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「それで、魔女とは話が合ったのかよ?」
ナップの質問に、ボッシュは初めて困惑した表情になる。
「うん、それが……たまに話がかみ合わない時があってさ」
「へえ、例えば?」
「トイレの事を“かわや”って言ったり、評議会の事を“お上”って言ったり、なんか急に時代劇の人みたいになるんだよ」
「……………」
「“かわや”っていうのも、最初に“はばかり”って言ってて、意味がわからなくて聞いたら『やだぁ!!古い言い回し使っちゃった。かわやの事よ』って言われて、かろうじてトイレだってわかったんだ」
「……………」
ボッシュにメイシンの正体がばれるのも、時間の問題のように思えてきたナップであった。
「それでね、ナップ」
改めてナップを見据えたボッシュの声には、何やら決然とした響きが込められていた。
「話の中で、もうすぐ彼女の誕生日ってことがわかったんだ」
「へえ」
いったい何回目の誕生日だか知れたものではないんだが、とナップは心の中でつぶやいた。
「だから、何か欲しいものがあるか聞いてみたんだ。誕生日にそれを渡して、その時に自分の気持ちを伝えようかなと思って」
「おおっ、それで奴は何て言ってきたんだよ?」
「それがね…」
ナップは、金欠の魔女が、誕生日を口実に何か高価な宝石でも貢がせようとしているのではないかと心配したが、ボッシュの口から出た答えは、完全に想定外のものだった。
「フォレストドラゴンのウロコだって」
「なっ!?……マジかよ!?」
フォレストドラゴン……世界十大竜の一つに数えられ、強大な力を持つとされている、非常に有名な魔竜である。
魔道王国ドルクロスの霧深い森に住むこの竜は、魔道・呪術に長けており、その魔力は三人の魔道大公にも匹敵するとされている。歴戦の勇者達が束になってかかったとしても、勝利を得ることは簡単ではない相手と言えるだろう。
「おいボッシュ!!それは明らかにー」
「あの魔女にからかわれてるぞ」と続けようとしたナップの言葉は、当のボッシュによってさえぎられた。
「だからね、僕はそれを取りに行こうと思うんだ」
「おおおいっ!!!」
今度こそナップは驚愕した。
「んな無茶な!!だいたい今のお前の実力じゃー」
語気を強めるナップを、ボッシュはおだやかな笑顔な笑顔で制した。
「わかってるって。もちろん、今すぐ騎士団を辞めてドルクロスまで行こうってわけじゃないよ」
「そ、そっか…そうだよな」
「五年……五年したら、僕は騎士団を退団して、人を集めてフォレストドラゴンの所へ行ってみようと思う。それまでは、騎士団でしっかりと力を磨くつもりだよ」
「それで、ウロコを手に入れたとしてどうすんだよ?」
「五年後のメイシンさんの誕生日に、それを渡してプロポーズしようと思う」
ボッシュの表情はまさに真剣そのものであった。




