69話
夜。
三人で同じ部屋、布団を並べて寝ている。
いつも通り——真ん中に俺、右に響、左に秋山。
そして当然のように——
「……ぎゅ」
響は胸に顔を埋めるように抱きついていて、
秋山は手を握ったまま寝ている。
「……毎回思うけど、これ動けないよな」
小さく呟いて目を閉じた。
どれくらい時間が経ったのか分からない。
「……っ……や……」
微かな声で目が覚めた。
「……?」
隣を見ると——
「……やだ……やだ……っ」
響がうなされていた。
眉を寄せて、苦しそうに呼吸している。
「……響」
軽く肩に触れる。
「響、起きろ」
「……いかないで……」
その言葉で、完全に目が覚めた。
「……またか」
「……東海林さん……いなくなる……やだ……」
手を掴まれる。
さっきまでより、明らかに強い力で。
「響、起きろ。俺いるから」
「……やだ……やだ……っ」
——完全に夢の中だな。
「秋山」
「……ん……なに……?」
「響がやばい」
「……また夢?」
「多分」
秋山も起きて、反対側から響の肩に触れる。
「響君、起きて。大丈夫だよ」
「……っ……や……っ」
次の瞬間——ぎゅっ!!
「っ……!?」
いきなり、思いっきり抱きつかれた。
さっきとは比べ物にならないくらい強い。
「……苦しいんだが……!」
「……っ……いなくなるの……やだ……っ」
声が震えてる。
普通に泣いてるなこれ。
「響、起きろって。俺ここにいる」
「……やだ……やだ……っ」
ダメだ、届いてない。
「秋山、どうする」
「無理に離すのはダメだと思う」
「だよな」
「……声、かけ続けるしかないね」
「……分かった」
俺は、少し強めに響の背中を叩いた。
「響、起きろ。俺だ」
「……っ……」
「どこにも行かない」
「……っ……」
「ちゃんとここにいる」
少しずつ——呼吸が落ち着いてくる。
「……ひっ……」
「ほら、大丈夫」
「……東海林……さん……?」
「そうだよ」
やっと、目が開いた。
でも——次の瞬間。
「……っ!」
ぎゅっ!!!
「うおっ……!」
さっきよりもさらに強く抱きつかれる。
「……ほんとに……?」
「ほんとにいる?」
「いるって言ってるだろ」
「……いなくならない……?」
「ならない」
即答した。
「……ほんとに……?」
「ほんとに」
少し間があって——
「……よかった……っ」
ぽろっと、涙が落ちる。
「……泣くほどかよ」
「……だって……」
声がまだ震えてる。
「……夢で……」
「……うん」
「……いなくなって……探しても……いなくて……」
「……」
「……一人で……っ」
言葉が途切れる。
そのまま、顔を押し付けてきた。
「……怖かった……」
「……そっか」
軽く頭を撫でる。
「もう大丈夫だろ」
「……うん……でも……」
「ん?」
「……離れないで……」
「離れないよ」
「……絶対?」
「絶対」
少しだけ、力が緩む。
でも完全には離れない。
「……秋山さんも……いる?」
「いるよ」
「……よかった……」
三人で同じ布団の中。
そのまま、しばらく静かになる。
「……東海林さん」
「ん?」
「……さっきより……強く抱きついてもいい?」
「もう十分強いと思うけど」
「……だめ?」
「……いや、いいけど」
「……ありがとう」
ぎゅっ
さっきよりも、しっかりとした抱きつき方。
でもさっきみたいな怖さじゃなくて——
「……安心する」
そう呟いた。
「東海林君」
「ん?」
「僕も少し近づいていい?」
「お前もか」
「ダメ?」
「……いいよ」
秋山も少し距離を詰めてくる。
手を握る力が、少し強くなる。
「……これで三人だね」
「狭いな」
「でも安心するでしょ?」
「……まぁな」
否定はしなかった。
「……寝れるか?」
「……うん」
「……寝れるよ」
二人とも、小さく返事をする。
「じゃあ寝るか」
「……うん」
「おやすみ、東海林君」
「……おやすみ」
「……東海林さん……」
「ん?」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
そのまま——三人とも、もう一度眠りについた。
今度は、誰も夢にうなされることはなく。
朝までずっと、離れないまま眠り続けた。
もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。




