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『プロジェクト・ジュラ~恐竜は超古代文明の生体重機でした~』  作者: KYORyu


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第6章 2:バルト部隊、極大緊急の戦略的ダイブ【寝床は大事】

「ちょっとバルト! 居候を許可したわけじゃないのに、勝手にドックの第3倉庫を子供部屋に改造してんじゃないわよ!」


大移動から一夜明けた重機ドック。


ラーナの容赦ない怒声が、いつもとは違う賑やかな熱気に包まれた作業場に響き渡っていた。


「仕方がねえだろ! 6歳のレオンだけじゃねえ、ギルやハンスの嫁さんたちも夜通しの強行軍でクタクタなんだ。まずは安全な寝床を確保するのが、元・隊長としての最優先任務だ!」


金髪のオールバックをすっかり崩したバルトが、大荷物を担ぎながら必死に言い返す。


「バルト、あんたの言い分も分かるけど、そこはトリケラトプスの予備の油圧シリンダーを保管する場所なの! 泥とオイルまみれの場所に、妊婦のソフィアさんを寝かせる気!?」


「あ……それは、その、だな……」


ラーナの真っ当な正論に、バルトがカッコつかずにウッと口篭る。


「はいはい、そこまで。ラーナちゃんも、うちのバカ亭主をあんまり虐めないであげてね」


通路の奥から、両手に山盛りの洗濯物を抱えたカルラが、ドッシリとした足取りで歩いてきた。


その圧倒的な姐御肌のオーラに、ラーナも思わず一歩引く。


「バルト、あんたは能書き垂れてないで、ハンスと一緒に第2倉庫の床板を張り替えに行きなさい。あっちの方が風通しも良くて、ソフィアさんの身体にも優しいわ。カイルとトードは私に付いてきて。ドックの厨房を借りて、みんなのスープを作るからね!」


「お、おう……! 了解した、カルラ!」


元・隊長のバルトが、カルラの一言でまるで新兵のように背筋を伸ばし、慌てて工具を持って走り出していった。


「パパ、がんばれー!」


6歳のレオンが、大人しくなったポストスクスの尻尾にぶら下がりながら無邪気に声を出している。


「レオン、危ないのもふ! 王者の尻尾はブランコじゃないのぱた!」


パタがレオンの頭の上で短い羽をパタパタさせながら、お世話係のように小さな手足でレオンを引っ張っていた。


その頃、駆(かける)はドックの隅で、現在妊娠中であるソフィアの体調を気遣っていた。


「ソフィアさん、体調はどうですか? 昨夜の長距離移動で、デイノニクスの振動が響いていないといいのですが……」


「大丈夫です、駆さん。バルト隊長が付きっきりで手綱を調整してくださったおかげで、本当にお腹の張りもありません」


大きなお腹を優しくさすりながら、ソフィアが心穏やかな笑みを浮かべる。ギルもその横で、妻の体調を心配そうに見つめながら、駆に深く頭を下げた。


「駆さん、それとラーナさん……本当に、急に押し掛けてすみません。俺たちだけなら、砂漠の野宿でも耐えられました。ですが、もうすぐ子供が生まれるソフィアだけは、どうしても軍の過酷な環境から守りたくて、隊長に泣きついたんです。隊長は、それを聞いた一秒後には『よし、全員の家族を連れて脱走するぞ!』って、笑って言ってくれたんですよ」


ギルの言葉に、駆は小さく頷いた。


バルトは単にノリが軽いわけではない。

部下の「家族を守りたい」という一番切実な願いのために、自分の地位も名誉も、命すらも一瞬で賭けられる男なのだ。


抜けているけれど、その本質は本物のリーダーだった。


「気にする必要はないよ、ギルくん。ラーナだって口では怒っているけれど、ソフィアさんのために一番綺麗な毛布を奥から引っ張り出してきたくらいだ」


「ちょっと駆! 余計なこと言わないでよ!」


部屋割りから戻ってきたラーナが、顔を真っ赤にしてスパナを振り回す。


けれど、その目はソフィアのお腹を優しく見つめていた。


「……よし。それなら、もうすぐ生まれてくる新しい命のために、このドックの生体システム(環境制御)を完全に出産仕様にカスタムしよう」


駆の目がギラリと光り、天才スイッチが静かに駆動した。


「ソフィアさんの寝床の周囲に、プテラノドンの翼の薄膜フレームを使った『防音バリア』を張るんだ。現場の駆動音を完全にシャットアウトする。さらに、ポストスクスの排熱シリンダーの熱をバイオパイプで回して、夜間の冷え込みを防ぐ床暖房システムを作る」


「えっ……! 恐竜重機のパーツを、人間の生活空間の快適化に流用するっていうの!?」


ラーナが驚愕の声を上げる。


「骨格の応力と生体熱力学の計算を応用すれば簡単さ。彼らは破壊のための兵器じゃない。命を育み、守るための優しい重機なんだから」


駆の言葉に、ドックの全員が、そして部屋の片隅で眠っていた恐竜たちまでもが、ふぅ、と温かい鼻息を漏らした気がした。


来るべき「新しい命の誕生」へ向けて、ドックの全員が一つになり、出産への準備が着々と進められていくのだった。


恐竜・古生物重機図鑑(第6章)

【プテラノドン(環境制御・防音隔壁カスタム)】

 分類: 翼竜類(白亜紀後期)重機用途: 妊婦の寝床の防音、ドック内の一時的なプライベート空間の確保。

カスタム特徴: 駆の指示により、プテラノドンの翼の広大な薄膜(皮膚フレーム)の微細な振動吸収特性を応用。寝室の周囲にこのフレームを衝立のように配置することで、ドック内の金属音や恐竜の咆哮などの高周波を完璧に遮断する、超古代の生体防音システム。

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