第11章 2:ジュラ紀の将軍登場!傷つくティラノ
「キィィィィィン――――!!」
上空を埋め尽くすランフォリンクスとプテロダクティルス、計20頭の航空部隊から放たれる高周波ジャミング電波。
その目に見えない音響の壁が、ドック周辺の空間を激しく歪めていた。
「くっ……! 同調手綱の波長が乱されて、ティラノの駆動筋肉が出力不足を起こしてる!」
手綱(操縦桿)を握るロッソが歯噛みする。
黒チタンの牙を換装したばかりのティラノサウルスだが、空からの執拗な電波妨害により、その圧倒的なパワーを10代前半の少年には制御しきれなくなっていた。
そこへ地鳴りを上げて肉薄してくる、ザラトのトゥリアサウルスと、シルフのブラキオサウルス。
「ハハハ! 動けぬ陸の王者など、ただの肉塊よ!」
巨大な生体粉砕カッターをギラつかせたシルフのブラキオが、ティラノの喉元へ向かってその巨体を傾ける。
「……慌てるな、ロッソくん。ラーナさん、ドックの『プテラノドンの測量レンズ』の周波数を、今すぐ『左逆位相(180度反転)』に固定してくれ!」
インカム越しに叫ぶ駆の目がギラリと光り、天才スイッチが火を吹いた。
「えっ!? 逆位相って……まさか、空からのジャミング音をぶつけて相殺する気!?」
「そうさ。翼竜たちの骨格の『受容体(耳の骨)』の伝達周期なら、化石の空洞比率からすべて計算済みだ。
この逆位相の電波をドックのバイオスピーカーから最大出力で放てば、敵のジャミングを正面から完全に打ち消して無力化(完全相殺)できる!」
「了解! やってやるわよ!」
ラーナがコンソールへ飛びつき、完璧な手際でバイオレバーを限界まで引き絞った。
――ジ、ジジジジジ、バリバリバリィィィンッッッ!!!
ドックの対空アンテナから放たれた目に見えない逆位相の衝撃波が、上空の20頭の航空部隊を直撃した。
「キ、キィァァァッ!?」
脳制御リミッターの信号が駆の逆ジャミングによって完全に書き換えられ、狂気から解放された20頭の翼竜たちの瞳に、本来の優しい穏やかな光が戻った。
「ピギィ! 上空のチビちゃんたちが、みんなこっちの味方になったのもふ!」
パタが駆の頭の上で歓声を上げる。
本来の心を取り戻したランフォリンクスとプテロダクティルスは、鋭い反転を見せると、今度は駆たちの盾となるべく、地上のザラトとシルフの視界を目がけて一斉に急降下爆撃(目つぶし)を開始したのだ!
「な、何だと貴様らァッ!? 我らの兵器が、なぜ敵を援護している!」
巨漢のザラトが顔を引きつらせる。
20頭の翼竜による完璧な空中目つぶしにより、トゥリアサウルスとブラキオサウルスの巨大重機は、完全にその視界(照準)を奪われて立ち往生した。
「バルト隊長、ミカちゃん、今だ! トゥリアサウルスの右前足の『舟状骨』! そしてブラキオの首の『第5頸椎』の固定ボルト! 視界を失って重心がブレた今、そこが全身の重さを支える唯一の限界点だ!」
「ハッ、お安い御用だ! 野郎ども、フォーメーション・アンカー! あの巨大トカゲたちの関節をぶち抜くぞ!」
バルトのデイノニクス部隊50騎と、ミカの操る10頭のコンプソグナトゥス部隊が、時速80キロの猛烈な波状連携で敵の死角へと同時に滑り込んだ。
高圧の水中バイオアンカーがトゥリアサウルスの右前足の舟状骨へとガチリと噛み込み、ミカのコンプ部隊がブラキオの首の固定ボルトをその鋭い顎で強引に引きちぎる。
ガガガガガッ! ドゴォォォーン!!
「ロッソくん、黒チタンの牙で、二体まとめてトドメだ!」
「いっけぇぇぇぇ! ティラノォォォッ!!」
ロッソが手綱(操縦桿)を全力で押し込む。
漆黒の輝きをまとったティラノサウルスが跳躍し、その無敵の黒チタンの牙で、ザラトのトゥリアサウルスとシルフのブラキオサウルスのリミッターヘッドギアを、二体同時に噛み砕き、粉砕した。
バリバリバリィィィンッ!!!
凄まじい青い火花が砂漠の戦場に飛び散り、ジュラ紀の「巨頭二人衆」の巨大重機は、瞳からドス赤い狂気が消え去り、救われたようにその場へどすんと大人しく横たわった。
「ば、馬鹿な……シルフ、退くぞ! 奴らは化け物だ!」
コックピットから這い出てきた巨漢のザラトと、女性のシルフは、予備の小型重機に命からがら飛び乗ると、うなだれて砂漠の奥へと逃げ帰っていった。
「やった……やったのぱた! 巨大な部下たちを全員倒したのもふ!」
パタが万歳をして喜ぶ。
バルト隊長も金髪のオールバックをビシッと撫で下ろし、「フッ、これが俺たちの完璧な連携――」とカッコつけようとした、その瞬間だった。
地平線のさらに向こう、砂漠の地殻そのものがひっくり返るような、これまでの重機とは次元の違う、絶望的な大質量を誇る足音が、ドックに向かってズゥゥゥゥン……と重重しく響いてきた。




