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『プロジェクト・ジュラ~恐竜は超古代文明の生体重機でした~』  作者: KYORyu


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第9章 1:群れなす爪!緑鉄の里(フェロ・ヴェルデ)

「ちっこくたって、私たちの絆は負けないんだから! いけ、みんなっ!」


 鉄鉄の居留区から南に位置する緑鉄の里(フェロ・ヴェルデ)の少女――ミカ(14歳)が、野生味あふれる衣服の袖をまくり、鋭い口笛を吹いた。


 彼女の細い指先に鎮座する1頭の司令塔(アルファ個体)が「チチチチッ!」と甲高い骨伝導音を響かせると、周囲を囲む9頭のコンプソグナトゥスが一斉に牙を剥いて跳躍した。


「うわわっ!? 小さいのに、動きが完璧にシンクロしてるのもふ!」


 駆(かける)の頭の上でパタが短い手をバタつかせる。


 コンプソグナトゥスの群体は、まるで一つの巨大な生き物のように錯綜しながら、ティラノサウルスの足元や、パキケ・ドリルの死角へと的確に滑り込んできた。


 チタンの牙を持つティラノといえど、この暗い地下洞窟で、足元を素早く動き回る数十センチの標的を捉えるのは不可能に近かった。


「くっ、すばしっこすぎるわ! 完全に翻弄されてる!」


 ラーナがスパナを構えるが、コンプの群れはその隙を突き、ドックの重機たちのバイオチューブ(配線)を小さな顎でガチガチと噛みちぎろうと迫る。


「ハッハッハ! 困っているようだな、ドックのガキども! そしてボサボサ頭の天才(駆)!」


 その絶体絶命の瞬間、暗闇の奥から激しい砂煙と共に、5騎のデイノニクス生体バイク部隊が風を引き裂いて乱入してきた。


 先頭で泥まみれのマントを派手に翻しているのは、金髪のオールバックをビシッと固めたバルト隊長だ。


 その後ろには、ギル、ハンス、カイル、トードの精鋭4人が完璧なフォーメーションで並び立っている。


「バルト! あんたたち、なんでここに!?」


 ラーナが驚愕の声を上げる。


「フッ、ドックの第3倉庫で子守りばかりしていては、元・隊長としての腕が鈍るからな! 」

「駆! あのチビちゃんたちの戦術、どこかで見覚えがあると思えば……要塞軍の『斥候群体戦術』の初期型と同じだ!」


 バルトが手綱をグッと引き絞る。


 彼のデイノニクスが低く咆哮すると、その威圧感にミカのコンプ部隊が一瞬だけ動きを止めた。


「そういうことか!」


 駆の天才スイッチがさらに鋭く駆動する。

 ミカの指の上のアルファ個体と、周囲の個体たちの骨格の連動線を透過スキャンし、バルトへと叫んだ。


「バルト! 彼女の戦術は完璧だけど、1頭の司令塔(アルファ)からの骨伝導音が、地下洞窟の反響のせいで右側にわずかに遅れて伝わっている! デイノニクス部隊を左旋回させて、音の伝達の『0.3秒の隙間』に割り込むんだ! そうすれば、群れの連携は内側から崩壊する!」


「ハッ、お安い御用だ! 野郎ども、フォーメーション・レフト! あのチビちゃんたちの音の絆を、俺たちの完璧なライディングで引き裂いてやれぇぇい!」


 バルトの号令とともに、5騎のデイノニクスが信じられないハイスピードで左へと散開した。


 時速80キロの超高速旋回。


 バルトたちは駆の指示通り、骨伝導音が乱反射する「0.3秒の死角」へと正確に滑り込み、ミカのコンプ部隊の連携を強引に分断していった。


「な、何これ!? 私の指示が、みんなに届かない……!?」


 ミカが驚愕に翡翠色の瞳を見開く。


 司令塔からの超音波をバルトたちのデイノニクスが放つ荒い息と足音の震動でジャミングされ、10頭のコンプたちは完全に方向性を見失い、クンクンと情けない悲鳴を上げてその場にうずくまった。


