98話
夕方。
ラゾーナ川崎を出る。
「……疲れた」
「歩いたからね」
「人も多かったし」
駅に向かう人の流れ。
ぎゅっ
「……重い」
「……つかれた」
完全に寄りかかってくる。
「さっきよりやばいね」
楓が笑う。
「電池切れだな」
「……東海林さん」
「ん?」
「……歩けるけど」
「けど?」
「……このままがいい」
「はいはい」
ほぼ体預けてくる。
「僕も結構きてる」
秋山も少し寄る。
「寄るな」
「冷たいなぁ」
時計台前
人の流れがさらに増える。
「じゃあ私はここで」
楓が立ち止まる。
「もう帰るのか」
「うん、近いし」
「今日はありがと」
「こっちこそ」
「楽しかったよ」
「……うん」
響が小さく頷く。
「じゃあね」
楓が軽く手を振る。
少しだけ間。
「……楓さん」
「ん?」
「……また来ていい」
「いつでもどうぞ」
「……うん」
「ちゃんと見ててね」
楓が東海林に小さく言う。
「……分かってる」
「じゃ、また」
そのまま人混みに消えていく。
「……帰ったな」
「だね」
一瞬、静かになる。
そして—ぎゅうっ
「……おい」
「……疲れた」
「さっきも聞いた」
でも、さっきよりもさらに力が強い。
「……東海林さん」
「ん?」
「……帰ろ」
「帰るけど」
「……早く」
「急ぐな」
「……離れたくない」
「今も離れてない」
「……もっと」
「これ以上は無理だ」
「ほんとにさ」
秋山が苦笑する。
「完全に限界だね」
「だな」
電車に乗る。
座った瞬間——すとん
「乗るな」
「……ここ」
そのまま、完全に体を預けてくる。
「……寝そうだな」
「もう寝てるかも」
秋山が言う。
「……すー……」
「早いな」
ぎゅっ
寝てるのに力は緩まない。
「……東海林君」
秋山が小さく言う。
「ん?」
「今日さ」
「ん?」
「ちょっと良かったね」
「何が」
「外でも一緒にいられたの」
「……」
「前より不安少なそうだった」
「……かもな」
腕の中で寝てる響。
少しだけ表情が落ち着いてる。
「……でも」
秋山が続ける。
「反動きてるね」
「今まさにだな」
ぎゅっ
さらに強くなる。
「……帰ったら」
「ん?」
「また甘えるね」
「宣言するな」
電車が揺れる。
静かな帰り道。
「……東海林さん……」
寝言。
「ん?」
「……いる……?」
「いるって」
「……うん……」
そのまま、膝の上で眠り続ける。
「……帰ったら大変そうだね」
秋山が笑う。
「もう既に大変だ」
でも——その重さも離さない力も少しだけ心地よくなってきていた。
そのまま三人で、ゆっくりと家へ帰っていった。
もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。




