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『プロジェクト・ジュラ~恐竜は超古代文明の生体重機でした~』  作者: KYORyu


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第9章 3:群れなす爪!緑鉄の里(フェロ・ヴェルデ)【盗賊来れり】

「ヒャッハハハ! 命が惜しけりゃ、その『黒チタン鉱』を置いてさっさと失せな!」


 松明の禍々しい炎に照らされ、地下洞窟の奥から現れたのは、骸骨のマークを刻んだ不気味な金属マスクで恐竜たちを強引に武装させた地下盗賊団だった。


 彼らが操るのは、急造のリミッターで狂暴化させられたユタラプトルたち。その数、およそ20頭。


 狭い地下洞窟で、駆(かける)たちは完全に退路を断たれてしまった。


「ミカちゃん、あいつらあんたの里の鉱脈を狙う、お尋ね者の盗賊団よ!」


 ラーナがスパナを構えて叫ぶ。


「……っクッ、私のコンプ部隊だけじゃ、あんな武装恐竜たちには敵わない……!」


 ミカが司令塔(アルファ個体)を腕に抱きかかえ、翡翠色の瞳を悔しそうに震わせる。


「――いや、敵うさ。二人の戦術を一つに合わせればね。それにはミカちゃんの『完全同期・従属』と緑鉄の里のコンプソグナトゥスたちの力が必要なんだ!手を貸してくれないか」


「わかったわ! 協力する!」

 気丈な顔でミカが即答した。


 泥水を拭いながら立ち上がった駆の目は、すでに勝利への完璧な「設計図」を透過スキャンしていた。


 天才スイッチが、かつてない高出力で駆動する。


「バルト! デイノニクス5騎をそれぞれ『大隊の司令塔(アルファ)』として配置するんだ!」

「そしてコンプソグナトゥスたちを、その5騎のデイノニクスの背後へ9頭ずつ従属させる」

「デイノニクスの脳波を中継基地にして、子分のコンプたちへ数珠繋ぎに命令をリレーしていく――『鎖状多重同期(チェーン・シンクロ)』で同時にコントロールするんだ!」


「な、何ですって!? デイノニクスとコンプを同時に操るなんて、そんな異正のシンクロ、手綱(精神伝達インターフェース)が拒絶反応を起こしちゃうわ!」


 ミカが驚愕の声を上げる。


「大丈夫だ。デイノニクスとコンプソグナトゥスは、骨盤の結合線の角度と、超音波の受容体の構造が生物学的にほぼ一致している」

「バルト隊長たちのアルファ個体のデイノニクスが放つ低周波の咆哮をコンプたちに伝えれば、手綱の負荷をゼロにしたまま、10頭×5の軍隊として駆動する!」

「ミカちゃんのコンプ部隊10頭と合わせて合計60頭の『生体混成大部隊』が今ここに完全大覚醒を果たすんだ !!」


 駆の神がかった骨格工学の解説に、ミカは目を見開いた。


「……面白いじゃない。やってやろうじゃないの、ボサボサ頭の天才さん!」


「フッ、男バルト、新しいフォーメーションの命名なら任せろ! その名も――」


「隊長、カッコつけてる時間はありません、敵が来ます!」

 ギルが鋭く突っ込む。


「みんないくよ、バルトたちのデイノニクスと音波を同調(リンク)させなさい!」


 ミカが鋭く口笛を吹くと、彼女の指の上の司令塔が「チチチチッ!」と高周波を響かせた。


 バルトのデイノニクスが「グルゥァァァッ!」と低く咆哮した瞬間、ドックのデイノニクス5騎の背後のコンプソグナトゥスが吸い寄せられるように完璧なフォーメーションで整列した。


「全軍、突撃(アクセル)ーーーッ!!」


 バルトの号令とともに、60頭の生体混成大部隊が暗闇の洞窟を爆走した。


 時速80キロのデイノニクスが大型の敵の注意を正面から引きつけ、その死角から、コンプソグナトゥスの大群が、まるで黒い波のように敵の足元へと滑り込んでいく。


「ヒ、ヒギャッ!? 足元から何かが上がってく……うわあああっ!?」


 盗賊団の武装ユタラプトルたちが、足元を縦横無尽に工作するコンプたちの鋭い噛みつきと、デイノニクスの電撃奇襲の前に、完全にパニックに陥った。


 駆の読み通り、デイノニクス1頭の指示がコンプソグナトゥス隊の爪へと完璧に伝わり、盗賊団の布陣は内側からボロボロに崩壊していく。


「おのれ、退くな! 押し潰せ!」


 盗賊団の頭目が叫ぶが、そこへロッソのティラノサウルスの爪が真っ正面から迫った。


「どきやがれ、悪党どもーーーっ!!」


 ガガガガガッ! ドゴォォォーン!!


