隠れる、向かう1
山のふもとの木々が重なる下にワゴンを人の目から逃げるために止めた。沈黙のワゴンを夜に隠し、四人は静かに次に何をするべきか考え、待っていた。けれど今は身を潜める事しかできない。いくつかのコンビニで水と食料と買えるだけの衣料を積んだ。それからはひたすらに下道を走り、やっと休憩できる場所に辿りついた。
木森はストローをかじる。オレンジジュースは減らない。夜の外から目を背け、足のつま先ばかり気にしていた。
「食べるか?」
管野がプラスチックの容器に入った梅干しを差し出す。木森は一粒、つまんだ。けれどそのままストローをかじるのをやめない。管野は昆布のおにぎりを食べる。米と一緒に不安を噛み殺す。助手席の鐘霞は、管野と木森だけでも逃がしてやりたかった。その考えは居里も同じだった。けれど、水の事を知っている敵を殯が消したいと考えているのは予想できた。可哀想だが、離れるわけにはいかなかった。
「そろそろ師巻さんと一度連絡取った方がよさそうね」
居里が言った。鐘霞が携帯電話の電源を入れる。鐘霞の顔が青白く照らされる。居場所を探知されないため、宮と小春が襲撃され、師巻に電話をした後全員、携帯電話の電源を落としていた。
「短めにね」
ハンドルにもたれる居里が注意する。
「分かってる」
師巻はすぐに電話に出た。
「鐘霞です。とりあえず四人無事です」
「それはよかった。こっちは日永登が消えた」
鐘霞の表情が変わったのが居里は分かった。
「クアイの携帯を置いていっている。着信を調べたら宮の携帯から着信があった。おそらく、敵におびき出されたか、脅迫されたか」
「どこにいるか心当たりは?」
鐘霞は期待せずに聞いた。
「水の場所かもな」
「まさか、日永は知っているのか?」
日永の名前に管野と木森の顔が動いた。
「たぶん、知らんだろうな。俺の心当たりだったら、日永が五歳まで住んでいたどこかだ。でも記憶を頼るにはかなり幼すぎる。無理だろう。それでもいなくなったのは、アテがあるからかもしれん。それにお前らを人質に捕られたら、どうしようもなくとも、どうにかしようとするんじゃないか?」
鐘霞はそれを否定できなかった。舌打ちをする。師巻は繁華街にいるのか、曇ったざわめきが鐘霞の耳の奥を付いた。
「とりあえず日永はこっちで捜す。俺にはアテがある。また明日電話する。死ぬなよ」
通話が切れる。鐘霞は電源を落とすと滑り落とすように足の間に携帯電話を置いた。
「日永は大丈夫なんですか?」
管野が聞く。鐘霞は返さない。
「ちょっと。嫌な知らせなら、早めに言って」
居里が催促する。
「日永がいなくなった。置いていった携帯に宮さんからの着信があった」
木森が梅干しを握りしめ、身を乗り出す。
「それで?」
「それだけだ」
鐘霞は端的に言った。
「現状、行方不明だ。たぶん日永はまだ殺されないだろう。水の手がかりだ。師巻さんが探してくれてる」
木森はそのまま動かない。管野が木森の首根っこをひっぱり、元いた場所に座らせる。木森はうなだれる。居里はシーチキンパンの袋を開けた。
「鐘霞、交代で寝よう。三時間ね。先に寝な。管野と木森も順番決めな」
「木森、先に寝ろよ。食欲なさそうだし。寝たら、腹も減る」
管野が夜の外を眺めながらそれとなく気遣う。
「うん。ありがとう」
木森は梅干しを食べると、種を吐き出し、最後部座席に移ると寝そべって、まぶたを閉じた。鐘霞もリクライニングを下げる。タイマーをかけようと携帯電話を手に取るが、電源を切っていたのを思い出す。
「起こしてあげるから安心しなさい」
居里が腕時計を見せて軽い笑みを作った。
「頼む」
鐘霞もまぶたを閉じた。




