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『プロジェクト・ジュラ~恐竜は超古代文明の生体重機でした~』  作者: KYORyu


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第12章 2:神秘の刻印、占い婆の予言 【変人《天才》なのもふ……】

「ピ、ピギャァァァーーーッ! 寒いのもふ! 鼻水が凍ってダイヤモンドになっちゃうのぱうーっ!」


 パタが振動時(しんどうじ) 駆(かける)の頭の上で、全身の毛並みを最大に膨らませて丸まりながら悲鳴を上げた。


 傷ついた解体重機ティラノサウルスをシャントゥンゴサウルス(重牽引キャリア仕様)の低床ベッドにガチガチに固定し、太い麻縄システムをギチギチと軋ませながら、占い婆バルバの予言を頼りに進路を往くこと数日間。


 駆たちが辿り着いたのは、一面が純白の雪と氷に閉ざされた、超古代の『北の極寒の大地』――その凍てつく銀世界の中にひっそりと佇む、雪深い未知の村だった。


「ここが、予言にあった北の極寒の大地ね……。村が凍りついてるわ」

 ラーナが琥珀色の瞳を凍てつく空へと向けた。


「すごいな……こんな過酷な環境にも、彼らは適応しているんだね」

 駆の天才スイッチが極寒のなかでも鋭く駆動する。


 彼らの目の前をのっそりと歩いていたのは、現代の化石図鑑では絶対に分からなかった、全身にモフモフとした分厚い防寒用の「羽毛《体毛》」をびっしりと蓄えたシノニトサウルスたちだった。


 その村の住人たちも、シノニトサウルスの毛を丁寧に紡いで作られた、驚くほど温かい防寒用の上着や、毛皮で出来た頑丈な長靴、手袋を身につけて寒さを凌いでいる。


 鉄鉄の居留区の軽装のまま凍える駆たちを見て、村の入り口にいた大柄な老人が、シノニトサウルスの毛皮をまとった体を揺らして近づいてきた。


「見慣れん重機を引いてると思えば、南の職人どもか。なんという格好だお前ら。そんな薄着じゃ、この北の冷気に肺のチューブまで凍りついじまうぞ。ちょっと待っとれ! おーい!予備の防寒具があっただろ。持ってきてくれ!」


 老人は手下に合図を送り、大きな木箱を運ばせてきた。


「これは俺たちの村の防寒ギアだ。使い古しだが、シノニトサウルスの毛を丁寧に紡いであってな。職人の指先が凍らんよう、手袋も長靴も頑丈に作ってある。持っていけ、そんな薄着、見てるこっちが凍えちまうわい」


 駆が代表してその温厚な厚意を受け取り、一同はその場で凍える身体を毛皮へと滑り込ませた。


「長老さん、助かるよ。……ところで本題なんだが、このキャリアに載せてるティラノの装甲を直したいんだ。この村に、こいつを修復できるような珍しい鉱石や、凄腕の職人はいないか?」


「あー。鉱石はわからんが、それらを加工する職人ならグラニトだな! あやつの腕を超える者はおらん。断言する」

「ただやつは相当の変わりもんでな。わしもしばらく姿は見てないが……。ほれ。あの雪に埋もれた林の奥、かろうじて枯れ枝が途切れて空間になっている場所があるだろう? 道すら埋まっちまってるが、あそこを進めばやつの工房に辿り着けるぞい」


 長老はそう言うと、寒そうにシノニトサウルスの毛皮に顔を埋め、村の奥へと引き返していった。


 駆たちはさっそく借りた毛皮のギアのボルトを締め直し、白い息を吐きながら、その凍てつく林の奥へと歩を進める。


 かろうじて枯れ枝が途切れた雪道を進むと林の開けた場所に、凍りついた鉄の廃材と恐竜の骨骨で無骨に組まれた、巨大な工房が佇んでいた。


 すすで黒ずんだ扉を叩くと、中から頑固そうな偏屈な老人が姿を現した。


 彼こそが、この過酷な北の大地で暮らす人々なら誰もがその名を知る、未知の鉱物や恐竜の骨殻を融解・合成させ、最強のカスタムパーツを鋳造すると噂される、凄腕の生体錬金術師――グラニトだった。


