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男友達だと思ってたやつがなんかおかしい  作者: Саша


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32話

実家……帰るべ

縁側の空気が少し落ち着いたあと。楓が戻ってくる。


「朝ごはん、もうすぐだって」


俺の横に座る。響はまだ俺の膝の上。

楓はじっと響を見る。


改めて見ると、本当に女子にしか見えない。

細い肩、長い睫毛、柔らかい声。


「ねえ」


楓が言う。


「前から思ってたけど……響ちゃんって、ほんとに可愛いよね」


「……可愛い?」


響が首を傾げる。


「うん。声も仕草も完全に乙女って感じ」


「……ありがとう」


「東海林、どこで知り合ったの?」


少しだけ探るような視線。

俺は一瞬だけ迷う。でも、隠す意味もない。


「高校」


「へぇ」


楓は笑う。


「彼女?」


その言葉で、響の腕が少し強くなる。

秋山は静かにこちらを見る。

俺は、息を吐く。


「違う」


「じゃあ何?」


少しだけ意地悪な笑み。


「家族?」


「違う」


「幼馴染?」


「違う」


「じゃあ――」


楓が言いかけた瞬間。

俺は普通の声で言った。


「響、男だから」


一瞬。蝉の声だけが響く。

楓の動きが止まる。


「……え?」


笑ったまま固まっている。


「え?」


もう一回。


「男」


響は、静かに俺の胸に顔を埋めた。

逃げない。隠れない。ただ黙っている。


楓が瞬きを繰り返す。


「え、ちょっと待って……冗談?」


「冗談でこんなこと言わない」


「いや、でも……」


楓は響を見る。

髪、肩、脚。どう見ても女子。


「声も女の子じゃん」


「地声だ」


「え?」


「……加工してない」


響が小さく言う。

楓が完全にフリーズする。


「……嘘でしょ」


「嘘じゃない」


「でも一緒に部屋で寝てるって」


「寝てる」


「抱きついてたって」


「毎日」


追撃するな。

楓がゆっくり俺を見る。


「……東海林」


「何だ」


「知ってて一緒に住んでるの?」


「知ってる」


「ていうか、俺の家だ」


楓が口を開けたまま固まる。数秒後それから、深く息を吐く。


「……つまり」


指を一本立てる。


「女の子みたいな男の子が」


二本目。


「東海林と同棲してて」


三本目。


「毎日抱きついて寝てる?」


「まあ、そうなる」


沈黙。

秋山が小さく笑う。


「楓さん、混乱してるね」


「混乱するに決まってるでしょ!?」


やっと声が戻る。


「え、ちょっと待って、私だけ時代に置いていかれてない!?」


響がそっと顔を上げる。

不安そうに楓を見る。


「……気持ち悪い?」


楓の表情が変わる。

一瞬で、真面目になる。


「それは違う」


即答。


「ただ……びっくりしてるだけ」


響の指が少し緩む。


「東海林は……それでいいの?」


「何がだ」


「男だよ?」


「知ってる」


「でもこの見た目だよ?」


「知ってる」


「周りに何言われるか分かんないよ?」


「分かってる」


楓はじっと俺を見る。

俺も逸らさない。


「……守れる?」


試す声。


「守る」


即答。響の肩がぴくっと揺れる。

楓はその様子を見て、小さく笑う。


「そっか」


少しだけ悔しそうで、少しだけ安心した顔。


「じゃあ私は、ただの幼馴染ポジか」


「元からそうだろ」


「冷た」


でも楓はもう怒っていない。

むしろ、響を見る目が変わっている。


「響くん」


「……なに」


「ちゃんと好きなんだね」


響は少しだけ迷って。それから、俺を見上げる。


「……うん」


楓はふっと笑う。


「そっか」


そして立ち上がる。


「負けたくないな」


「何にだ」


「色々」


そう言って台所へ戻る。

静かになった縁側。響が小さく呟く。


「……言わなくてもよかった」


「隠すつもりはない」


「……嫌われたら」


「嫌ってないだろ」


「……うん」


少しだけ安心した顔。

秋山が背後から言う。


「楓さん、強い人だね」


「だな」


「でも」


秋山の声が少しだけ低くなる。


「火は消えてないよ」


縁側の奥。台所から聞こえる楓の笑い声。

その奥に、ほんの少しだけ、まだ争うが起きそうだな。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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