第10章 1:ジュラ紀の鉄槌!動く要塞を撃破せよ
地下鉱脈から持ち帰った「黒チタン鉱」を使い、ドックではティラノサウルスの牙と爪を最強の硬度へと鍛え直す、極秘の肉体改造が始まっていた。
「よし、チタンの分子結合(骨格フレーム)への定着率は完璧だ。これでどんな強固な敵の装甲でも、紙切れのように噛み砕けるようになる」
振動時 駆が、調整カプセルの中で眠るティラノの生体モニターを見上げながら、天才スイッチを入れて呟いた。
「でも、完全に細胞が結合するまで、あと丸一日はティラノを起動できないわよ。今攻め込まれたら、うちの最大火力がゼロってことだからね」
ラーナが父親形見のスパナを握りしめ、琥珀色の瞳に緊張を走らせる。
「大丈夫だよラーナ姉ちゃん、駆アニキ! いざとなったら、僕がパキケ・ドリルで敵の足を止めてみせるから!」
ロッソが頼もしく胸を張る。
そのロッソの頭の上で、パタが「パキケのドリルは絶好調なのもふ! でも、なんだかドックの外の空気が、急に冷たくなってきたのぱた……」と、感覚毛を逆立てて怯え始めた。
ズゥゥゥゥン……!!!
突如、地下からではなく、居留区の北側の防壁を真っ正面から踏み潰すような、凄まじい大震動がドックを襲った。
「な、何事よ!?」
ラーナたちが外へ飛び出した瞬間、彼らの目に飛び込んできたのは、地平線を完全に埋め尽くすほどの、質量そのものが移動しているかのような巨躯だった。
現れたのは、全長25メートルを超えるジュラ紀の超巨大植物食恐竜――『ディプロドクス』だった。
しかし、その優しいはずの巨体は、敵軍の冷酷な生体工学によって完全な「動く要塞」へと改造されていた。
全身を何重もの鋼鉄の防壁装甲で固め、その長大な尾には、城壁を一撃で叩き割るための超重量級の鉄球がボルト留めで換装されている。
その背中にそびえ立つ、巨大な要塞コックピットから手綱(操縦桿)を握り、冷酷な目でドックを見下ろしている男がいた。
キルガ要塞軍の誇るジュラ紀の総大将――ブラム将軍の右腕であり、冷酷無比な副官ベリルであった。
「ハァーッハッハ! アイゼン将軍を失脚させたというドックのガキども、我がブラム将軍の命により、その不遜な息の根を止めに来た! 陸の王者が動けない今、貴様らに何ができる!」
配下の男が拡声器のバイオインカムを通じて嘲笑する。
ブラム将軍の配下は、ティラノが現在改造中で動けないというドックの最大の隙を完璧に突いて、この動く要塞を送り込んできたのだ。
「ギィァァァァァーーーーッ!!」
リミッターを限界まで起動されたディプロドクスが、激痛に狂った咆哮を上げ、その巨大な尾の鉄球を凄まじい遠心力で振り回し始めた。
一撃でもドックに直撃すれば、生まれたばかりのルナやバルト部隊の家族たちもろとも、跡形もなく圧し潰されてしまう。
「ティラノが動けないなら、俺たちが盾になるまでだ! 野郎ども、フォーメーション・アンカー! 家族を守るぞ!」
金髪のオールバックを風になびかせ、バルト隊長がデイノニクスに跨がって飛び出してきた。
ギル、ハンス、カイル、トードの4人も、死を恐れぬ目でそれに続く。
「私も手伝うわ! チビちゃんたち、あの動く要塞の足元をかく乱しなさい!」
緑鉄の里から同盟に駆けつけていたミカが鋭く口笛を吹き、45頭のコンプソグナトゥス部隊が一斉にデイノニクスたちの背後へと整列した。
前回、駆が伝授した『混成部隊』の陣形だ。
「全軍、突撃ーーーッ!!」
バルトの号令とともに、バルト隊50頭、ミカのコンプ部隊10頭(計60頭)の爪と牙が、ドックの家族を守るために、超巨大な動く要塞へと向かって果敢に突撃を開始した!
ティラノ不在のなか、ドックの仲間たちの絆が試される、最大の前哨戦の幕が切って落とされる。




