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男友達だと思ってたやつがなんかおかしい  作者: Саша


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30/75

30話

夕方。

縁側に腰掛けて、祖母がスイカを切っている。


「夜は花火やるんだろ?」


「もう買ってあるよ」


楓が得意げに袋を掲げる。


「準備良すぎだろ」


「だって来ると思ってたし」


さらっと言う。楓の感は今でも変わらないみたいだ。



夜。


庭に出ると、虫の音がやけに大きい。

田舎の夜は暗い。街灯も少ない。

そのぶん、火の光がよく映える。


「じゃあ最初は線香花火からね」


楓が火をつける。


パチパチと小さな音。

俺の隣には響。その隣に秋山。

楓はわざとらしく俺の反対側に立つ。


「東海林、昔さ」


「何だよ」


「競争してたよね、どっちが最後まで残るか」


「あったな」


「今日もやる?」


楓が近づいてくる。距離が、妙に近い。

昔と同じ距離感。でも今は少し違う。


俺の袖が引かれる。

響だ。


「……やるの?」


小さい声。


「やるならやるけど」


楓が笑う。


「その子、不安そうだよ?」


「別に」


俺は普通に答える。


「花火くらいで何も変わらんだろ」


楓は俺の手から線香花火を取る。


「じゃあ、私と勝負ね」


「強制かよ」


火が落ちるまで、妙に静かになる。

その間、楓は俺の肩に少し触れている。


昔は普通だった。でも今は――

響の線香花火が、先に落ちた。


「あ……」


小さく声を漏らす。その瞬間、楓の火も落ちる。俺のが最後まで残る。


「勝ち」


「つまんない」


楓が笑う。

でも響は、笑っていない。

その後も、楓は何度か俺の隣に来る。


打ち上げ花火に驚いて俺の腕を掴んだり、

わざとらしく昔話を振ったり。


「小さい頃さ、東海林が泣いてたことあったよね」


「余計なこと言うな」


「可愛かったなぁ」


「そうか」


響の視線が、ずっとこっちを見ている。

秋山は何も言わない。でも、少しだけ響の背中に手を添えている。


楓は悪気はない。ただ、昔を知っているだけ。それだけで、十分に強い。


花火が終わる頃。

響はほとんど喋らなくなっていた。




布団は同じ部屋に三枚。

俺の真ん中、両脇に秋山と響。


楓は隣の部屋。


「おやすみー」


襖越しに楓の声。


「おやすみ」


俺が返す。電気を消す。

暗闇。


虫の声。


しばらくして、布団が動く。


予想通り。響がすり、と寄ってくる。


「……東海林さん」


「どうした」


「……あの人」


「楓?」


「……近い」


ああ、そこか。


「昔からあんな感じだよ」


「……嫌」


珍しく、はっきり言った。

俺は少し驚く。


「嫌って?」


「……昔の話、いっぱい知ってる」


声が震えている。


「私は……知らない」


それか。


「別に今はお前らといるだろ」


「……でも」


ぎゅ、と抱きついてくる。

いつもより強い。


「……取られるかもって、思った」


暗闇だから、顔は見えない。

でも分かる。本気で不安になってる。

俺はため息をつく。


「取られないよ」


「……本当?」


「楓は楓だし、お前はお前だ」


しばらく沈黙。

そのあと、響が顔を胸に押し付ける。


「……ずっと、こっち見て」


「無理難題言うな」


「……今日だけ」


俺は片手で、響の頭を撫でる。


「これで満足か」


「……うん」


秋山が小さく笑う。


「響君、嫉妬してたんだね」


「……してない」


即答。でも腕は緩まない。

秋山が、反対側から俺の服を少し掴む。


「僕も少しだけ、焦ったよ」


「お前もか」


「昔を知ってるって、強いからね」


左右から挟まれている。

動けない。


「お前ら、寝れるのか?」


「……寝る」


「僕も」


響はそのまま、さらにぴったりくっついてくる。完全に抱き枕状態。

でも今日は、いつもより少しだけ力が強い。

隣の部屋から、楓の寝返りの音。


響の指が、ぎゅっと俺のシャツを掴む。


「……行かないで」


「どこにも行かないよ」


「……約束」


「約束」


しばらくして、呼吸がゆっくりになる。

寝たらしい。秋山も静かだ。


俺は天井を見ながら思う。

昔を知ってる奴が現れただけで、こんなに不安になるのか。

面倒くさい、でも悪くないとも思ってる自分がいる。

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