21話
学生の皆様、そろそろ学校が始まりますね。
「東海林君、上がったよ」
秋山がタオルを首にかけたまま戻ってくる。
「響をどうすればいいと思う?」
俺の膝の上では、抱き枕と化した響がすやすや寝ている。
「そのまま襲えばいいんじゃないかな」
「なんか悪いもん食ったか?」
「僕はまだ落ちてるものとか食べないよ」
まだってなんだ。
将来的に拾い食いする予定でもあるのかこいつは。
まぁそれより問題は目の前の小動物だ。
「抱きついて寝てるけど、気持ちよく寝れてるのかこれ」
「良い感じなんじゃない?僕も今度抱きついて寝てもいい?」
「別にいいけど、抱きつきたいものなのか?」
「安心するよ」
とりあえず運ぶしかないか。
「落としそうなんだよな」
「僕が引き離そうか?」
「いや、起こしてみる」
肩を揺らす。
「響、布団行くぞ」
「……う……ん」
返事はするが、腕の力は強くなる。
完全に抱き枕認定。
「……このまま運ぶか」
「落とさなければ大丈夫だよ」
覚悟を決めて持ち上げる。
軽い。軽すぎる。
こいつちゃんと食ってるよな?
寝室に着き、布団の上に座る。
「子供あやしてるみたいだね」
「代わるか?」
「それは遠慮するよ」
即答か。
「響を秋山に渡すのは怖い」
「一体僕を何だと思ってるの?」
「社会不適合者」
「否定はしないよ」
自信満々に言うな。
「寝るわ」
「抱きついたまま?」
「今さら起こすのも面倒だ」
「東海林君って面倒くさがりだよね」
「やりたくないことはやらない主義」
「なのに僕たちの相手はしてくれる」
「嫌いじゃないからな」
少し間。
「僕は東海林君が好きだよ」
さらっと爆弾投下。
「ありがとな」
本音か冗談か分からないけど、深く考えるのは眠い。
横になると響もぴったり寄ってくる。
慣れって怖いな。
俺はそのまま意識を手放した。
☆
東海林君、もう寝てる。
響君みたいに甘えたいけど、今は譲る。
……好きって言ったけど、どう思ってるのかな。
冗談扱いだろうな。本当なのに。
女だって知られたら、どうなるんだろう。
そっと後ろから抱きつく。
三人でくっついて寝るこの形が、少しだけ幸せで。
僕もそのまま眠りに落ちた。
☆
目が覚めたら三時。
横には抱っこちゃん人形が健在。
なんとか腕から抜け出す。
トイレ。ついでに水。
コンビニ行くか?
でも財布寝室だな。
戻るか。
「財布どこだ……」
「……どこか行くの?」
振り返ると、響が目をこすっていた。
「起きたのか」
「……起きちゃった」
「コンビニ行こうかと思ったけど、眠いなら寝るか」
「……一緒に寝る」
即答。
布団に戻ると、また抱きつかれる。
「響って一人で寝れない?」
沈黙。
「……多分、そうかも」
えらいことになってるな。
「いつか直さないとな」
「……それでも一緒にいてくれる?」
不安そうな声。
「気が済むまでな」
「……ずっと」
「響がずっとって言うなら、ずっとだな」
少し笑う。
「……ありがとう」
温度が伝わる。
このままだと依存加速コースまっしぐらだと分かってるでも。
今この瞬間、安心してる顔を見たら強く言えない。
「おやすみ」
「……おやすみなさい」
響はすぐ眠った。俺は眠れない。
こいつ、俺がどっか出かけたらどうするんだ。
秋山と寝れるのか?
……まあ、その時考えるか。
そう思いながら、時間をかけて再び意識を沈めた。
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