76話
放課後。
三人で帰り道。
「……寒くなってきたな」
「……冬だね」
「当たり前だろ」
吐く息が白い。
気づけば、もう12月も後半。
「……東海林さん」
「ん?」
「……クリスマス、近い」
「ああ、そうだな」
特に意識してなかったけど、言われてみればそんな時期か。
「東海林君、予定あるのかい?」
「ないな」
「即答だね」
「あると思うか?」
「思わない」
「だろ」
「……じゃあ」
響が、少しだけ間を置いてから言う。
「……一緒に過ごす?」
「まぁ、そのつもりだけど」
「……ほんと?」
「三人でな」
「……うん」
少しだけ、嬉しそうな顔。
家に着いて、リビング。
ソファに座ると——
「……よいしょ」
「乗るな」
いつも通り、響が上に乗る。
ぎゅっ
「……寒いからか?」
「……それもある」
「それもってことは他にもあるな」
「……くっつきたい」
「理由になってない」
「クリスマスかぁ」
秋山が横で呟く。
「何かする?」
「何かって?」
「イベントっぽいこと」
「例えば?」
「ケーキとか、プレゼントとか」
「……ああ」
それっぽいな。
「……ケーキ、食べたい」
「食べたいだけだろそれ」
「……うん」
「正直だな」
「プレゼントはどうする?」
秋山が続ける。
「……別にいらないだろ」
「えー」
「三人で過ごせれば十分じゃないかい?」
「……それはそうだけど」
「……」
響が、少しだけ考えてる。
「……欲しい」
「何をだ」
「……東海林さん」
「無理だな」
「……もう持ってる」
「言い方」
「じゃあさ」
秋山がニヤッとする。
「キスでもプレゼントにする?」
「やめろ」
「ロマンチックじゃない?」
「どこがだ」
「……いい」
響がぽつりと言う。
「何が」
「……それ」
「どれだ」
「……キス」
「お前らな」
「……クリスマスにする」
「決めるな」
「……だめ?」
「……軽くだぞ」
「……うん」
もう条件反射みたいになってるなこれ。
「僕も参加していい?」
「するな」
「なんで?」
「なんでもだ」
「差別だよそれは」
「平等に断ってる」
「……東海林さん」
「ん?」
「……クリスマス、ずっと一緒?」
「まぁ家にいるだろうな」
「……外行かないの?」
「寒いしな」
「……家でいい」
「だろ」
「……でも」
「ん?」
「……ちょっと特別がいい」
「特別?」
「……いつもと同じじゃなくて」
「……」
珍しいな。
響がそういうこと言うの。
「……じゃあ」
少し考えて。
「ケーキ買って、なんか適当に飯作って、三人でだらける」
「……それ特別?」
「いつもよりちょっと豪華」
「……それでいい」
満足したらしい。
「プレゼントは?」
秋山がまだ粘る。
「……いらない」
「えー」
「その代わり」
「?」
「……欲しい時に言う」
「それが一番怖い」
「……大丈夫」
「信用できない」
「……東海林さん」
「ん?」
「……約束」
「またか」
「……クリスマス、一緒にいる」
「いるって言ってるだろ」
「……ちゃんと」
「ちゃんといる」
「……うん」
ぎゅっ
少しだけ、力が強くなる。
「……楽しみ」
「気が早いな」
「……いいでしょ」
「まぁな」
そのままソファでくっついたまま、クリスマスの話をだらだら続ける。
特別なことは何もない予定。
でも——
「……三人で」
「はいはい」
「……一緒」
「分かってる」
それだけで、十分特別になりそうだった。
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