20話
そろそろ前書きも思いつかなくなりました
二人も食べ終わり、片付けをしていると風呂が沸いた電子音が鳴った。
「東海林君、これもっと洗った方が良いかい?」
「それくらいでいいよ。完璧求めなくていい」
今日は量が多かったので、秋山が隣で皿を拭いている。
三人並ぶにはキッチンは狭い。響はソファに座って待機中だ。
ふと振り向くと、響がじっとこちらを見ていた。
何その目。
完全に遊んでもらうの待ってますみたいな犬ポジションなんだが。
「これで最後だね」
「助かった。ありがとな」
「僕は料理できないからね。その分働くよ」
全部終わって、俺と秋山はソファへ戻る。
自然と座る順番は、俺・響・秋山。
最近ずっとこれだな。
「誰も風呂入らないのか?」
「東海林君が先でいいよ」
「……うん」
圧倒的多数決。
「じゃあ行ってくる」
☆
東海林君が風呂に行った。
つまり今、リビングには僕と響君だけ。
横を見ると、少し眠そうな顔。
「響君、眠いのかい?」
「……少し」
「寝ててもいいよ。どうせあの人長いし」
「……頑張って起きてる」
そう言いながら、目が半分閉じている。
なんとなく、頭に手を伸ばしてみた。
さら、と柔らかい髪。
「小動物みたいだね」
「……東海林さんにも言われた」
やっぱりか。少し沈黙。
それから、ずっと思っていたことを口にする。
「僕たちさ、東海林君に依存してるよね」
「……うん」
否定しないんだ。
「僕と東海林君に、してほしいことある?」
響君は少しだけ考えて、
「……これからも、そばにいてほしい」
まっすぐすぎる。
「いるよ。三人でいる」
それは嘘じゃない。少なくとも、今は。
「……ありがとう」
東海林君が響君を甘やかす理由が、少し分かる。甘やかしたくなるんだ。守りたくなる。
「……二人は、私にしてほしいこと、ないの?」
「一人で抱え込まないでほしいかな」
「……あの人のこと、あまり知らないかも」
出会う前の東海林君。
僕も知らない。
「響君は?」
「……秋山さんは、どんな人だったの?」
少しだけ笑う。
「昔は、いじめられてたよ」
「………」
空気が重くなる。
「でもそれで東海林君に会えた。結果オーライだ」
「……今は楽しい?」
「楽しいよ。友達は少ないけどね」
というか友達はほぼ居ない。
だけど二人がいてくれるから。
「風呂、長いね」
「……うん」
「一緒に入ってくれば?」
「……いいのかな」
「行ってみなよ」
響君は立ち上がる。
その背中を見送りながら、胸の奥が少しだけ疼いた。
……最初に嘘なんて、つかなければよかった。
☆
湯船に浸かると、やたら考え事をしてしまう。今日、何やってたっけ。
そんなことを考えていると、扉が開いた。
「響か」
「……一緒に入ろう」
即答かよ。
「狭いぞ?」
「……大丈夫」
まあいいか。
響は体を洗い始める。
家の風呂で同級生と入る未来、誰が想像した?
「頭洗ってあげようか?」
冗談半分だった。
「……洗ってほしい」
マジか。
仕方なく湯船から出て、髪を洗う。
泡立てて、指で優しくなぞる。なんだこれ。
完全に保護者ポジション。
「……ありがとう」
洗い終えて湯船に戻ると、響も入ってきた。
やっぱ狭いな。目の前に響の頭が目の前にあるしとりあえず撫でる。
「響って、何されても嫌がらないの?」
「……特にない」
「嫌じゃないのか?」
「……東海林さんは、嫌?」
「嫌じゃない」
「……なら、私も嫌じゃない」
まっすぐだな。
「親戚の集まり、大丈夫か?」
「……巻き込んじゃう」
「一緒に居たいんだろ?」
「……うん」
「なら一緒に行く」
それだけだ。
響は少しだけ安心した顔をした。
姉と妹の話も出た。
でも親が離婚前までの話つまり、ほぼ一人。
「会う可能性あるな」
「……あるかも」
「何かあったら、その時考えよう」
響は何度も言う。
「……一緒に居たい」
湯気の中で、その言葉がやけに静かに響く。
眠そうになってきた響を見て、
「ここで寝たら溺れるぞ」
「……眠い」
「上がるか」
二人で風呂を出る。
リビングに戻ると秋山が座っていた。
なんか寂しそうな犬みたいな顔してる。
「長くて悪い」
「僕が次入るよ」
入れ替わりで俺と響はソファへ。
「暇だな」
「……うん」
「寝るか?」
「……膝、乗っていい?」
「いいよ」
響が膝に乗る。
向かい合わせ。
「キスできそうなくらい近いな」
「………」
顔赤い。
分かりやすすぎる。
「キスしたいの?」
「人にキスしたいと思ったことはないな」
本音を言う。
「……そう」
「寝るんじゃなかったのか?」
「……おやすみ」
即寝。早すぎるだろ。
後ろに倒れないよう、腕を回して支える。
完全に保護者だな。
「甘えたがりだな」
高校で出会って、まだそこまで時間経ってないのにこの距離感。普通じゃない。
でも今は、膝の上で安心しきって寝てる響と、風呂場で鼻歌歌ってる秋山がいる。
面白い人生だな。
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