「フン、南の生ぬるい土地から這い出してきた泥臭い職人どもが、我が工房に何の用だ」


 グラニトは大きな鉄の丸眼鏡の奥から冷酷に駆たちを値踏みし、フンと鼻を鳴らす。


「ティラノの牙の鍛え直しだと? 帰れ帰れ! そんな暇1秒もないわ! 他人の重機なんぞ直してたら仕事が溜まりよるわい。わかったらさっさと帰れ」


 グラニトは最初、明確に難色を示し、扉を閉めようとする。


 しかし、その偏屈な錬金術師の動きを、駆の「骨の目」が完璧に透過ロックオンしていた。


「――待ってください、グラニトさん」


 駆は一歩踏み出し、グラニトの持っていた特殊な融解液のボトルを凝視する。


「そのボトルの配合比率、カルサイト(方解石)とチタンの骨化合の応力計算が、3ミリグラムほど狂っていませんか? それだと、ジュラ紀の竜脚類の骨を融解する際、骨組織の内部に微細な気泡(ボイド)が残って、強度が20%も低下してしまいます。骨の原子結合《テコの原理》を最大にするなら、マンガンの比率をあとコンマ5パーセント上げるべきだ!」


「……何だと?」


 グラニトの手がピタリと止まった。彼の奥の目が、驚愕に変貌する。


「お前、なぜ外側から見ただけで、我が一子相伝の融解液の『分子組織の歪み』が見抜ける……!?」


「いや、ただの考古学者です。ですが、骨格の力学と分子構造的の美しさを見れば、自然と数式が頭に浮かんでくるんです。あなたのこの工房の炉の構造、本当に合理的で惚れ惚れするほど美しい!」


 駆は目を血走らせ、グラニトの頑固な顔のすぐ近くまで顔を寄せ、早口で熱弁を振るい始めた。


「この男……本物の骨格の、ネジの、構造の、変人《天才》なのもふ……」

 パタが呆れた声を出す。


 しかし、その駆の「不気味なほどの骨マニアっぷり」と「変なこだわり」が、偏屈な天才錬金術師グラニトの魂に、特大の火をつけた。


「ハハ……! ワハハハハ! 面白い、面白いぞボサボサ頭の小僧! 我が理論の美しさを理解できる男に、まさかこの極寒の地で出会えるとはな!」


 グラニトは駆の肩をガシガシと叩き、これまでの頑なな態度を一変させ、最高の笑顔で意気投合した。


「よし、お前たちのティラノを、我が錬金術で本物の『最強の解体機』へと鍛え直してやろう! だが、そのためには素材が足りん。この村の周囲に巣食う、白亜紀初期のデカめの野生恐竜の『特質骨殻』を切り出してくるのが条件だ!」


 グラニトが強力な協力者となった瞬間だった。


 ティラノを救うため、駆たちの北の大地での新たなる狩猟(発掘)バトルが、幕を開けようとしていた。


【シャントゥンゴサウルス(重牽引キャリア仕様)】

挿絵(By みてみん)

 分類: 鳥脚亜目(白亜紀後期)

 重機用途: 破損・大破した機体の野戦回収、重量物および大型資材の長距離拠点間搬送。

 カスタム特徴: 四足歩行時のフラットな背骨と腸骨に、カルシウム合金製の強靭な搬送用低床ベッドをボルト留め。側面に恐竜の骨を削り出した手動巻き上げギヤ(ウインチ)を溶接し、積載した機体を太い麻縄システムでガチガチに締め上げて固定する。超重量の積載に耐えるため、四肢の関節に高圧バイオチューブ(生体サスペンション)を二重増設。胸部組織の直上に流線型の生体コックピットを埋め込み、手綱型の伝達神経インターフェースで操縦する、泥濘や岩盤を物ともしない圧倒的な足腰を誇る後方支援重機。


【シノルニトサウルス(防寒・羽毛仕様個体)】

挿絵(By みてみん)

 分類: 獣脚類(白亜紀初期・極寒地適応型)

 重機用途: 極寒地での物資搬送、氷床の掘削、防寒用生体繊維の供給。

 カスタム特徴: 全身をモフモフとした分厚い防寒用の「羽毛(体毛)」で覆われた、北の大地固有の生体。その抜け落ちた毛は、超古代の衣服や長靴、手袋へと加工され、マイナス30度を超える極寒のなかでも、人間と重機が100%のシンクロ率(体温維持)を維持して活動するための重要な生体資源となっている。

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