48話
放課後。
教室にはまだ何人か残っていた。
文化祭が終わってからも、片付けやら何やらで少しだけ作業が残っている。
俺は黒板の前で段ボールをまとめていた。
「東海林、それ倉庫持ってくの手伝って」
クラスの男子が言う。
「今?」
「すぐ終わる」
「はいはい」
段ボールを抱える。
そのとき、隣の席の東がこっちを見る。
「……帰らない?」
「ちょっと遅れる」
「……そう」
東はそれ以上何も言わない。
静かに鞄を持つ。
「……じゃあ」
「うん」
東が教室を出ていく。
その後ろ姿を見送ってから、俺は段ボールを持って廊下に出た。
文化祭の後の学校は少し静かだった。
数十分後。作業は終わった。
外はもう少し暗くなっている。
「じゃ、また明日」
「おつかれー」
クラスメイトと別れて、俺は家に向かった。
家。リビング。
秋山はソファに座ってスマホを見ていた。
響は隣に座っている。でもいつもみたいにくっついていない。
ただ、時計を見ていた。
「……遅い」
ぽつりと響が言う。
秋山がスマホから目を上げる。
「東海林君?」
「……うん」
「まだ帰ってないんだ」
響は小さく頷く。
「……遅い」
「用事じゃない?」
「……連絡ない」
秋山は少し笑う。
「東海林君だし」
響は黙る。そしてまた時計を見る。
数分後。
玄関の鍵の音。
がちゃ。
ドアが開く。
「ただいま」
その瞬間だった。
響が立ち上がる。
そして――走る。廊下へ。
俺が靴を脱ぐより早く。
響が抱きついてきた。
ぎゅっと。
かなり強く。
「……おかえり」
「ただいま」
「……遅い」
「学校」
響は顔を上げる。
少しだけ眉を寄せている。
「……連絡」
「忘れた」
響は少し黙る。それからまた抱きつく。
さっきより強く。
「……心配した」
「大げさ」
「……大げさじゃない」
腕の力が強い。俺の服を掴んでいる。
秋山が廊下に出てくる。
「おかえり」
「うん」
秋山はその光景を見る。
少し笑う。
「響君」
「……なに」
「それ離れる気ある?」
響は首を振る。
「……ない」
秋山が言う。
「僕もいい?」
響が少し目を細める。
「……だめ」
「なんで」
「……私の」
秋山は笑う。
「東海林君は物じゃないよ」
響は少し黙る。
それから小さく言う。
「……でも」
また抱きつく。
「……今日」
「うん」
「……離さない」
秋山が言う。
「ずるいな」
そして俺の腕を軽く掴む。
「僕も」
そのまま寄りかかる。
響がすぐ言う。
「……秋山さん」
「なに」
「……近い」
「ライバルだし」
響は少し黙る。それから俺の服をまた掴む。
「……東海林さん」
「何」
「……今日は」
少しだけ声が小さい。
「……ずっと一緒」
秋山が笑う。
「もう一緒に住んでるよ」
響は言う。
「……でも」
「?」
「……遅かった」
俺はため息をつく。
「すぐ帰った」
響は小さく頷く。
「……うん」
それから少しして三人でリビングに戻る。
俺がソファに座る。
当然みたいに響が膝の上に座る。
ぎゅっと抱きつく。
今日は特に強い。
秋山が隣に座る。
「響君」
「……なに」
「依存しすぎ」
響は少し考える。
「……知ってる」
「直す気ある?」
響は即答。
「……ない」
秋山が笑う。
「正直だね」
夜。布団。
いつもの配置。
真ん中に俺。左に響。右に秋山。
そして今日の響はいつもより強く抱きついている。
胸に顔を埋めて、腕を回している。
「……東海林さん」
「何」
「……もう」
「うん」
「……遅くならない?」
「たまにはなる」
響は少し黙る。それから言う。
「……連絡」
「努力する」
響は小さく頷く。
そしてさらにぎゅっと抱きつく。
「……今日は」
「何」
「……このまま」
「寝ろ」
秋山が反対側から腕を掴む。
「僕も」
響が小さく言う。
「……秋山さん」
「ん?」
「……離さない」
秋山が笑う。
「僕もだよ」
俺は天井を見る。
両側から抱きつかれている。
動けない。でも二人とも安心した顔をしていた。
そのまま三人でゆっくり眠りに落ちていった。
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