110話
翌日。
昼休み前。
「……静かだな」
「そうだね」
いつもより、教室の空気が少し落ち着いてる。
「……来ない」
東がぽつり。
「そのうち来るだろ」
ガラッ
「……東海林さん」
来た。
「……遅かったな」
「……授業あった」
「当たり前だ」
すとん
「……はい」
「言わなくても分かるな」
膝の上。
でも——昨日より少しだけ静か。
ぎゅっ
「……ここ」
「はいはい」
「……キスは?」
東がぽつり。
「しない」
「しないのか」
「ルールだ」
「……ルール」
「へぇ」
東が少しだけ興味を持つ。
「……何それ」
「昨日決めた」
「……三人で?」
「三人で」
「……内容」
「学校ではキスしない」
「……」
「座るのはOK」
「……」
「あと色々」
東がじっと見る。
「……ちゃんとしてる」
「意外か?」
「……うん」
「否定しないのかよ」
「……崩れてると思ってた」
「まぁ否定はできん」
「……でも」
少しだけ間。
「……整えようとしてる」
「……」
「……いいと思う」
「珍しいな」
「……必要」
「……何が」
「……壊れないため」
「……」
響が少しだけ顔を上げる。
「……壊れない」
「……うん」
東が頷く。
「……そのままだと」
「……崩れる」
「……」
「……でも」
「……ルールあるなら」
「……持つ」
「……」
秋山が少し笑う。
「東、珍しく優しいね」
「……普通」
「……で」
東が続ける。
「……守れるの」
「……守る」
響が即答。
「……ほんとに」
「……たぶん」
「怪しい」
「否定できない」
「……でも」
響が小さく言う。
「……やる」
「……」
東が少しだけ目を細める。
「……ならいい」
「……何様だ」
「……観察者」
「やめろそのポジション」
「……東海林君」
東がこっちを見る。
「ん?」
「……ちゃんと見て」
「……」
「……バランス」
「……分かってる」
「……ならいい」
そのまま、いつもの昼休み。
ぎゅっ
距離は変わらない。
でも——
「……キスしない」
響が小さく呟く。
「守ってるな」
「……うん」
「えらいえらい」
秋山が軽く頭を撫でる。
「……子供じゃない」
「でも頑張ってるでしょ」
「……うん」
そのまま、少しだけ整った関係のまま、昼休みが過ぎていく。
そして——東はその様子を見ながら、静かに納得していた。
「……前よりいい」
小さく、誰にも聞こえないくらいの声で。
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