には不気味に赤く光る未知の金属製ヘッドギアが強引に埋め込まれ、瞳からは生物としての生気が完全に失われていた。
「ハーーーッハッハ! 怯えろ、泣き叫べ、無力な民間人ども!」
先頭の一騎が、大袈裟に黒いマントを翻して高笑いした。
金髪のオールバックに、不自然なほど大袈裟な肩パッドをつけた男――キルガ要塞軍の斥候部隊を率いるバルト隊長である。
「我らは偉大なるキルガ総帥直属、デイノニクス生体バイク部隊! この居留区の防衛拠点を……拠点を……あれ? おい、地図だとここが指令部のはずだろ?」
バルト隊長は急に素に戻ると、手元の革製の地図をひっくり返したり横にしたりし始めた。
後ろの隊員が小声で突っ込む。
「隊長、それ上下逆です。ここはただの重機ドック(修理工場)です」
「な、何ィ!? 貴様、なぜそれを早く言わんか! カッコつかないだろうが!」
そのコントのようなやり取りに、張り詰めていたドック周辺の緊張が一気に抜けた。
頭の上のパタが「絵に描いたようなドジっ子なのぱう……」と呆れた声を出す。
しかし、駆の「天才スイッチ」は、彼らが乗っている恐竜たちの違和感に鋭く反応していた。
駆は泥だらけの地面を一歩踏み出す。
「おい、そこの肩パッド男」
「な、何だ貴様は! 我らの威光に恐れおののいたか!」
「あんた、その恐竜の制御方法、間違ってるぞ。デイノニクスは骨盤の傾斜が前傾しているから、そんな風に人間の体重をダイレクトに背中に乗せたら、第3腰椎に過度な摩擦がかかる。
しかも頭のその光る機械で無理やり弄っているせいで、三半規管のバランスがガタガタだ。」
「旋回する時、右側のステップを踏み込めないだろ?」
「なっ……!?」
バルト隊長は文字通り顎が外れそうなほど驚き、慌てて手元のコントローラーを隠した。
「な、なぜそれを……! 確かにこいつ、さっきから右に曲がろうとすると嫌がるんだよ! って、違うわ! 敵にアドバイスされてどうする! 我らは侵略者だぞ!?」
「隊長、敵の言う通り、こいつらの右脚の人工筋肉、オーバーヒートしかけてます!」
「ええいやかましい! とにかく突撃だ! 踏み潰せ!」
バルト隊長が手元のコントローラーのボタンを狂ったように押す。
頭部の機械が妖しく光り、5体のデイノニクスが生気を失った目で、鋭い爪を剥き出しにして駆たちへ襲いかかった!
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