 勝負ありだった。


 バルトはデイノニクスの背の上で、これ以上ないほどビシッとマントを翻し、不敵に鼻を鳴らした。


「フッ、どうだお嬢ちゃん。これが男バルトの率いる――うおわぁっ!?」


 カッコつけすぎたバルトは、またしてもサドルから足を滑らせ、そのまま地下の冷たい泥水の中へ「ベチャッ」と派手に顔面からダイブした。


 オールバックが再び爆発したように広がる。


「た、隊長ーーーっ! 光速で台無しです!」


 カイルたちが慌てて引き抜く。


 パタが「様式美のドジっ子なのぱう……」と溜め息をつき、ミカさえも「な、何なのあの人……」と呆気に取られていた。


「――勝手に、みんなの里の鉱脈を掘り進めてしまっていて、本当に、本当にごめんなさい……っ!!」


 ラーナが亡き父ガロンのスパナを地面へと置き、振動時 駆(かける)と共に、頭を真っ正面から深く下げて謝る、目の前に立つミカへと誠実な謝罪の言葉を告げた。


「頭を上げてよ、2人とも。あたしたちの『緑鉄の里(りょくてつのさと)』の所有地の鉱脈だって知らなかったんでしょう?」


 コンプソグナトゥスのアルファの手綱を握ったミカが、大きなおめめを丸くして戸惑いの声を上げる。


「うん……。でも、どうしても、君たちの資源を盗みにきたわけじゃないんだ」


 駆がその【エメラルドグリーンの瞳を真っ直ぐに輝かせ】、自らの『骨の目』で見抜いた絶対の数字(力学)の理由を熱く説明した。


「僕たちのティラノサウルスの、あの最悪なキルガ軍のチタン装甲を噛み砕くための【『牙と爪の強化素材』】として、この地層の奥に眠る黒チタン鉱が、どうしても、どうしても必要だったんだ……っ!!」


「そう……。キルガ軍に負けないために……」


 駆とラーナの泥まみれの手、そして後ろに佇む地上用(黒チタン装甲仕様)のティラノサウルスの不骨なフレームを見つめ、ミカはフッとその綺麗な瞳をこれ以上ないほど優しく細めた。


「わかったわ。あんたたちの、恐竜をただの道具じゃなく、家族みたいに本当に大切にしている気持ちは、今の一言で100%完璧に伝わってきたしね! だったら、里の親方たちへの話はあたしに任せて!」


 ミカがそう言って不敵に笑うなり、その小さな胸元に手を当てて、自らの生体パルス(手綱)を周囲の空間へと最大過駆動で放った!


 ピタッッ!!!!!


 その瞬間、それまでミカの後ろで無邪気にハネ回っていた10頭のコンプソグナトゥスのすべての質量が、まるで一本の電子回路で繋がれたかのように、寸分の狂いもなく完全にまったく同じ動きへと大同期を遂げた。


「――さあ往くよ、みんな! あたしたちの最高の故郷へ案内するわよッ!!」


 ミカの凛々しい合図の声をキッカケに、10頭のコンプ部隊がハイスピードで草原の地平線へと向かって大移動を開始し、ハンス、ギル、カイル、トードたちの仲間たちも、その不滅のステップを踏み鳴らしながら、彼女たちの後ろをどっしりと進み始めた。

恐竜・古生物重機図鑑(第9章)

挿絵(By みてみん)

【コンプソグナトゥス(自律型群体・工作重機仕様)】

 分類: 獣脚類(ジュラ紀後期)

 重機用途: 狭小空間の超精密測量、地下配管の敷設・メンテナンス、群体かく乱。

 カスタム特徴: 「1頭の司令塔(アルファ個体)」に超高精度の生体インカムを装着。操縦士の少女がその1頭へ指令を出すだけで、アルファが放つ特殊な骨伝導周波波により、周囲の9頭が寸分の狂いもなく「完全自律同調」して動く。

 1頭の力は小さいが、統率された群体(集団)となることで、大型重機の死角(隙間)に侵入して配線を切断するなどの恐るべき局地戦能力を発揮する。


  後世の地球で発見される化石(退化型)とは異なり、超古代文明のドックにて「人間が跨って爆走する中型快速バイク」としてフレーム(骨格・筋肉組織)を極限まで最適化された、【全長2.5メートル級】の純正重機仕様



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