72話
教室。昼休み。
「……来た」
ガラッ、とドアが開く。
そして——
「……東海林さん」
一直線。
「はいはい」
椅子に座ってる俺の上に、そのまま座る。
「……よいしょ」
「完全に定位置だな」
「……うん」
背中に腕を回される。
ぎゅっ
「……今日も強いな」
「……普通」
「それが普通になってるのが問題なんだよ」
弁当を食べながら、いつも通りの距離。
でも今日は少し違った。
「……東海林さん」
「ん?」
「……顔、近い」
「お前が寄せてるんだろ」
「……」
じっと見てくる。
嫌な予感しかしない。
「……おい」
少し顔が近づく。
「ここ教室だぞ」
「……」
止まらない。あと数センチ。
「響」
「……ん」
——止まった。
ギリギリで。
「……」
「……今、何しようとした」
「……キス」
「分かってる」
「……したかった」
「場所を考えろ」
「……」
少し不満そうにしながらも、離れはしない。
「東海林君」
後ろから秋山の声。
「なに」
「今の見てた?」
「見てたも何も目の前だろ」
「危なかったね」
「お前は他人事だな」
「他人事じゃないよ」
少しだけ笑う。
「僕もしたいし」
「やめろ」
「なんで?」
「ここ学校」
「家ならいいの?」
「……」
一瞬、詰まる。
「……否定しないんだ」
「揚げ足取るな」
その後、響はそのまま俺の上で寝た。
いつも通り——なんだけど。
「……秋山」
「なに?」
「お前、さっきから距離近くないか?」
「そう?」
確かに近い。
いつもより明らかに机の横に立って、こっちを見てる。
「……なんか企んでるだろ」
「別に」
その顔がもう怪しい。
放課後。三人で帰宅。
「ただいま」
「……ただいま」
「おかえり」
リビングに入って——ドサッ
またソファに寝転がる。
そして——
「……よいしょ」
「やっぱり乗るよな」
響が上に乗る。
いつも通りの流れ……のはずだった。
「東海林君」
「ん?」
「ちょっといい?」
秋山が近づいてくる。
「なんだ」
「ちょっとだけ」
そのまま、顔の近くに来る。
「おい」
「……」
止まらない。
「秋山?」
「……僕もいいでしょ」
「よくない」
「なんで?」
「なんでじゃない」
でも——
ぐいっ
軽く顔を引き寄せられる。
「……っ」
近い。普通に近い。
「おい、秋山」
「……一回くらい」
「だめ」
「……」
一瞬止まる。
でも——
「……じゃあ」
ちゅ
頬に軽くキスされた。
「……」
「……セーフ?」
「アウト寄りのセーフだな」
「よかった」
全然よくない。
「……」
上に乗ってる響が、じっと見ている。
「……秋山さん」
「なに?」
「……だめ」
「え?」
「……それ、だめ」
珍しく、はっきり言った。
「独占欲強いね」
「……東海林さんは……私の」
「いや違うが?」
「……違わない」
「違うって」
でも——ぎゅっ
さっきより強く抱きついてくる。
「……響、苦しい」
「……やだ」
「やだじゃない」
「……東海林さん」
「ん?」
「……キスしていい?」
「またか」
「……だめ?」
「……軽くだぞ」
「……うん」
秋山の方をちらっと見てから——ちゅ
今度は、ちゃんと唇に。
「……」
「……満足か?」
「……うん」
明らかに対抗だった。
「……」
秋山がそれを見てる。
「……なるほどね」
「何がだ」
「戦いってこうやるんだ」
「やめろ」
「僕も頑張るよ」
「頑張るな」
その後も——響はずっと離れないし、秋山は距離を詰めてくるし、
完全にバランスがおかしくなってきている。
「……これ、どう収拾つけるんだ」
「つけなくていいんじゃない?」
「よくない」
「……私は、このままでいい」
「それが一番危ないんだよ」
でも——誰も離れようとはしなかった。
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