53話
次の日。昼過ぎ。
家のリビング。
ソファに座っていた俺の上には、当然のように響。
膝の上に座って、肩に顔を乗せている。
「……東海林さん」
「何」
「……今日」
「うん」
「……休み」
「学校あるだろ」
「……午後」
「サボり」
響は少しだけ俺の服を掴む。
「……少し」
その様子をキッチンから秋山が見ていた。
ジュースを飲みながら小さく笑う。
「響君」
「……なに」
「東海林君いなくなったらどうする?」
響は少しだけ首を傾げる。
「……なにそれ」
「例えば」
秋山はソファの背に寄りかかる。
「急にどこか行っちゃうとか」
響は一瞬だけ俺を見る。
それから言う。
「……行かない」
「もしだよ」
響は少し黙る。
「……探す」
「どこまで?」
「……見つかるまで」
秋山が笑う。
「強い」
俺が言う。
「お前何してる」
秋山は少し楽しそうな顔。
「ちょっと気になって」
「何が」
「響君の依存度」
響がぽつり。
「……依存?」
秋山は肩をすくめる。
「まあ軽いドッキリ」
俺はため息。
「やめとけ」
秋山は少し考えてから言う。
「じゃあ簡単なの」
そして俺を見る。
「東海林君、ちょっと部屋行って」
「は?」
「10分くらい」
響がすぐ言う。
「……だめ」
俺が言う。
「ほら」
響は腕をぎゅっと回す。
「……行かない」
秋山が笑う。
「ほらもうダメだ」
「だろ」
でも秋山は諦めない。
「響君」
「……なに」
「東海林君ちょっと買い物行くって」
響が固まる。
「……今?」
秋山は普通に言う。
「うん」
俺が言う。
「行かない」
秋山が小声で言う。
「協力して」
「面倒」
響がゆっくり俺を見る。
「……行く?」
俺は少し間を置く。
「……ちょっと」
響の手が止まる。
「……どこ」
「コンビニ」
数秒沈黙。
響は俺の服をぎゅっと掴む。
「……一緒行く」
秋山がすぐ言う。
「ダメ」
「……なんで」
「すぐ戻るから」
響は少しだけ顔を下げる。
沈黙。
俺が立とうとする。
その瞬間。響が腕を掴む。
「……待って」
「何」
響は少しだけ目を逸らす。
小さい声。
「……早く帰って」
秋山が横で少し驚いた顔をする。
俺が言う。
「10分」
「……うん」
俺が玄関に向かう。ドアを開ける。
閉める。
リビング。
響はその場に立ったまま。動かない。
秋山が声をかける。
「響君」
「……なに」
「座る?」
響は首を振る。
「……待つ」
「ソファあるよ」
「……ここ」
玄関の方を見たまま。
秋山が少し困った顔。
「そんなに?」
響は小さく言う。
「……すぐ帰る」
「うん」
「……東海林さん」
小さく呟く。
「……ちゃんと帰る」
秋山はその様子を見て少し苦笑する。
「思ったより重いね」
数分後。玄関のドアが開く。
「ただいま」
響がすぐ振り向く。
足音。そしてすぐ近づいてくる。
そのまま――抱きつく。
ぎゅっと。
「……おかえり」
「早いな」
「……よかった」
秋山が後ろで笑う。
「完全に依存してる」
響が秋山を見る。
「……なに」
秋山は少し申し訳なさそうに笑う。
「ドッキリでした」
響は数秒止まる。
それからまた俺に抱きつく。
「……もう行かない」
「行く」
「……だめ」
秋山が小さく言う。
「予想以上だったね」
俺はため息をついた。
響はまだ俺の服を離していなかった。
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