47話
文化祭当日。
朝から学校はいつもと空気が違った。
校門の前には看板が立っていて、校舎のあちこちに飾り付けがされている。
廊下には人の声が響いていて、他のクラスの呼び込みも聞こえる。
一年生の文化祭なんて、みんな初めてだ。だからか、朝から少し浮ついた雰囲気だった。
俺は教室の入り口に立っていた。
黒板の上には大きく書かれている。
「カフェ」
机を並べて、テーブルクロスをかけて、簡単なカフェ風。
「いらっしゃいませー!」
クラスの女子が元気に声を出している。
「ジュースこちらでーす」
「席どうぞ!」
それなりに客も入っていた。
俺はカウンター側で紙コップを並べていた。
そのとき教室のドアが開く。
何人かのクラスメイトが言う。
「あ」
「来た」
振り向かなくても分かる。
足音一直線。
そして。
「……東海林さん」
声。振り向く。
響がいた。
文化祭でも制服のまま。
そしてそのまま迷いなく近づいてくる。
「何」
「……来た」
「見れば分かる」
響は少し周りを見る。
教室の中。テーブル客。
それから。俺。
数秒。
そして――抱きつく。
ぎゅっと。
「おい」
「……会えた」
「学校だぞ」
前の席にいたクラスの男子が笑う。
「文化祭でもそれか」
「もう通常営業だな」
響は気にしてない。肩に顔を乗せる。
「……人多い」
「文化祭だからな」
そのとき後ろから声。
「響君」
秋山だった。
振り向くと、秋山が入口に立っていた。
少し笑っている。
「来てたんだ」
響が言う。
「……秋山さん」
秋山は教室の中を見回す。
「カフェちゃんとしてるね」
「一応」
秋山は俺の横まで来る。そして響を見る。
「そこ定位置?」
「……うん」
秋山が少し考える。それから言う。
「じゃあ」
「?」
「僕も」
次の瞬間。秋山が俺の腕を軽く掴む。
そして寄りかかる。
「おい」
秋山は普通に言う。
「文化祭だし」
響が少し目を細める。
「……対抗」
秋山が笑う。
「そうかも」
クラスのやつが後ろで言う。
「東海林ハーレムだ」
「文化祭でも変わらんな」
しばらくして客も落ち着いてきた。
秋山が言う。
「東海林君」
「何」
「少し回ろうよ」
「今?」
「文化祭なんだから」
響も言う。
「……行く」
「お前は客だろ」
「……関係ない」
結局。少しだけクラスを離れることになった。
三人で廊下を歩く。
廊下はかなり賑やかだった。
「いらっしゃいませー!」
「お化け屋敷どうですか!」
「ゲームあります!」
響は俺の袖を掴んで歩く。
「……人いっぱい」
「そうだな」
秋山が隣を歩く。
「文化祭っぽいね」
最初に入ったのは――ゲームの教室。
輪投げ。
「参加しますかー?」
秋山が言う。
「やろう」
響は少しだけ後ろにくっつく。
「……見る」
俺が輪を投げる。一本入る。
秋山が笑う。
「上手いね」
響が小さく言う。
「……すごい」
そのあと別のクラス。
お化け屋敷。暗い廊下。
秋山が少し俺の腕を掴む。
「暗いね」
響も反対側から腕を掴む。
「……怖い」
「嘘だろ」
結果。両側から掴まれて歩くことになった。
出たあと秋山が笑う。
「ちょっと楽しい」
響も小さく言う。
「……楽しい」
校庭の屋台も回る。
ジュース。焼きそば。
ベンチに座る。
響が言う。
「……東海林さん」
「何」
「……文化祭」
「うん」
「……楽しい」
秋山が言う。
「僕も」
俺はジュースを飲む。
「そうか」
響が肩に寄りかかる。秋山も反対側から寄る。
三人で座る。校庭は文化祭の賑やかな音。
笑い声。音楽。
その中で響が小さく言う。
「……ずっと」
「何」
「……こうがいい」
秋山も小さく笑う。
「僕も」
俺は少し空を見る。
文化祭はまだ続いている。
でもこの三人の時間はいつもと同じだった。
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