 ティラノのチタンの顎が、盗賊団の武装ユタラプトルを壁ごと派手に粉砕した。

 頭部のリミッターを次々と叩き割られ、優しい瞳を取り戻した恐竜たちが大人しく横たわる。


 形勢逆転どころか、圧倒的な大勝利だった。


「ひ、ひえぇぇぇ! 怪物め、覚えてやがれ!」


 頭目をはじめ、生き残った盗賊団の男たちは、命からがら地下の闇の奥へと逃げ帰っていった。


「やった……やったのもふーっ! 60頭の部隊が大勝利なのぱた!」


 パタが駆の頭の上で万歳をして大喜びする。


 ミカはハァハァと息を荒くしながらも、翡翠色の目で駆を見つめ、それからラーナやロッソたちに頭を下げた。


「すごい……60頭で完璧に倒せちゃった。あんたたちのその技術、そして恐竜たちへの愛……本物ね。疑って悪かったわ。この『黒チタン鉱』、ティラノの牙のために、好きなだけ持っていって!あと…私たちも連れてって…くれる?」


「もちろん! ありがとう、嬉しいミカちゃん!」


 ラーナが笑顔でミカの手を握る。


 こうして、地下鉱脈での大激戦の末に、駆たちは最強の鉱石を手に入れ、さらに「ミカとコンプ部隊」という心強い緑鉄の里と同盟を結ぶことに成功したのだった。


 しかしその頃、逃げ延びた盗賊団の男たちが、地下のさらに深い中継基地へと辿り着いたその場所で、冷酷な『美しき影』が、静かに扇子をパタパタと仰ぎながら彼らを見下ろしていた。


「――随分と、美しくない無様な負け方ねぇ、あんたたち」とドスの効いたオネエ言葉。


 暗闇のなかに浮かび上がる、紫色の夜会服のシルエットの何者かが、不敵な笑みを浮かべて動き出そうとしていた。


(第9章・完 / 第10章へ続く)

恐竜・古生物重機図鑑(第9章)

【デイノニクス×コンプソグナトゥス(チェーン・シンクロ混成部隊仕様)】

 分類: 異種多重過駆動獣脚類重機 / 鎖状多重同期フォーメーション

 重機用途: 広範囲の自律工作、複数ターゲットの同時かく乱、物量戦の完全解体 。

 カスタム特徴: 駆の骨格特性分析により、骨盤の結合線と超音波受容体の生物学的類似性を利用して即興構築された、前代未聞の生体群体軍隊 。バルト隊5人の操縦士が手綱を握る5頭のデイノニクス(アルファ)へ主信号を接続 。そのデイノニクスたちの脳波を『中継基地(アンテナ)』として、背後に従う9頭ずつのコンプソグナトゥスへ主従の脳波シグナルをドミノ倒しのようにリレーさせていく、生体電流の『鎖状多重同期(チェーン・シンクロ)』システムを採用している 。

 戦術配置: バルト隊長たちのデイノニクス5頭が放つ低周波の咆哮を中継し、手綱の負荷をゼロにしたまま45頭の子分コンプたちを数数繋ぎでミリ単位で完全制御 。さらにミカが手綱を握る1番優秀なコンプ1頭を起点に、9頭のコンプソグナトゥスが骨伝導インカムで完全同調して追従 。バルト隊の50頭とミカの10頭がガチッと一本の鎖に同期した、合計60頭からなる最小にして最強の混成大部隊である 。


挿絵(By みてみん)

【地下盗賊団鹵獲・ユタラプトル強襲型(リミッター解除・暴走形態)】

 分類: 地下盗賊団改造・中型白兵戦恐竜陸上重機 / 特攻狂暴化形態

 機体スペック&力学:全長約5メートル〜7メートルの、白亜紀に実在した最大級のドロマエオサウルス類。

 その最大の特徴である、後ろ脚の巨大な【チタン合金補強・鎌型爪(シックル・クロー)】は、時速60キロメートル以上の俊足から繰り出される超高速の跳躍蹴り(ジャンピング・スナップ)により、外殻チタン装甲すらも一撃で深く切り裂く凄まじい切断応力(応力集中)を誇る。


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