40話
夜中。
ふと目が覚めた。
理由は分からない。
たぶん、腕が痺れたからだ。
右を見る。響。
相変わらず、俺の胸に顔を埋めて寝ている。
髪が少しくすぐったい。呼吸がゆっくりで、完全に熟睡だ。
左を見る。秋山。
俺の手を握ったまま寝ている。
指がしっかり絡んでいるせいで、腕が動かせない。
「……」
完全に固定されている。
俺は小さくため息をついた。
そのとき。廊下で足音がした。
静かな足音。
止まる。
部屋の前。
嫌な予感。
カチャ。
ドアノブがゆっくり回る。
薄くドアが開く。暗い廊下の光が少しだけ部屋に入る。
母だった。
様子を見に来たらしい。
俺は目を閉じた。
寝たふり。母の足音が少しだけ近づく。
止まる。
沈黙。
数秒。
「……」
俺の胸に顔を埋めている響。
俺の手を握っている秋山。
三人で一本の生き物みたいな状態。
昼間よりひどい。母はしばらく黙っていた。
そのとき。響が小さく動いた。
寝返り。
俺のシャツをぎゅっと掴む。
そして寝言。
「……東海林……」
母、静止。
「……どこにも行かないで……」
俺の胸に顔を押しつける。
腕まで回してくる。完全に抱きついた。
母は額を押さえた。
その横で。秋山も少し動く。
寝ぼけているらしい。俺の手をさらに強く握る。そして小さく呟いた。
「……僕もいるよ……」
母、完全停止。
数秒。
それから、母は静かに後ろを振り向いた。
廊下に父が立っていた。
小声。
「どうだ?」
母も小声。
「想像以上」
父が覗く。
数秒。
父の肩が少し震える。
「……すごいな」
母が小声で言う。
「笑わないで」
「いや無理だろこれは」
二人はしばらく部屋を見ていた。
そのとき、また響が寝言。
「……好き……」
ぎゅっと抱きつく。
父が小声で言う。
「完全に恋人だな」
母がため息。
「しかも二人」
父は少し笑った。
「まぁ幸せそうだでええだろ」
母も少しだけ見る。
確かに、響の顔は安心しきっている。
秋山も穏やかな寝顔。
俺は仰向けのまま動けない。
母は小さく言った。
「……起こさないように出ましょ」
父が頷く。
ドアが静かに閉まる。足音が遠ざかる。
部屋はまた静かになる。
俺はゆっくり目を開けた。
「……」
動けない。
右。響、完全密着。
左。秋山、手握ったまま。
俺は天井を見た。
「……全部聞かれたな」
誰も起きない。
そのとき、響がまた寝言。
「……東海林……」
少しだけ顔を擦りつける。
秋山の指も無意識にぎゅっと締まる。
俺は諦めて目を閉じた。
「……もういい」
どうせ逃げられない。
そして数分後。また眠りに落ちた。
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