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男友達だと思ってたやつがなんかおかしい  作者: Саша


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51話

資料室。


静かな空気の中、本をめくる音だけが響いていた。


しばらくして。


「……これ、借りてもいいか」


俺が一冊を持ち上げる。

モンスター関連の資料と、魔法理論の本。


数冊まとめて持つ。

レイカが壁にもたれたまま答える。


「構わん」


「持ち出しは禁止してない」


「管理だけしろ」


「分かった」


ユイが少し驚く。


「え、借りられるんですね」


「まあな」


そのまま、持って帰るつもりで本を持ち上げる。


その時。ふと、レイカの視線が動いた。

シエルへ。


「……一ついいか」


「?」


シエルは顔を上げる。だが、その反応は少しだけ遅い。


レイカは目を細める。


「さっきから気になっていた」


「お前、日本語が分からないんじゃないのか」


空気が一瞬止まる。


ユイも「あ」と小さく声を漏らす。


「え、そういえば……」


「普通に本読んでますよね?」


視線が集まる。

シエルはきょとんとしたまま、こちらを見る。


「……?」


明らかに、会話を理解していない。

相棒が小さく肩をすくめる。


「『分かっておらんぞ』」


俺がため息まじりに言う。


「こいつ、日本語は聞き取れない」


「……やっぱりか」


レイカの目が鋭くなる。


「じゃあ何で読めてる」


「そこだよな」


俺は軽く本を持ち直す。


「翻訳の魔法だ」


「翻訳?」


「ああ。文字だけな」


シエルが持っている本を軽く叩く。


「こいつが見てる文字は、全部あいつの言語に変換されてる」


シエルが小さく頷く。


「『これは読める』」


「読めるってよ」


ユイが驚いた顔をする。


「え、すご……!」


「でも会話は?」


「無理」


即答する。


「音声までは対応してない」


「だから――」


レイカとユイの方を見る。


「お前らの会話はほぼ理解してない」


シエルはその場でまた本に目を落とす。

完全に内容に集中している。


「『……この理論、甘いな』」


「文句言ってるぞ」


「え?」


「いや、いい」


ユイが少し引く。

レイカは腕を組む。


「……なるほどな」


「文字だけ翻訳、か」


「そんな都合のいい魔法があるとはな」


「向こうじゃ割と普通だ」


「普通……」


またその単語。

レイカの眉がわずかに動く。だがそれ以上は言わない。


そして俺は何の気なしに――魔力を流した。


空間に触れる。歪ませる。


開く。


次の瞬間。

本が、ふっと消えた。


「……は?」


レイカの声だった。

完全に止まる。ユイも固まる。


「え?」


「え、今」


「消えましたよね?」


相棒が何事もなかったように言う。


「『入れただけじゃ』」


シエルも軽く頷く。


「『普通だな』」


俺はレイカを見る。


「収納だ」


「……収納?」


レイカの眉が明らかに動く。


「今のがか」


「ああ」


短く答える。レイカは数秒、無言。

そして。


「……そんな魔法、聞いたことがない」


低く言う。ユイも同意する。


「私もないです……!」


「アイテムボックス的なやつですか?」


「似たようなものだ」


俺は手を軽く振る。

再び空間を開く。


本がそのまま現れる。

落とすことなく手に収まる。


そしてまた消す。静かに繰り返す。


「な……」


レイカが完全に言葉を失う。

珍しい。相棒が軽く言う。


「『向こうでは基本じゃ』」


俺がそのまま訳す。


「向こうでは普通だ」


「普通……?」


レイカが繰り返す。理解が追いついていない。

ユイが目を輝かせる。


「え、めっちゃ便利じゃないですかそれ!」


「便利だ」


「いいなぁ……」


シエルが横で言う。


「『戦場では必須だった』」


「『荷物が多すぎるからな』」


相棒が続ける。俺も頷く。


「『あれがないと話にならん』」


レイカがゆっくりとこちらを見る。

その目は、完全に変わっていた。


「……お前ら」


「どこまで規格外なんだ」


小さく呟く。俺は特に答えない。

ユイが興味津々で近づく。


「それって私でもできますか!?」


「できる」


「え、ほんとですか!?」


「ただし時間はかかる」


「やります!」


即答だった。相棒が少し笑う。


「向いておるかもしれんな」


シエルも短く言う。


「『素質はある』」


「素質あるってよ」


「やった……!」


ユイが完全にやる気になる。

その横でレイカはまだ考えている。


収納魔法。聞いたこともない。

それを普通と言い切る。


そして、それを自然に使う。

さらに言語の壁すら、別の形で越えている。


(やっぱり――)


確信に近づく。だが、今はまだ言わない。

小さく息を吐く。


「……好きにしろ」


「もう驚くのはやめた」


「無理だろ」


「無理だな」


自分で否定する。

そのやり取りに、少しだけ空気が緩む。

だが確実に何かは変わっていた。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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