第11章 5:ジュラ紀の将軍登場!傷つくティラノ 【最悪な大破バグ】
勝利の歓喜に沸くドックの仲間たちの前で、スーパーサウルスの圧倒的な質量攻撃を喰らい、力尽き地面に横たわるティラノサウルスの巨体は痛々しかった。
黒チタンの牙は激しく摩耗し、左舷のバイオチューブからは未だ生体蒸気が漏れ出している。
「……ティラノの肉体サーボへの負荷が深刻ね。このドックの設備だけじゃ、パーツの完全な修復は不可能だわ……」
ラーナがティラノの傷ついた皮膚にそっと手を触れ、琥珀色の瞳を曇らせた。
「僕が下手だから…弱いから…大事なティラノこんなにボロボロに傷つけちゃったよ、ラーナ姉ちゃん」
ロッソが手綱(操縦桿)を握りしめたまま泣き叫んでいた。
黒チタンの牙は激しく摩耗してひび割れ、左舷のバイオチューブからは未だ生体蒸気が漏れ出している。
相棒の大破というかつてない絶望の前に、ドックの誰もが言葉を失っていた。
だがその時、激しく泣きじゃくっていたロッソが急にピタッと涙を止め、何か素晴らしい名案を思いついたかのように、そのおめめをパチッと不屈の輝きで大きく輝かせた。
「――そうだッ!! 父ちゃんのいる、『アビス・ドック』へ持って往けば、すぐに直してもらえるよッ!!」
ロッソの言うアビス・ドックとは、この鉄鉄の居留区の東の港から、さらに5ブロックほど荒野を北上した大深度の境界線にある、港湾整備主任(一流の操縦士)の父バロムが務める頑強な生体修理ドックのことである。
「――あ、アビス・ドックね。確かにあそこなら、どんな大破ハザードからでもメインフレームを溶接し直せる最高の機材が揃ってるけど……」
ロッソの提案に、ラーナが煤まみれのスパナをいじりながら、これ以上ないほど申し訳なさそうに眉をひそめた。
「……そうしたいところなんだけど、今は無理なのよ。先日の大雪と、大規模な『雪崩』のせいで、アビス・ドックへ続く陸路のルートが完全に丸ごと閉ざされちゃっているの」
「ええっ!? そんなあ嘘だろォッ!!」
最高のアイデアが遮られ、ロッソはこれ以上ないほど寂しそうな顔で肩を落とした。
ロッソは本来、アビス・ドックのバロム親父の元を離れ、単身この鉄鉄の居留区へと操縦士の手綱を磨くために修行へやってきている身だったのだ。
「なんだよ……。ティラノを直して、久しぶりに父ちゃんや母ちゃんに会えると思ったのにさ……」
「元気出しなさいよ、ロッソ。バロムおじさんと、マリアおばさんには、陸路が繋がったらまた絶対に会いに行きましょ」
ラーナが優しくロッソのツナギの背中をポンと叩いて励ます。
「――だが、どうする。あの雪崩の壁を力ずくで完全解体する時間なんて残されてねえぞ」
腕を組み、不骨な髭を震わせながらバルト隊長が並び立つ仲間たちを見回して重々しい生の声を響かせた。
「ここ(ガロンドック)にある鉄クズじゃ、ティラノの黒チタン装甲をリペアするための特殊な素材も無けりゃ、大破した油圧ソケットを完全に繋ぎ直すための高度な加工技術もままならないだろ」
バルト隊長の言う通り、ガロンドックの設備だけでは、この最悪な大破バグを1ミリも修理することは不可能だった。
「――ねえ、ラーナさん、バルト隊長」
沈黙を守っていた駆が、そのエメラルドグリーンの瞳をギラリと知的に輝かせ、天才考古学者としての脳内索敵スキャン(パズル)を回しながら、みんなの顔を真っ正面から見据えた。
「この鉄鉄の居留区のなかに、腕のいい凄腕の職人たちの情報が集まったり、珍しい鉱石や代わりの素材を取引しているような、大きな情報源の場所はないのかな?」
駆の一言に、ラーナがハッと頭のボルトが繋がったかのように小さなおめめを弾けさせた。
「――そうだわッ!! 『中央市場』へ行きましょ!!あそこなら腕利き職人も、横流しの珍しい鉱石も、まとめて一発で見つかるわ!!」
こうして、ジュラ紀の総大将ブラム将軍を退けたものの、最大の火力を失ってしまった駆たち。
彼らは相棒を救うための最初の手がかりを求めて、居留区の賑わう中央市場へと歩みを進めるのだった。
(第11章・完 / 第12章へ続く)
恐竜・古生物重機図鑑(第11章)
【スーパーサウルス(ブラム将軍専用・大陸破城仕様)】
弱点(骨格特性): 全長40メートルの巨体を支えるため、前後の脚で均等に応力を逃がす「架橋型骨格」の特性を持つ。前足を高く持ち上げた際、全身の質量が「左の後ろ脚の付け根(骨盤結合部)」へ一瞬だけ集中する。
この瞬間に超高圧の局地打撃(ドリル掘削)を受けると、骨格の応力分散が完全に崩壊し、巨体そのものの超重量によって前進駆動が全停止するという致命的な弱点を持つ。




