97話
次の日。
朝。
「……起きれない」
「それはそう」
「四人はやりすぎだよね」
ぐちゃぐちゃの布団。
絡まったまま。
「……重い」
「……ここ」
響が上。
いつも通り。
「僕、足しびれてる」
「知らん」
「おはよー」
楓だけ普通に起きてる。
「元気だな」
「寝たし」
「こっちは寝れてない」
なんとか起きて、
準備して——
「どこ行く?」
楓が言う。
「外出るのか」
「せっかく集まってるし」
「……行く」
響が即答。
「お前はどこでも行くだろ」
「……東海林さんとなら」
「じゃあ決まり」
「強引だな」
電車で移動。
川崎方面。
「……人多い」
「日曜だしな」
駅に着く。
「ここ」
目の前に広がるショッピングモール。
「ラゾーナ川崎」
「でかいな」
「でしょ」
中に入ると、一気に人の流れ。
ぎゅっ
「……離れない」
「迷子になるなよ」
「……ならない」
腕に絡みつく響。
反対側。
ぎゅ
「僕も」
「お前もか」
「ちょっと」
楓が笑う。
「完全に捕まってるじゃん」
「逃げられないな」
「……東海林さん」
「ん?」
「……見ないで」
「何を」
「……周り」
「無理だろ」
「……やだ」
ぎゅっ
さらに強く。
「人多いとやっぱダメか」
秋山が言う。
「だな」
「じゃあさ」
楓が前に出る。
「とりあえず上行こ」
エスカレーター。
「……高い」
「普通だ」
「……怖い」
「嘘つけ」
ぎゅっ
ほぼしがみつく。
「落ちないって」
「……東海林さんがいるから平気」
「それ前提かよ」
上のフロア。
雑貨屋や服屋が並ぶ。
「見て回ろうよ」
楓が言う。
「いいけど」
「……一緒」
「離れないのな」
「……うん」
店の中。
「これ似合いそう」
楓が服を持つ。
「誰にだ」
「響」
「……やだ」
即答。
「なんで」
「……目立つ」
「もう十分目立ってるよ」
秋山が言う。
「確かに」
「……東海林さん」
「ん?」
「……これ」
小さめのアクセサリーを持つ。
「似合う?」
「……いいんじゃないか」
「……ほんと?」
「ほんと」
少しだけ嬉しそう。
「買うの?」
楓が聞く。
「……迷う」
「買えば?」
「……」
ぎゅっ
「……一緒に選んで」
「分かった」
そのまま少しだけ落ち着いた時間。
フードコート。
「……人多い」
「昼だからな」
席を確保して座る。
すとん
「乗るな」
「……ここ」
「もう諦めてるでしょ」
楓が笑う。
「まぁな」
「僕もいい?」
「来るな」
でも——ぎゅ
「……来たな」
「ほんとさ」
楓が呆れる。
「外でも変わらないね」
「変わらないな」
「……東海林さん」
「ん?」
「……楽しい」
「それは良かったな」
「……一緒だから」
「……」
「……でも」
少しだけ声が落ちる。
「?」
「……人多いの、ちょっとやだ」
「……分かる」
秋山が言う。
「でも大丈夫でしょ」
「……うん」
ぎゅっ
「……ここなら」
「ん?」
「……離れない」
「はいはい」
楓がそれを見て少しだけ笑う。
「なんかさ」
「?」
「外でもこれなら」
「?」
「もう隠す気ないよね」
「……ないな」
「……」
少しだけ沈黙。
でも、誰も否定しない。
そのまま、食べて歩いて笑ってくっついたまま。
人混みの中でも、
四人の距離は変わらず——むしろ少しだけ、外でも一緒にいられる安心で、
響の表情は、ほんの少しだけ柔らいでいた。
もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。




