91話
朝。
目が覚めた瞬間——
「……重い」
昨日と同じ感想が出る。
視線を下げるとやっぱりいる。
響。
しかも——完全に覆いかぶさったまま。
ぎゅっ
「……そのまま寝たのか」
「……ん……」
少しだけ動く。
でも離れない。
「……起きてるならどけ」
「……やだ」
「昨日も聞いた」
「……覚えてる」
「なら話が早い」
「……やだ」
「変わらないな」
横を見ると、
「おはよう」
秋山はもう起きてる。
「おはよう」
「昨日すごかったね」
「どの部分だ」
「全部」
「ざっくりしすぎだろ」
「……」
その会話を聞いてぴくっと反応。
「……東海林さん」
「ん?」
「……昨日」
「覚えてるのか」
「……うん」
一瞬、少しだけ顔を上げる。
でも——すぐまた埋める。
「……」
「……なんだその反応」
「……」
小さく息を吐いて、
「……ちょっとだけ」
「?」
「……やりすぎた」
「自覚あったか」
「……でも」
「ん?」
「……後悔はしてない」
「そうかよ」
ぎゅっ
「……むしろ」
「?」
「……足りない」
「増やすな」
「いや待って」
秋山が笑う。
「朝からそれ?」
「朝だからだろ」
「どういう理屈?」
「……東海林さん」
「ん?」
「……嫌だった?」
「……」
少しだけ考える。
「……嫌じゃない」
「……ほんと?」
「ほんと」
「……」
そのまま少しだけ顔を上げる。
目が合う。
「……じゃあ」
「何だ」
「……もう一回」
「朝だぞ」
「……軽く」
「……」
「……いいけど」
「……うん」
ちゅ
短く。朝の静かな中で。
「……」
「……満足か」
「……うん」
「僕もいい?」
「やめろ」
「なんでさ」
「朝だぞ」
「さっきしたじゃん」
「それは流れだ」
「今も流れでしょ」
「……いいよ」
「お前が言うな」
ちゅ
秋山も普通にしてくる。
「……慣れてきたな」
「いいことだね」
「そうか?」
「……東海林さん」
「ん?」
「……やっぱり」
「何だ」
「……離れない」
「はいはい」
ぎゅっ
また覆いかぶさる。
さっきより自然に。
「……昨日より強くないか」
「……気のせい」
「嘘だな」
「……でも」
「?」
「……ちゃんといる」
「いるって」
「……うん」
少しだけ安心した顔。
「……東海林君」
秋山が小さく言う。
「ん?」
「これ、もう戻れないね」
「……」
腕の中の重さ。
離さない手。
「……まぁな」
「……いいの?」
「……」
少しだけ考えて、
「……今はな」
「……うん」
秋山も納得したように頷く。
「……東海林さん」
「ん?」
「……好き」
「知ってる」
朝。
昨日のことを思い出しても、少し照れるどころか——
むしろ距離はそのまま。
「……起きるか」
「……やだ」
「学校あるだろ」
「……休む」
「勝手に決めるな」
でも結局、三人ともすぐには動かず。
そのまましばらく——くっついたままの朝が続いた。
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