108話
放課後、教室。
人もだいぶ減ってきてる。
「……帰るか」
「うん」
秋山が席から立つ。
その時。
「……ちょっといい?」
「ん?」
秋山がこっちを見る。
いつもより少しだけ真面目。
「先行ってていいよ」
「……やだ」
すぐに響が反応。
「すぐ終わるから」
「……ここにいる」
「いや、それはやりにくい」
「……」
少しだけ考えて、
「……廊下」
「近いな」
「……でも見える」
「まぁいいか」
響が教室の外に出る。
でも——ドアのすぐ横。
「聞いてそうだな」
「聞いてるね」
教室。
二人だけ。
「で、なんだ」
「うん」
少しだけ間。
「提案なんだけどさ」
「提案?」
「うん」
「……三人でさ」
「……」
「ちゃんとルール決めない?」
「……」
「今ってさ」
秋山が続ける。
「なんとなくで成り立ってるじゃん」
「……そうだな」
「でもさ」
「どこまでいいのか」
「何がダメなのか」
「曖昧すぎる」
「……」
「例えばさ」
「学校での距離とか」
「……」
「家でのこととか」
「……」
「あと」
少しだけ間。
「……気持ち」
「……」
「誰がどう思ってるのか」
「ちゃんと共有した方がいいと思う」
「……」
「じゃないとさ」
「どっかでズレる」
静かな声。
「……確かにな」
「でしょ?」
「……でも」
「?」
「どう決める」
「簡単でいいよ」
指を折りながら、
「学校ではほどほど」
「家では自由」
「あと」
「嫌なことはちゃんと言う」
「……」
「それだけでも全然違うと思う」
「……」
少し考える。
「……響が守るか?」
「そこはさ」
秋山が少し笑う。
「東海林君が止める役でしょ」
「最近やってないけどな」
「やって」
「……」
「あとね」
「もう一個」
「?」
「……優先順位つけない」
「……」
「どっちが上とかなし」
「……それは」
「大事でしょ」
「……まぁな」
「平等」
「……」
ドアの外。
ぴくっと動く気配。
「……聞いてるな」
「聞いてるね」
「……」
「どう?」
秋山が聞く。
「……悪くない」
「でしょ」
「……帰って話すか」
「三人で?」
「三人で」
「うん、それがいい」
ガラッ
「……終わった?」
即入ってくる。
「……早い」
「待ってた」
「聞いてただろ」
「……少し」
「全部だろ」
「……うん」
「……で」
響がこっちを見る。
「……なにするの」
「帰って話す」
「……三人で?」
「三人で」
「……うん」
少しだけ、真面目な顔。
でも——ぎゅっ
すぐに戻る。
「……帰ろ」
「結局それか」
そのまま三人で教室を出る。
ただの甘えだけじゃなくて、少しずつ——形を作ろうとする方向へ、
関係が進み始めていた。
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