表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男友達だと思ってたやつがなんかおかしい  作者: Саша


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/74

42話

八月。

夏休みの真ん中。


「今日、秋山の誕生日だろ」


俺が言うと、秋山は少し驚いた顔をした。


「覚えてたんだ」


「去年も祝った」


「そうだったね」


リビングでは、響がケーキの箱をじっと見ている。


「……早く開けたい」


「まだ主役いるだろ」


「……我慢してる」


テーブルの上には小さいケーキと、コンビニで買ったジュース。

豪華ではないけど、三人で祝うには十分だ。


「じゃあ」


俺が箱を開ける。


「誕生日おめでとう」


響も小さく言う。


「……おめでとう」


秋山は少し照れた顔で笑った。


「ありがとう」


ろうそくを立てて、火をつける。

部屋の電気を少し落とす。小さな火が揺れる。


「願い事」


響が言う。


「する?」


秋山は少し考えてから目を閉じた。


数秒。


そして、ふっと息を吹く。

火が消えた。


「おめでとう」


「……おめでとう」


三人で拍手。

なんでもない誕生日。でもどこか静かで落ち着いた時間だった。



ケーキを食べ終わったあと、響は少し眠そうになって、ソファで丸くなっていた。


「……少し寝る」


「寝ろ」


「……うん」


すぐに寝息。静かになる。

リビングには俺と秋山だけ。

秋山はケーキのフォークをいじりながら、少し黙っていた。


「東海林君」


「ん」


「ちょっといい?」


「何」


秋山は立ち上がる。


「ベランダ、行こう」


夜の空気は少しぬるい。

遠くで蝉の声がまだ残っている。

二人で並んで立つ。


少し沈黙。


秋山が先に口を開いた。


「さっきの願い事ね」


「うん」


「言ってもいい?」


「別にいいけど」


秋山は少し笑ったでも、その笑いはいつもより少しだけ固い。


「実はさ」


少し間。


「僕、男じゃないんだ」


俺は一瞬、言葉の意味を整理した。


「……は?」


秋山は目を逸らしたまま言う。


「女」


夜風が少し吹いた。


「……本気で言ってる?」


「うん」


「ずっと?」


「最初から」


俺は少し黙る。


「なんで今言う」


秋山は手すりに寄りかかる。


「今日、誕生日だから」


「理由になってない」


秋山は少しだけ笑った。


「ちゃんと言うよ」


それから、ゆっくり話し始めた。


「僕さ、中学のときいじめてられてたでしょ」


「……」


「その時、東海林君が助けてくれた」


覚えている。


「そのときね」


秋山は少し遠くを見る。


「嬉しかったけど、怖かった」


「怖い?」


「もし女って知られたら、守られる理由が変わるかもしれないって思って」


俺は黙って聞く。


「だから男って言った」


「……」


「同じ立場の友達として隣にいたかった」


秋山は少し笑う。


「気付いてた?」


「いや」


「そっか」


少し沈黙。

蝉の声が遠くで続いている。


「響は?」


俺が聞く。


「知らない」


「そうか」


秋山は深く息を吐く。


「怒った?」


「いや」


「呆れた?」


「それもない」


俺は少し考えてから言う。


「秋山は秋山だろ」


秋山が少し目を見開く。


「男でも女でも?」


「変わるか?」


秋山はしばらく何も言わなかった。

それから小さく笑った。


「変わらないって言うと思った」


「誕生日のサプライズが重い」


「ごめん」


「謝るな」


そのとき、ベランダのドアが少し開く。

響だった。眠そうな目。


「……二人で何してる」


「話」


「……戻ってこない」


「今行く」


響は少しだけ秋山を見る。

それから言った。


「……秋山」


「ん?」


「誕生日、おめでとう」


秋山は少し優しく笑った。


「ありがとう」


三人で部屋に戻る。

ソファに座ると、響がまた俺の隣にくっつく。


いつもの距離。秋山は向かいに座る。

さっきの話は、まだ響は知らない。

でも少なくとも俺の中では秋山は何も変わっていなかった。


「で」


俺が言う。


「プレゼントないけど」


秋山は笑った。


「もうもらったよ」


「何を」


「ちゃんと聞いてくれた」


それだけで十分だと、秋山は言った。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