第11章 3:ジュラ紀の将軍登場!傷つくティラノ
砂漠の地殻そのものがひっくり返るような大震動と共に、砂塵を突き破って現れたのは、これまでの恐竜重機とは次元の異なる「動く超巨大山脈」だった。
全長40メートルを超えるジュラ紀の超弩級竜脚類――『スーパーサウルス(ブラム将軍専用・大陸破城仕様)』。
頭部に埋め込まれた巨大な王冠型のリミッターからは、漏れ出たドス赤いバイオフラックス(生体エネルギー)が放電のようにバチバチと火花を散らしている。
その全身は、厚さ数十センチにも及ぶ『積層複合鋼鉄装甲』で隙間なく固められ、長大な首と尾が動くたびに、周囲のシダの巨木が一瞬で木っ端微塵に弾け飛んでいく。
そのスーパーサウルスの胸部ドーム型コックピットから手綱(操縦桿)を握り、冷酷な目で見下ろしている男こそ、キルガ要塞軍ジュラ紀部隊の最高司令官――ブラム将軍その人であった。
「――ザラトとシルフを破るか。泥臭い裏切り者どもめ、少しは楽しませてくれる」
ブラム将軍が手元の生体レバーを静かに押し下げる。
「だが、我が『スーパーサウルス』の前には、すべてのパワーが児戯に等しい。……圧し潰せ」
「ギィァァァァァァーーンッッッッ!!!!!!」
空間そのものを引き裂くような、悍ましい超重低音の咆哮。
スーパーサウルスがその圧倒的な大質量を乗せて地を蹴った。
時速50キロ。
時速としてはデイノニクスに劣るが、40メートル、数十トンという「質量そのものの突撃」は、避けることすら不可能な絶望の津波だった。
「ひ、ひえぇぇぇ! スケールが違いすぎるのもふーっ!」
駆の頭の上でパタが感覚毛を最大に逆立てて叫ぶ。
「ロッソくん、まともに正面から受けてはダメだ! 右へ跳んで回避を!」
駆の天才スイッチが警報を鳴らすが、スーパーサウルスの巨体が引き起こす凄まじい風圧と地響きの前に、ティラノサウルスの足元がわずかにすくんだ。
ドゴォォォォォォーーンッッッッ!!!!!!
「うわあああああぁぁぁっ!?」
強烈な激突音が砂漠に轟く。
ティラノサウルスは自慢の漆黒の黒チタンの牙でスーパーサウルスの前足の装甲に噛みつこうとしたが、無敵を誇るはずの黒チタンの牙が、敵の『積層複合鋼鉄装甲』の圧倒的な硬度と質量の前に、ガチィィィンと火花を散らして弾き返された。
それどころか、スーパーサウルスがその長い尾を鞭のようにしならせて振り抜いた一撃が、ティラノの左側面を正確に捉えた。
バキィィィィィン!!!
「ギャオッ……ガガッ……!」
ティラノサウルスが悲痛な咆哮を上げ、地面を激しく転がった。
コックピットの生体モニターが一瞬にして「深刻な過負荷(大破寸前)」の真っ赤な警告色に染まり、計器から激しい火花が飛び散る。
メンテナンス用バイオチューブが何本も引きちぎれ、高圧の生体蒸気がブシューッと音を立てて噴き出した。
「が……はっ、……っ! ごめん、ティラノの……ティラノのメイン油圧が……ッ!!」
直撃を喰らったロッソのティラノサウルスは息を荒くし、その強靭な後ろ脚をガクガクと震わせながら、何とか立ち上がろうとするが、激しいダメージのせいで泥の中に崩れ落ち動けなくなってしまう。
「ハハハ! 陸の王者も、我がジュラ紀の絶対王者の前にはただのトカゲよ!」
ブラム将軍の冷酷な笑い声が響く。スーパーサウルスがその巨大な前足を高く持ち上げた。
動けないティラノを、コックピットごと完全に踏み潰し、スクラップにするための死の足取りだ。
「ロッソ!! みんな! ――クソッ、なんて質量だ。だけど、絶対にパズルを解く隙はあるはずだ!!」
駆の脳細胞は、このかつてない極限状態のなかで、さらに超高速で回転していた。
バルトのデイノニクス部隊と、ミカのコンプ部隊が、傷ついたティラノを自らの身体で庇うようにして、絶望的な超巨大重機の前に立ち塞がる。
「ハハハ! 小物が何頭群れようと、我が要塞を止められると思うたか! 潰れよ!」
ブラム将軍の冷酷な嘲笑とともに、スーパーサウルスの巨大な前足が、ラーナたちを目がけてゆっくりと、けれど絶対に避けられない質量となって振り下ろされた。
スーパーサウルスの巨大な前足が、前線のバルト隊のデイノニクス5頭(従属コンプ45頭)、ミカのコンプ10頭、そしてその後ろに座り込む動けないティラノを目がけて、絶対に避けられない絶対質量となって無慈悲に振り下ろされた。
「――バルト隊!! 奴の『肩フレーム』にアンカーを撃ち込めッ! 動けないティラノのフレームごと、力ずくで横へ引き抜くぞォォォッッッ!!!!!」
バルト隊長の野生の咆哮とともに、5頭のデイノニクスから放たれた超高張力チタンワイヤーが、スーパーサウルスの巨体の基部へとガチィィィンと突き刺さった!
もう一端のフックをティラノサウルスのチタンフレームへと瞬時に同期固定し、ワイヤーの巻き取り駆動炉を最大限界突破で過駆動させる!
ズズズズズズズズズズズズズッッッ!!!!!
振り下ろされる巨足の風圧が迫る、コンマ数秒の極限の刹那!
スーパーサウルス自身の巨体の剛性を「クレーンの支柱」として逆利用した凄まじい巻き込み力により、動けなくなっていたティラノの巨躯が、地面の土煙を激しくハネ上げながら、横の空間へとズズズズッと力ずくで引き摺り回され、間一髪で引き抜かれた!
同時に、バルト隊もミカのコンプ部隊も、その引き抜かれるワイヤーの軌道の力学(反動)を逆利用して、左右の空間へとダイナミックにハネ飛んで退避してみせたのだッ!
ドバァァァァァァァァンッッッッ!!!!!!
直後、彼らがいたはずの地面が、スーパーサウルスの天文学的な踏み付けによってクレーターの如く爆砕され、猛烈な土煙がブワァァァッと外の荒野へ吹き荒れた。
「ハァ……ハァ……っ! 泥臭い手綱捌きだったが、全員無傷だ」
バルトが肩パッドを震わせニカっと笑いサムズアップした。
「危機一髪だ…おかげで見えてきたよ」
振動時駆のエメラルドグリーンの瞳が、神の如き不屈の輝きでギラリと鋭く輝いた!
天才スイッチである『骨の目(透過スキャンシステム)』を最大過駆動させ、四十メートルを超える超巨大山脈の剛性力学を一瞬で透過看破する!




