79話
電車を降りて、少し歩く。
「……寒い」
「冬だからな」
「……分かってる」
そう言いながら——ぎゅっ
「……歩きにくい」
「……離れない」
「もういいや」
諦めた。
祖母の家の前。
「着いたな」
「……うん」
「相変わらず大きいね」
「まぁな」
インターホンを押すと、
ガラッ
「いらっしゃい」
親戚のおばさんが出てきた。
「久しぶりだね」
「どうも」
「……お邪魔します」
「お邪魔します」
三人で中に入る。
「今年も来たのかい」
奥から声。
「来たよ」
親戚の人たちもちらほらいる。
「お、また増えてるな」
「友達か?」
「まぁそんな感じ」
説明が雑すぎるが、特に突っ込まれない。
「寒かったでしょ、こたつ入ってな」
「ありがとうございます」
「……失礼します」
部屋に案内される。
そして——
「……よいしょ」
「乗るな」
即座に膝の上。
「……落ち着く」
「ここでもか」
「相変わらずだね」
秋山が横で笑う。
「もうどこでも同じだな」
「おーい」
別の部屋から声。
「来てるって聞いたけど——」
すたすたと入ってくる。
「……あ」
「……楓」
「久しぶり」
「久しぶりだね」
楓が止まる。
そして——じーっとこっちを見る。
「……ねぇ」
「ん?」
「なんでまた乗ってるの?」
「いつも通り」
「いつも通りがおかしいんだけど」
「そうか?」
「そうだよ」
「……楓さん」
「ん?」
「……久しぶり」
「うん、久しぶり」
少しだけしゃがんで目線を合わせる。
「元気そうだね」
「……うん」
「てかさ」
楓が小声で言う。
「前より距離近くなってない?」
「なってる」
「やっぱり?」
「……離れたくない」
「理由が強いなぁ」
「そっちの子も」
楓が秋山を見る。
「久しぶり」
「どうも」
「相変わらず一緒なんだ」
「ほぼ住んでるからね」
「それもどうなの」
そのまま少し話していると、
「ご飯できるよー」
奥から声。
「はーい」
「……行く」
「だから乗ったまま動くな」
「普通に歩きなよ」
楓が呆れた顔で言う。
「……やだ」
「やだじゃない」
でも結局——手を繋ぎながら移動することになった。
広間、親戚の人たちが集まってる。
子供も何人かいる。
「おー、増えてるな」
「誰?」
「友達だよ」
また適当な説明。
「……人多い」
「そうだな」
「……離れない」
ぎゅっ
「ここでもか」
席に座ると、自然と三人で固まる。
「仲良いねぇ」
親戚の一人が笑う。
「まぁ」
「……うん」
「……あの子、女の子?」
小声で聞こえる。
「いや男」
「え?」
「まぁその話は後でな」
めんどくさいので流す。
「……東海林さん」
「ん?」
「……ここでも一緒にいる?」
「当たり前だろ」
「……うん」
少し安心した顔。
「ほんとさ」
楓が横で呟く。
「前より完全に依存してるよね」
「否定できない」
「大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない気はする」
「だよね」
でも——ぎゅっ
「……」
「……離す気ないな」
「……ない」
騒がしい中でも、変わらずくっついてくる響。
前よりも強く、前よりも自然に。
「……まぁ」
楓が小さく笑う。
「楽しそうだからいいか」
「それはそう」
冬の祖母の家。
人は多いけど——結局、三人の距離は何も変わらなかった。
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