19話
眠いですね
ソファに三人で並んで座っていると、秋山がいきなり電池切れみたいに寝落ちした。
早くない? まだ夜じゃないぞ。
「最近さ、ずっと響といるよな」
俺がそう言うと、隣で俺の腕にくっついている響が小さく頷く。
「……うん」
「飽きないのか? 俺といて」
「……飽きないよ」
即答だった。
「こんな変な生活してるしさ。同級生三人で同居って、だいぶ意味わからんぞ?」
改めて考えると異常だ。
三人でソファ。
一人は爆睡。
一人は俺に抱きつき。
そして俺はそれを受け入れている。
何だこの人生。
「……飽きないよ」
もう一度、響は言った。
さっきより、少しだけ強い声で。
「ならいいけど。飽きたって言われてもどうしようもないしな」
「……多分ずっと……飽きない」
そのずっとに、ほんの少しだけ引っかかる。
「さっき言ってた親戚の集まり、何するんだ?」
「……私も知らない」
「何も聞かされてないの怖くない?」
「……家のことだと思う」
家、か。
響が今ここにいるなら、向こうの家はどうなるんだろう。
売るのか、誰かが住むのか、それとも——。
二人きりで話すと、響は不思議とちゃんと話す。
学校や外だと静かなのにね。
人が多いのが苦手なのかもしれない。
「……あと、お礼は何がいい?」
「お礼?」
「……何でもいいよ」
律儀すぎる。
「今は思いつかないな。今度、手伝ってほしい時に言うよ」
「……分かった」
絶対分かってないなこれ。
そのうち本気で何でもやろうとしそうで怖い。
⭐︎
東海林さんは、たぶん優しい。
だからきっと、ちゃんとしたお礼を言っても受け取らない。
それなら。
今のうちに、少しだけ。
「米が炊けるまで暇だな」
「……秋山さん寝ちゃった」
「響も寝るか? できたら起こすぞ」
「……大丈夫」
今は、寝たくない。
東海林さんと話してたい。
「何かするか?」
「……このままでもいいよ」
「このままって、抱きついたまま?」
「……ダメ?」
「ダメじゃないけど。楽しいのか?」
「……うん」
もし、親戚の話でここを出ることになったら。
この距離も、なくなるかもしれない。
だから今だけは、少しだけ。
甘えさせて。
「なんか眠くなってきた」
「……一緒に寝る」
「ここで?」
「……もっと近づく?」
自分でも、ちょっと甘えすぎかもしれないと思う。
でも、今日はどうしても離れたくなかった。
⭐︎
今日はやたら甘い。
何か考えてる時の響より、こうやって甘えてくる方がまだ安心できるけど。
「寝たいなら寝ていいぞ」
「……なら、寝る」
「おやすみ」
「……おやすみ」
数分後、秋山も響も完全停止。
俺だけ覚醒。
ご飯炊けたらどうするんだこれ。
仕方なく、二人をそっと横にしてからキッチンへ向かう。
炊きたての湯気が立ちのぼる。
とりあえず餃子。
冷凍最高。文明の勝利。
油を引いて並べて、水入れて蓋。
簡単すぎる。
次は中華スープ。
鶏がらスープの素、水、醤油。
エノキとレタスを突っ込む。
料理って、勢いだよな。
最後は炒飯。
中華鍋を振るたびに腕が悲鳴を上げる。
俺、文系だぞ。なんで筋トレみたいなことしてんだ。
でも香りは完璧。
高菜とベーコンの匂いが広がる。悪くない。
二人の寝顔を横目に、少しだけ思う。
この生活、いつまで続くんだろうな。
「秋山、響。飯できたぞ」
肩を揺らす。
「おはよう……ご飯?」
「出来たから起きろ」
「……おはよう」
三人でテーブルにつく。
「「「いただきます」」」
炒飯は上出来だった。
「なんで東海林君って料理できるの?」
「一人暮らしだからな。作らなきゃ死ぬ」
「……じゃあ僕は何回も死んでる」
秋山は本当に壊滅的だ。
響はどうなんだろう。
ふと気になって言う。
「響、あとで体重計乗ってみて」
「……なんで?」
「気になっただけ」
響は少しだけ不安そうに目を伏せる。
その表情に、ほんの少しだけ胸がざわついた。
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