102話
風呂上がり。
タオルで髪を拭きながらリビングへ。
「……さっぱりした」
「だな」
「……あったかい」
ソファに座ると——すとん
「……はい」
「言わなくても来るな」
膝の上。
いつも通り、ぎゅっ
「……ここ」
「知ってる」
秋山も横に座る。
ぎゅ
「僕も」
「定位置かよ」
少しだけ静かな時間。
「……東海林さん」
「ん?」
「……さっき」
「風呂か」
「……うん」
少しだけ間。
「……思った」
「何を」
「……このままでいい」
「……」
その言葉は、いつもと少し違う重さだった。
「……どういう意味だ」
「……そのまま」
「雑だな」
「……東海林さんがいて」
「……」
「……秋山さんもいて」
ぎゅっ
「……こうやって」
「……ずっと」
「……」
「……怖くない」
小さく。
「……前より?」
「……うん」
「……いなくなるかもって」
「……」
「……思うけど」
「……今は」
「……」
「……大丈夫」
少しだけ、力が優しい。
「……東海林さん」
「ん?」
「……いるでしょ」
「いる」
「……うん」
秋山が小さく笑う。
「いい変化だね」
「……そうか?」
「うん」
「前はさ」
秋山が続ける。
「ずっと不安だったでしょ」
「……」
「今はちょっと違う」
「……うん」
響が小さく頷く。
「……ちゃんといるって」
「……分かる」
「……だから」
少しだけ顔を上げる。
「……このままでいい」
「……」
少しだけ考える。
「……今はな」
同じ答え。
「……うん」
満足そうに頷く。
ぎゅっ
でも、さっきよりも穏やか。
「……東海林君」
秋山がぽつり。
「ん?」
「これならさ」
「壊れないかもね」
「……」
腕の中の温もり。
「……どうだろうな」
「でも」
秋山が笑う。
「前よりはマシ」
「……うん」
「……東海林さん」
「ん?」
「……好き」
「知ってる」
「……でも」
「?」
「……怖くない」
その言葉は、今までで一番落ち着いていた。
そのまま三人で、ソファに寄りかかって、ゆっくり時間が流れる。
距離は変わらない。
でも——その意味だけが、少しずつ変わり始めていた。
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