82話
朝ごはんを食べ終えて、しばらくしてから。
「初詣でも行く?」
親戚の誰かが言った。
「ああ、いいね」
「……行く」
「お前は即答だな」
「……東海林さんと一緒」
「はいはい」
結局、みんなで行くことになった。
外に出ると——
「……寒い」
「だから冬だって」
「……くっつく」
「外だぞ」
でも——ぎゅっ
腕に絡みついてくる。
「……離れない」
「もういいや」
神社に向かう道。
人が多い。
「うわ、人すごいね」
秋山が言う。
「正月だしな」
「……迷う」
「迷わないだろ」
「……離れたら迷う」
「離れなければいいだけだろ」
「……うん」
ぎゅっ
さらに強くなる。
「お兄ちゃん!」
後ろから声。
「おっと」
さっきの親戚の子も来てる。
「人多いね!」
「だな」
「はぐれそう!」
「はぐれるなよ」
「……」
その様子を見て、ぎゅっ
「……強い」
「……取られる」
「取られないって」
「……でも」
「でもじゃない」
神社到着。
参拝の列に並ぶ。
「長いな」
「正月だからね」
「……離れない」
「はいはい」
並んでる間も——ずっとくっついてる。
というか、ほぼ寄りかかってる。
「……重い」
「……支えて」
「完全に乗ってないかこれ」
「ほんとにさ」
楓が横で笑う。
「外でも変わらないね」
「変わらないな」
「むしろ悪化してない?」
「してる」
「お兄ちゃんってさ」
親戚の子が聞いてくる。
「ん?」
「モテるね」
「違うと思うぞ」
「でもこれ普通じゃないよ?」
「知ってる」
「……東海林さん」
「ん?」
「……あっち見て」
「どこだ」
「……こっち」
顔を引き寄せられる。
「おい」
「……キスしていい?」
「ここで言うな」
「……だめ?」
「だめ」
「……」
少し不満そうにする。
「いや待って」
楓が笑いながら言う。
「今しようとした?」
「してない」
「絶対したでしょ」
「してない」
ようやく順番が来る。
「じゃあ参拝するか」
「……うん」
手を合わせる。
「……何お願いした?」
秋山が聞く。
「特に何も」
「えー」
「……東海林さん」
「ん?」
「……ずっと一緒」
「それお願いしたのか」
「……うん」
「まぁ叶ってるだろ今」
「……これからも」
「欲張りだな」
「僕も似たようなものだよ」
秋山が言う。
「お前もか」
「当然でしょ」
「私はー」
親戚の子が言う。
「お年玉いっぱい!」
「現実的だな」
「大事だよ!」
「まぁな」
参拝を終えて、境内を少し歩く。
屋台も出てる。
「……いい匂い」
「食うか」
「……食べる」
たこ焼きを買って、みんなで分ける。
「……あーん」
「自分で食え」
「……やだ」
「やだじゃない」
でも結局一個食べさせる。
「うわ、やってる」
楓が笑う。
「慣れた」
「慣れるなそんなの」
「お兄ちゃん優しいね」
「甘やかしてるだけだ」
「それ優しいって言うんだよ」
「そうか?」
そのまま、人混みの中を歩く。
ぎゅっ
「……離れない」
「分かってる」
「でもさ」
秋山がぽつり。
「こういうのも悪くないね」
「まぁな」
「……うん」
冬の空気は冷たいけど、隣はずっと暖かい。
「……東海林さん」
「ん?」
「……来年も来る?」
「どうだろうな」
「……来たい」
「まぁ暇ならな」
「……うん」
結局、帰り道でもずっとくっついたまま人が多くても、場所が変わっても、この距離だけは変わらなかった。
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