50話
放課後。
三人で学校を出る。
「今日暑いね」
秋山が空を見ながら言う。
まだ夏の終わりみたいな空気。
響は俺の隣を歩いている。少しだけ俺の袖を掴んでいる。
「……東海林さん」
「何」
「……帰ったら」
「うん」
「……座る?」
「知らん」
秋山が笑う。
「それ前提なんだ」
響は少しだけ頷く。
「……うん」
家に着く。靴を脱ぐ。
いつもの帰宅。
「ただいま」
秋山が先に言う。
「おかえり」
響が小さく言う。
「……おかえり」
俺がソファに座る。
その瞬間。響が近づいてくる。
迷いがない。
そのまま――俺の膝の上に座る。
「……やっぱり」
「重い」
「……知ってる」
でも降りない。腕を俺の首に回す。
完全にくっつく。
秋山がキッチンに向かいながら笑う。
「今日もだね」
「毎日」
響は俺の肩に顔を寄せる。
「……学校」
「うん」
「……いっぱい人いた」
「いるだろ」
「……疲れた」
だからなのか。今日は少し強めに抱きついている。
そしてふっと顔を上げる。
「……東海林さん」
「何」
響は少しだけ目を見てそのまま軽くキスしてくる。
ちゅ。短い。
秋山が後ろから言う。
「ただいまキス?」
響は振り向かない。
「……うん」
「日課になってない?」
「……なってる」
俺が言う。
「誰が決めた」
「……私」
秋山が笑う。
「強いね」
響はまた俺を見る。
「……もう一回」
「やめろ」
「……少し」
俺が何か言う前にもう一度。軽くキス。
今度は少し長い。離れる。
満足そうな顔。
「……落ち着く」
俺はソファにもたれる。
「自由すぎる」
秋山がジュースを三つ持ってくる。
「はい」
テーブルに置く。響は膝の上のまま。
降りる気ゼロ。
秋山が言う。
「響君」
「……なに」
「それ晩ごはんまで続く?」
響は少し考える。
「……多分」
秋山が吹き出す。
「東海林君、頑張って」
俺はため息をつく。
響はもう一度肩に顔を乗せる。
静かに言う。
「……東海林さん」
「何」
「……好き」
秋山が後ろから言う。
「僕もいるんだけど」
響は少し考える。
それから振り向いて言う。
「……秋山さんも」
秋山が笑う。
「ついでみたい」
響はまた俺の方を向く。そして当然みたいに腕を回す。
三人で帰ってきて家に着いたらこれ。
でもこの家ではそれがもう普通だった。
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