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『プロジェクト・ジュラ~恐竜は超古代文明の生体重機でした~』  作者: KYORyu


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第6章 1:バルト部隊、極大緊急の戦略的ダイブ

アイゼン将軍を退け、新しくポストスクスがドックの家族として加わってから数日。


 鉄鉄の居留区の朝は、重機たちののどかな駆動音と共に始まった。


「ふぅ……平和なのはいいことなのもふ。昨日の激戦が嘘みたいにのんびりしてるのぱた」


 パタが駆(かける)の頭の上で、朝獲れの木の実をサクサクとかじっている。


「そうだね。ポストスクスの前足のボルトをラーナが外してくれたおかげで、あの子も随分と歩きやすそうにしてる。骨格の歪みも消えて一安心だ」


 駆がスケッチブックを開きながら微笑む。


 その時、ドックの入り口から、バタバタと複数の足音が近づいてきた。


 それも、デイノニクスの鋭い足音だけではない。

 ゴトゴトと数台の荷車の音まで混ざっている。


「ちょっと! な、何事よこれぇぇぇ!?」


 ドックの奥から飛び出してきたラーナが、驚愕のあまり持っていたスパナを床に落とした。


 現れたのは、先日カッコつけて夕日の向こうへ去っていったはずのバルト隊長だった。


 自慢の金髪オールバックを無理やり固め直しているが、その背後には、信じられないほどの大荷物を背負った部下のデイノニクス部隊――ギル、ハンス、カイル、トードの4人が並んでいた。


 それだけではない。


 彼らの横には、女性や子供、果ては荷車の上が生活用品で溢れかえっている、完全なる「引っ越し大名行列」が形成されていたのだ。


「フッ、また会ったなドックのガキども! そしてボサボサ頭の天才(駆)!」


 バルトがこれ以上ないほどビシッとマントを翻し、親指を立てた。


「言ったはずだ、自分の信じる道は自分で決めると! というわけで……今日からここの居候をさせてもらう! 歓迎の宴はいらんぞ!」


「――ッ!?」


「誰がっ! 歓迎するかぁぁぁっ!! 何よその大所帯は!?」

 ラーナのツッコミが炸裂する。


「あら、あんたがラーナちゃん? うちの人がいつもドジばっかり踏んで迷惑かけてるわねぇ」


 バルトの後ろからドッシリと歩み出てきたのは、豊かな赤髪を束ね、腰に手を当てて笑う豊満な女性――バルトの妻、カルラだった。


 軍の男たちを片手で黙らせそうな圧倒的な姐御肌のオーラを放っている。


 その足元からは、バルトそっくりの金髪をした6歳の男の子、レオンがひょっこりと顔を出した。


「パパ、ここがパパの言ってた『すごい骨オタクのいるドック』?」


「そうだレオン。おいカルラ、一応これでも俺は隊長なんだから、子供の前でドジとか言うな、カッコつかないだろ!」


「はいはい、泥んこダイブ隊長さん。おだまりなさい」

 カルラが一言でバルトを黙らせる。


「あの、ラーナさん、すいません……いきなり押しかけて」


 申し訳なさそうに頭を下げたのは、隊員のギルだった。


 彼の隣には、大きなお腹を愛おしそうにさする妻のソフィアが寄り添っている。

 彼女は現在、新しい命を宿した妊婦さんだった。


 さらに大柄なハンスも、妻のマルタと共に大量の救援物資の詰まった麻袋を抱え、独身のカイルとトードが荷車を押している。


「バルト……あんたたち、軍を裏切って、家族ごと逃げ出してきたのか?」


 駆が真剣な表情でバルトを見つめた。


 バルトは少し真面目な顔になり、グッと顎を引いた。


「……ああ。俺たちはもう、恐竜の心を殺して使い潰すあの軍には戻らん。だが、残された家族が人質にされるのは目に見えていたからな。アイゼンを撃破したその足で、本隊が気づく前に全員の家族を回収して、夜通し走ってここまで逃げてきたんだ」


「夜通しって……妊婦のソフィアさんもいるのに、デイノニクスでそんな強行軍を!?」

 ラーナが目を見開く。


「心配いりません、ラーナさん」

 妊婦のソフィアが優しく微笑んだ。


「バルト隊長が、道中のガタガタ道を走る時は、ソフィアの乗るデイノニクスを自分の手綱で直接並走させて、1ミリも振動がいかないようにずっと庇ってくれていたんです。自分のデイノニクスの脚がオーバーヒートしそうになっても、私たちのことを一番に考えてくれて……」


「そうなんだよ。バルト隊長、普段はあんな風に泥に突っ込むドジだけどさ」


 独身のカイルが笑いながらバルトの肩を叩く。


「俺たちが軍で上層部に理不尽に殴られそうになった時も、いつもこの大袈裟な肩パッドで遮って、全部代わりに怒られてくれるんだ。だから俺たち、この隊長になら、どこまでも付いていくって決めてるんだよ」


 バルトはやたらと面倒見が良い男だった。


 自分の手柄はすべて部下に譲り、部下のミスはすべて自分が泥を被って受ける。

 抜けていて、カッコつけで、ドジばかり踏むけれど、彼の背中は誰よりも広くて温かい。

 だからこそ、この精鋭部隊の4人は、軍を裏切るという命懸けの選択にも、一人の離脱者も出さずにバルトと共に地獄の果てまで歩むことを決めたのだ。


「へぇ……あんた、意外と良い隊長だったのね」


 ラーナが少し見直したようにバルトを見る。


 バルトは顔を真っ赤にしながら、大袈裟にマントで顔を隠した。


「フ、フン! 喧しいわ! 隊長として当然の職務だ! それよりも、我が愛車たちの三半規管と腰椎のケアを最優先で頼む!」


「喜んで」

 ラーナが父親ガロンの形見のスパナをクルッと回す。


 母軍を捨て、家族を連れて移住してきたバルト部隊。

 彼らを迎え入れたドックは、さらに賑やかで、そして絶対に負けられない「守るべき家族」のための砦へと生まれ変わっていくのだった。


恐竜・古生物重機図鑑(第6章)

【デイノニクス(家族移住・長距離搬送カスタム)】

分類: 獣脚類(白亜紀前期)

重機用途: 長距離の緊急避難、物資の夜間搬送、妊婦・子供の安全輸送。

カスタム特徴: 本来は高速斥候用だが、バルトの指示により、妊婦ソフィアの騎乗個体には、背骨のフレームに急造の生体ショックアブソーバー(衝撃吸収材)を多重装着。バルト自身の個体と神経インターフェースをデュアル同調させることで、走行時の微震動すら完璧に相殺し、極限の安全性を確保した「命を守るための緊急輸送仕様」。



バルト部隊・新メンバー紹介

【隊長】バルト:面倒見の塊。金髪オールバック(乱れがち)。

家族:妻・カルラ(姐御肌の最強ママ)、息子・レオン(6歳)。

【隊員】ギル(真面目な常識人ツッコミ役)

家族:妻・ソフィア(現在妊娠中の妊婦さん)。

【隊員】ハンス(大柄で力持ちのメカニック担当)

家族:妻・マルタ(カルラと仲良しのしっかり者)。

【隊員】カイル(お調子者の若手エース)

【隊員】トード(無口でシャイな狙撃手)


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