81話
朝。
「……重い」
目が覚めた瞬間、それだった。
「……またか」
視線を下げると、いつも通り——響が胸に顔を埋めて、がっつり乗ってる。
ぎゅっ
「……離れる気ないな」
「……ん……」
寝ぼけた声でも腕の力はしっかりしてる。
「東海林君、起きてる?」
「起きてる」
左を見ると、秋山。
手はまだ繋がれてる。
「よく寝れた?」
「物理的に寝返り打てなかった」
「それは大変だね」
他人事だな。
「……」
右側。
楓も普通に寝てる。
「……カオスだな」
「今更だね」
「……東海林さん」
「起きてるならどけ」
「……やだ」
「即答やめろ」
「……まだ眠い」
「それ昨日も聞いた」
ぎゅっ
さらに密着。
「……苦しい」
「……あったかい」
「そうかよ」
そんなやり取りをしていると——コンコン
「ん?」
ドアがノックされる。
「入るよー」
ガラッ
「おー、いるいる」
入ってきたのは、小学生くらいの子。
「あ、ほんとにいた」
「……誰だ?」
「久しぶりー!」
ぱたぱた近づいてくる。
「お兄ちゃん!」
「……お兄ちゃん?」
いきなり抱きつかれる。
「久しぶりだね!」
「……ああ」
なんとなく思い出す。
昔よく来てた子だ。
「大きくなったな」
「でしょ!」
「……」
その瞬間。
ぎゅっ
「……?」
「……東海林さん」
「どうした」
「……誰」
「親戚の子」
「……」
明らかに警戒してる。
「……え?」
その子も気づく。
「なんで上に乗ってるの?」
「……」
またこの質問か。
「……好きだから」
響が即答。
「え?」
「……くっつきたい」
「……そうなんだ」
ちょっと困惑してる。
「お兄ちゃん、これ普通なの?」
「普通じゃない」
「だよね!?」
「でもまぁ、こういうやつだ」
「そういう説明!?」
「……お兄ちゃん」
「ん?」
「この人誰?」
「同級生」
「え、同級生なのに乗ってるの?」
「気にするな」
「気になるよ!?」
「……」
響がじっと見てる。
「……」
その子も見返す。変な沈黙。
「……」
ぎゅっ
さらに強く抱きつく。
「……離れない」
「対抗するな」
「……取られる」
「取られない」
「……え、取るの?」
「取らないよ」
「だよね!?」
「お兄ちゃん大変そうだね」
「まぁな」
「でもなんか面白い」
「楽しむな」
「……名前は?」
響がぽつりと聞く。
「え?」
「……名前」
「あ、えっと——」
名前を答える。
「……」
少し考えてから、
「……よろしく」
「う、うん」
ちょっと戸惑いながらも返す。
「……東海林さん」
「ん?」
「……起きる?」
「起きたいけどな」
「……まだ」
「まだかよ」
「朝ごはんできてるよー!」
廊下から声。
「行くか」
「……一緒」
「当たり前だろ」
「お兄ちゃんってさ」
その子が言う。
「人気者だね」
「違うと思うぞ」
「でもみんなくっついてるし」
「否定できないな」
そのまま、響を引き剥がすのに少し時間がかかって、なんとか全員で部屋を出る。
「……離れない」
「分かってるって」
手を繋がれながら廊下を歩く。
「ほんとにずっと一緒なんだね」
「まぁな」
「いいなー」
「真似するなよ」
「しないよ」
朝から騒がしい。
でも——この家に来ても、やっぱり変わらない距離だった。
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