95話
休日。
昼前。
「……静かだな」
「珍しいね」
「……うん」
リビング。
三人でソファにいる。
ぎゅっ
「……いつも通りだな」
「……ここ」
響が膝の上。
今日は少し落ち着いてるけど離れる気はない。
「昨日よりはマシだね」
秋山が言う。
「……たぶんな」
「……うん」
その時——ピンポーン
「ん?」
「……誰」
「知らん」
「はーい」
立ち上がろうとするが——ぎゅっ
「……離れない」
「一瞬だけだ」
「……やだ」
「玄関だぞ」
なんとか引き剥がして玄関へ。
ガチャ
「やっほ」
「……楓」
「来たよ」
「急だな」
「暇だった」
理由が軽い。
「上がっていい?」
「もう上がってるだろ」
「細かいことはいいの」
そのままズカズカ入ってくる。
「お邪魔しまーす」
「……来た」
リビングから響の声。
「おー、いるいる」
楓が顔を出す。
「相変わらずだね」
すとん
「乗るな」
戻った瞬間、また膝の上。
「……離れない」
「はいはい」
「ほんとにそのままなんだ」
楓が笑う。
「変わらないな」
「むしろ悪化してるよ」
「否定できない」
「秋山もいるし」
「いるよ」
「ほんと仲良いね」
「……うん」
楓がソファの横に座る。
じーっと見る。
「……なに」
「いやさ」
「?」
「ちょっと羨ましいなって」
「何が」
「それ」
「やるなよ」
「やらないけど」
「……楓さん」
響がぽつり。
「ん?」
「……いい」
「何が?」
「……来ても」
「許可制?」
「違う」
「……でも」
少しだけ間。
「……東海林さんの近く」
「当たり前だろ」
「……うん」
ぎゅっ
少しだけ強くなる。
「……取らない」
楓が軽く言う。
「?」
「分かってるから」
「……」
「秋山と同じ枠でしょ?」
「……」
「違う?」
「……同じ」
小さく頷く。
「よかった」
楓が笑う。
「じゃあ安心していじれる」
「やめろ」
「ねえ」
楓が少し身を乗り出す。
「東海林」
「ん?」
「ちょっと貸して」
「は?」
ぎゅっ
「……だめ」
即座に反応。
「……私の」
「だから違うって」
「ちょっとだけだって」
楓が笑う。
「……やだ」
「ほら」
楓が手を伸ばす。
その瞬間——ぎゅうっ
「……強い」
「……だめ」
「ほんと好きだね」
楓が呆れ半分で言う。
「……うん」
即答。
「でもさ」
楓が少しだけ真面目に言う。
「ちゃんと分かってるんでしょ?」
「……」
「全部独り占めは無理って」
「……うん」
小さく頷く。
「秋山もいるし」
「……うん」
「私も来るし」
「……うん」
「それでもいいの?」
「……」
少しだけ考えて、
「……東海林さんがいいなら」
「俺次第かよ」
「……いいよ」
短く答える。
「じゃあ問題なし」
楓が笑う。
「……でも」
「?」
「……近くにいる」
「いるって」
ぎゅっ
また密着。
「……ほんと変わらないね」
秋山が言う。
「変わらないな」
「むしろ」
楓がぽつり。
「前よりバランス取れてるかも」
「そうか?」
「うん」
「独占はしたいけど」
「……」
「ちゃんと分けてる感じ」
「分けるって言い方やめろ」
「じゃあ共有?」
「もっとやめろ」
「……でも」
響が小さく言う。
「……東海林さんは一人」
「そうだな」
「……うん」
そのまま、四人でなんとなく話しながらゆるい時間が流れる。
ぎゅっ
相変わらず離れないまま。
でも——少しだけ周りを受け入れた距離で。
もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。




