80話
夜、広間。
こたつを囲んで、親戚が何人も集まってる。
テレビはなんとなくついてるけど、誰もちゃんと見てない。
「……あったかい」
「こたつだからな」
そう言いながら——
「……よいしょ」
「乗るな」
当たり前みたいに、膝の上。
ぎゅっ
「……ここでもやるのか」
「……いつも通り」
「場所を選べ」
「いや選んでないよね完全に」
楓が呆れながら横に座る。
「もう諦めてる」
「慣れるもんなのそれ」
「慣れた」
「……いいな」
「ん?」
楓がじっと見てくる。
「それ、あったかそう」
「こたつ入れ」
「そうじゃなくて」
「……ちょっと」
「何だ」
「借りる」
「は?」
次の瞬間——すとん
「増えた」
楓が横からくっついてきた。
「……なんでだよ」
「ノリ」
「ノリで人にくっつくな」
「……あったかい」
「だろうな」
「ちょっと分かったわ」
「何が」
「この子が離れない理由」
「納得するな」
「……だめ」
響が小さく言う。
「ん?」
「……そこ、私の」
「いや共有じゃないの?」
「……違う」
ぎゅっ
さらに強く抱きつく。
「……苦しいって」
「うわ、取り合いだ」
秋山が面白そうに見てる。
「他人事だな」
「僕は横がいいから」
「そうかよ」
その時。
「ねぇ」
向かいに座ってた中学生くらいの子が話しかけてくる。
「ん?」
「なんでその人、上に座ってるの?」
「……」
一瞬、空気が止まる。
「……」
「……どう説明する?」
楓が小声で聞いてくる。
「知らん」
「……好きだから」
響が普通に答える。
「え?」
「……くっつきたい」
「いやそれで上に座るの?」
「……うん」
「そうなんだ……」
納得してない顔。
「普通はやらないよね?」
追撃がくる。
「普通じゃないからな」
「そういう問題?」
「そういう問題だ」
「……いいな」
「何が」
「それ」
「やるなよ」
「やらないけど」
「仲良いね」
「まぁな」
「付き合ってるの?」
「違う」
「……違わない」
「違うって」
「どっちなの」
「知らん」
「適当すぎる」
「……東海林さん」
「ん?」
「……キスしていい?」
「ここで言うな」
「……だめ?」
「だめ」
「……」
少しだけ不満そう。
「いやちょっと待って」
楓が笑いながら言う。
「今の会話おかしいでしょ」
「いつも通りだ」
「基準壊れてるよ」
「……」
楓がまた少し近づく。
「……やっぱあったかい」
「気に入るな」
「冬はこれだわ」
「人を暖房扱いするな」
そのまま——響は膝の上、
楓は横にくっついて、秋山はその隣で普通にいる。
完全に意味の分からない配置。
「ほんと仲良いな」
親戚の人が笑う。
「……うん」
「まぁな」
「……離れない」
「分かってる」
ぎゅっ
さらに強く抱きついてくる。
騒がしい中でも、相変わらずの距離感。
むしろ——人が多いのに悪化してる気すらする。
「……これ、正月中ずっとこう?」
楓が小声で聞く。
「多分な」
「やば」
「今更だろ」
「……東海林さん」
「ん?」
「……今日も一緒に寝る」
「はいはい」
「……約束」
「してるだろ」
「……うん」
こたつの中、人が増えても変わらない距離。
むしろ——少しずつ巻き込まれていってる気がした。
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